国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、マリのカシューナッツ生産量は1991年の2,564トンから長期的に増加しましたが、近年では大幅に変動しています。2018年には167,621トンと最大の生産量を記録しましたが、その後の数年間で生産量は減少傾向となり、2023年には75,185トンとなっています。このデータからは、マリのカシューナッツ生産が成長と課題の両面を抱えていることが読み取れます。
マリのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 75,185 |
5.67% ↑
|
2022年 | 71,152 |
-5.54% ↓
|
2021年 | 75,327 |
1.8% ↑
|
2020年 | 73,995 |
-55.86% ↓
|
2019年 | 167,621 | - |
2018年 | 167,621 |
39.96% ↑
|
2017年 | 119,761 |
68.94% ↑
|
2016年 | 70,891 |
7.9% ↑
|
2015年 | 65,699 |
-8.76% ↓
|
2014年 | 72,009 |
82.31% ↑
|
2013年 | 39,498 |
-9.87% ↓
|
2012年 | 43,823 |
16.39% ↑
|
2011年 | 37,652 |
7.24% ↑
|
2010年 | 35,111 |
5.77% ↑
|
2009年 | 33,196 |
5.59% ↑
|
2008年 | 31,440 |
5.78% ↑
|
2007年 | 29,722 |
6.1% ↑
|
2006年 | 28,012 |
6.49% ↑
|
2005年 | 26,305 |
6.94% ↑
|
2004年 | 24,599 |
7.45% ↑
|
2003年 | 22,892 |
-0.14% ↓
|
2002年 | 22,923 |
8.61% ↑
|
2001年 | 21,106 |
9.63% ↑
|
2000年 | 19,252 |
10.66% ↑
|
1999年 | 17,397 |
11.94% ↑
|
1998年 | 15,542 |
13.55% ↑
|
1997年 | 13,687 |
15.67% ↑
|
1996年 | 11,833 |
18.58% ↑
|
1995年 | 9,978 |
22.82% ↑
|
1994年 | 8,125 |
29.56% ↑
|
1993年 | 6,271 |
41.96% ↑
|
1992年 | 4,417 |
72.28% ↑
|
1991年 | 2,564 | - |
マリのカシューナッツ生産量は過去30年以上にわたり、初期のわずかな生産量から飛躍的な成長を遂げました。1991年の2,564トンから2018年の167,621トンへと伸び続けたことは、農業技術の進展や農業への投資、そしてカシューナッツへの世界的な需要拡大が要因と考えられます。特に、2014年から2018年にかけては生産量が急激に増加しました。しかし、2020年以降は生産量が減少に転じ、多くの年で70,000トン台に落ち込んでいます。このような変動は、さまざまな要因によるものでしょう。
急激な成長期を経て、生産量が近年低下した背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、気候変動の影響が非常に大きいと推測されます。乾燥地帯に位置するマリは、農作物の生産において降水量などの気候条件に大きく依存しています。また、国の農業インフラが十分に整備されていないことや、農業従事者の教育や農地の近代化の遅れも影響している可能性があります。2020年以降の生産量の減少とCOVID-19パンデミックも無関係ではありません。パンデミックの影響で輸送や貿易の制約が強まった結果、生産者が輸出市場を維持するのが困難になった可能性があります。
カシューナッツは、国際市場でも重要な農産物の一つであり、特にインドやベトナムなどの加工国を中心とする需要があります。マリにとってカシューナッツの輸出は、外貨獲得の重要な手段である一方、地域経済や雇用にも重要な影響を与えています。他の生産国であるナイジェリア、コートジボワール、インドなどとの競争が激化する中、マリが安定した品質と高い生産性を維持することが、国際市場での競争力を保つために必要です。
生産の持続可能性を確保するためには、いくつかの施策が考えられます。例えば、作物の生産工程を改善するために農業技術の導入や、乾燥地でも効率的に作物を生産できる灌漑技術の普及を進めることが効果的です。また、農業従事者への教育やトレーニングを通じて、高付加価値の製品を生産できるようにすることも重要でしょう。他にも、国内外のパートナーと協力して物流インフラを改善し、輸出の安定性を確保することも急務です。地政学的な観点から見ても、西アフリカ地域での安定的な貿易ルートの確保や政治的安定が、生産の改善に不可欠となると考えられます。
将来的にカシューナッツ生産を安定させ、さらに拡大を目指すには、マリ国内だけでなく国際的な支援も必要となるでしょう。国際機関や先進国との技術協力や開発資金の導入、また地域間の農業協力の枠組みを形成することが鍵です。これらの取り組みを通じて、生産効率を向上すると同時に、マリの農産業全体の成長につなげることが期待されます。
総合的に見て、カシューナッツの生産量推移はマリの農業の可能性と課題を映し出しています。今後の政策次第で、経済成長の一翼を担う産業となる可能性を秘めていますが、自然環境や国際市場動向に対応した適切な行動が求められます。そのため、短期的・長期的な視点を持って対応することが、マリの持続可能な発展につながる鍵となるでしょう。