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マリのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が提供するデータによると、マリのヤギ肉生産量は、過去数十年にわたり大きな変動を示しています。その生産量は1961年には約11,364トンで始まり、1970年代と1980年代中頃までは比較的安定して増加しつつ、1990年代初頭に歴史的な大幅減少(約2,800トン)を記録しました。その後は2000年代に入るとゆるやかな回復傾向を見せるも、2020年代に再び変動が激化。2020年には最高値の13,116トンに達した後、2023年には10,119トンまで減少しました。この推移には、干ばつ、疫病、政治的混乱などの影響が伺え、近年の生産不安定性が課題として浮かび上がります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,119
-12.18% ↓
2022年 11,523
-3.45% ↓
2021年 11,935
-9% ↓
2020年 13,116
38.63% ↑
2019年 9,461
15.24% ↑
2018年 8,210
-6.42% ↓
2017年 8,773
7.49% ↑
2016年 8,162
22.64% ↑
2015年 6,655
8.69% ↑
2014年 6,123
-4.21% ↓
2013年 6,392
-0.64% ↓
2012年 6,433
-16.89% ↓
2011年 7,740
9.91% ↑
2010年 7,042
19.82% ↑
2009年 5,877
30.08% ↑
2008年 4,518
-7.26% ↓
2007年 4,872
10.15% ↑
2006年 4,423
-0.79% ↓
2005年 4,458
4.43% ↑
2004年 4,269
11.28% ↑
2003年 3,836
4.61% ↑
2002年 3,667
-0.63% ↓
2001年 3,690
-5.11% ↓
2000年 3,889
11.45% ↑
1999年 3,489
11.73% ↑
1998年 3,123
11.56% ↑
1997年 2,799
-0.16% ↓
1996年 2,804
-0.5% ↓
1995年 2,818
-0.9% ↓
1994年 2,843
-0.79% ↓
1993年 2,866
-0.92% ↓
1992年 2,893
0.3% ↑
1991年 2,884
-87.63% ↓
1990年 23,321
5.43% ↑
1989年 22,120
13.44% ↑
1988年 19,500
15.11% ↑
1987年 16,940
5.45% ↑
1986年 16,065
4.02% ↑
1985年 15,444
-10.5% ↓
1984年 17,255
-25.71% ↓
1983年 23,226
-1.71% ↓
1982年 23,630 -
1981年 23,630
-4.33% ↓
1980年 24,700
11.76% ↑
1979年 22,100
7.15% ↑
1978年 20,625
18.53% ↑
1977年 17,400
11.54% ↑
1976年 15,600
18.18% ↑
1975年 13,200
39.68% ↑
1974年 9,450
31.25% ↑
1973年 7,200
-27.27% ↓
1972年 9,900
-29.13% ↓
1971年 13,970
-8.69% ↓
1970年 15,300 -
1969年 15,300
2% ↑
1968年 15,000
2.04% ↑
1967年 14,700
2.42% ↑
1966年 14,352
-1.64% ↓
1965年 14,592
3.49% ↑
1964年 14,100
3.25% ↑
1963年 13,656
20.68% ↑
1962年 11,316
-0.42% ↓
1961年 11,364 -

マリのヤギ肉生産量の長期的な推移は、同国の経済・農業環境の変化を鮮やかに映し出しています。マリは農牧業が経済の重要な柱となっている国で、ヤギ肉の生産は国内需要の充足と輸出の双方において重要な役割を果たしています。本データの分析により、生産の変動が干ばつや政治的・社会的問題など、直接的な外的要因に大きく依存していることが示唆されます。

まず、1960年代から1970年代にかけて、ヤギ肉生産量は概ね増加傾向を辿りました。この時期の増加は、農牧技術の向上や社会安定によるものと考えられます。しかし1970年代後半から1980年代後半には大幅な変動が見られ、特に1984年の生産量が17,255トンに下がった期間は、干ばつや食料不足などの環境要因が影響を与えたと言われています。同様に、1991年に突如記録された約2,884トンという劇的な減少は、マリ北部での政治的混乱や、地域紛争が牧畜業に深刻なダメージを与えた状況と思われます。この期間の大幅減少は、牧畜業を主とする農村経済の脆弱性を物語っています。

その後、2000年代にかけては生産量が緩やかな回復傾向を示し、持続可能な形になる兆しが見られました。しかし2020年代に入ると、再び変動が顕著になっています。2020年には13,116トンと記録更新のピークに達しましたが、その後の3年間で10,119トンまで減少しました。この急激な増減については、パンデミック(新型コロナウイルス)による市場の混乱、輸送の遅延、エネルギーコストの上昇、ならびに気候変動による牧草地の減少が主な要因と考えられます。

地政学的背景もこの動向を深く理解する上で重要です。マリはサヘル地域に位置し、干ばつや砂漠化などの気候リスクが農牧業全般に大きな影響を及ぼしています。また、近年はイスラム過激派の動向や政府の不安定さが続き、地方インフラの整備が進まず、家畜管理や市場への流通が停滞する状況が続きました。これらの課題は、ヤギ肉生産だけでなく、マリの持続可能な経済成長そのものを阻む要因となっています。

未来を見据えた場合、マリのヤギ肉産業の安定化にはいくつかの具体的な対策が必要です。例えば、気候変動に対する適応策として乾燥地農業技術の普及や牧草地管理の精度向上が挙げられます。また、家畜の疫病対策や健康管理を強化し、特に感染症のアウトブレイクを未然に防ぐための地域保健プログラムを拡大することが求められます。国際機関や隣国との協力も重要であり、地域間の農牧協定を組み、食料供給網の安定性を確保するメカニズムを整備することが望まれます。

結論として、マリのヤギ肉生産量の推移は同国の環境的・社会的脆弱性を如実に示しています。変動の激しい生産量を安定させるためには、気候変動への対応や農牧技術の改善、政府の安定化、および国際協調を含む包括的な対策が不可欠です。これらを通じて、食料安全保障の確保と地域経済の発展の両立を実現することが期待されます。