国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、マリの小麦生産量は1961年から2022年の間、変動を伴いながら長期的には増加しています。特に1960年代から1990年代までは停滞期が見られる一方、2000年代以降に一時的な急増と減少を経て、2011年以降に著しい生産量の成長が見られます。近年の2020年以降は年ごとの変動が依然として続いているものの、全体として過去数十年に比べて高い水準を維持しています。2022年の小麦生産量は33,542トンで、過去数十年における記録的な水準に達しています。
マリの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 33,542 |
2021年 | 21,000 |
2020年 | 37,124 |
2019年 | 8,226 |
2018年 | 29,185 |
2017年 | 28,015 |
2016年 | 40,137 |
2015年 | 35,756 |
2014年 | 45,668 |
2013年 | 27,430 |
2012年 | 40,071 |
2011年 | 33,842 |
2010年 | 10,051 |
2009年 | 15,132 |
2008年 | 13,166 |
2007年 | 8,585 |
2006年 | 8,565 |
2005年 | 4,805 |
2004年 | 8,942 |
2003年 | 5,701 |
2002年 | 6,545 |
2001年 | 9,353 |
2000年 | 6,208 |
1999年 | 7,585 |
1998年 | 6,680 |
1997年 | 2,720 |
1996年 | 3,159 |
1995年 | 6,150 |
1994年 | 2,650 |
1993年 | 2,210 |
1992年 | 1,256 |
1991年 | 2,540 |
1990年 | 2,066 |
1989年 | 1,710 |
1988年 | 1,115 |
1987年 | 1,425 |
1986年 | 1,013 |
1985年 | 1,444 |
1984年 | 1,500 |
1983年 | 1,500 |
1982年 | 1,500 |
1981年 | 2,000 |
1980年 | 2,000 |
1979年 | 2,000 |
1978年 | 2,000 |
1977年 | 2,000 |
1976年 | 2,000 |
1975年 | 2,000 |
1974年 | 2,000 |
1973年 | 2,000 |
1972年 | 2,000 |
1971年 | 2,000 |
1970年 | 2,000 |
1969年 | 2,000 |
1968年 | 2,000 |
1967年 | 2,000 |
1966年 | 2,000 |
1965年 | 2,000 |
1964年 | 2,000 |
1963年 | 3,000 |
1962年 | 3,500 |
1961年 | 3,750 |
マリの小麦生産量推移データを見ると、1961年の3,750トンから1960年代後半以降に1,000トン台に減少し、その後1990年代中頃までほぼ一定の低水準が続いていました。これは、この時期のマリにおける農業インフラの未整備や気候条件の厳しさが影響していると考えられます。乾燥した気候と灌漑設備の不足、さらに農業技術の未発達が生産量の増加を制約していました。
2000年代に入り、生産量が徐々に増加し始めた背景には、いくつかの要因が挙げられます。その一つは、マリ政府および国際機関による農業支援プログラムの強化です。灌漑システムの改善や新品種の導入により、収量の向上が図られたとされます。また、2008年、2009年にはそれぞれ13,166トン、15,132トンと増加が見られ、2011年には33,842トンに到達しました。この急激な変化は、食品安全保障への取り組みが活性化し、地域間の農業技術共有や土地の集約的利用が進展したことが大きいと考えられます。
2020年以降についても注視が必要です。2020年には37,124トンの生産量を記録しましたが、2021年は21,000トンに減少しています。この減少には、新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼした影響があると推測されます。パンデミックに伴う物資の流通障害は、農業生産に直接的な影響を与えました。しかし、2022年には33,542トンに回復し、生産基盤の持続可能性が一定程度確保できていることを示しています。
マリの小麦生産における課題としては、頻発する気候変動や干ばつの影響が挙げられます。乾燥地域特有のリスクに加え、農業インフラの不足は依然として生産の不安定要因です。また、小麦生産のための耕地面積の制約や、輸入代替の必要性からの国内生産促進に対して持続可能な支援政策が欠かせません。これらの課題に対処するためには、地域単位での灌漑の普及や耐乾性品種のさらなる研究開発が不可欠です。
一方でマリは、アフリカ内陸部での各国協力を通じて、地政学的リスクに対応する仕組みを構築するチャンスもあります。たとえば、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)などの枠組みを活用し、農業技術の共有や市場アクセスを広げることで、小麦生産の安定化に寄与できるでしょう。また、世界的な食料価格の不安定性に対しては、小麦生産拡大を通じた自給率向上を目指し、国内経済の強化につなげるべきです。
結論として、マリの小麦生産量は長期的には増加基調にあり、農業セクターの成長は顕著です。しかし、気候変動への対策や持続可能なインフラ整備が急務であり、国際社会と協力しながらこれらの課題に取り組むべきです。また、国内の生産・輸出体制を効率化し、持続可能な農業基盤を確立することで、不安定な世界情勢においても競争力を備えることが可能になると考えられます。