Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、グルジアの牛乳生産量は過去30年間で大きな変動を示しています。1992年には368,800トンであった生産量が急激に増加し、2002年には742,324トンでピークを迎えましたが、その後下降傾向に転じ、2017年に533,643トンまで低下しました。一方で、2018年以降は一定の回復傾向が見られ、2023年には591,941トンとなっています。
グルジアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 591,941 |
0.64% ↑
|
2022年 | 588,163 |
-1.09% ↓
|
2021年 | 594,619 |
3.33% ↑
|
2020年 | 575,461 |
1.21% ↑
|
2019年 | 568,560 |
1.23% ↑
|
2018年 | 561,659 |
5.25% ↑
|
2017年 | 533,643 |
-2.28% ↓
|
2016年 | 546,106 |
-4.73% ↓
|
2015年 | 573,195 |
-3.87% ↓
|
2014年 | 596,267 |
-2.85% ↓
|
2013年 | 613,777 |
2.28% ↑
|
2012年 | 600,078 |
1.2% ↑
|
2011年 | 592,971 |
-0.91% ↓
|
2010年 | 598,430 |
6.64% ↑
|
2009年 | 561,144 |
-14.76% ↓
|
2008年 | 658,273 |
3.6% ↑
|
2007年 | 635,407 |
3.02% ↑
|
2006年 | 616,764 |
-18.75% ↓
|
2005年 | 759,110 |
0.89% ↑
|
2004年 | 752,415 |
-1.72% ↓
|
2003年 | 765,568 |
3.13% ↑
|
2002年 | 742,324 |
4.39% ↑
|
2001年 | 711,134 |
14.21% ↑
|
2000年 | 622,649 |
-6.65% ↓
|
1999年 | 666,985 |
9% ↑
|
1998年 | 611,900 |
3.22% ↑
|
1997年 | 592,800 |
13.58% ↑
|
1996年 | 521,900 |
11.18% ↑
|
1995年 | 469,400 |
12.73% ↑
|
1994年 | 416,400 |
10.74% ↑
|
1993年 | 376,000 |
1.95% ↑
|
1992年 | 368,800 | - |
グルジアの牛乳生産量は、1990年代初頭から2000年代初頭にかけて大幅な増加を記録しました。この時期は、ソビエト連邦解体後の混乱から脱し、農業分野での再編が進んだ結果と考えられます。特に、1992年の368,800トンから2002年の742,324トンに至るまで、10年間で約2倍の生産増加は顕著な成長を示しました。これは、小規模農家の個別の努力や農業政策による支援、生産効率の向上が寄与したといえます。
しかし、2003年以降、牛乳生産量は緩やかに減少し、その後、2006年からは急激な減少が見られます。この背景として、農村地域の労働力不足や、国全体の農業基盤の弱体化が挙げられます。また、2008年のロシアとの軍事衝突が、グルジアの農村経済と特に乳製品生産に悪影響を及ぼした可能性があります。国内市場の不安定化や生産輸送の困難が結果としてこの下降に影響したと考えられます。
2018年以降、牛乳生産量は比較的安定した水準で推移しています。2021年には594,619トンに達し、回復基調が続きました。この安定化には、国際貿易環境の改善と乳製品業界への新たな投資が関係していると言えます。しかし、依然として2000年代のピークには達しておらず、改善の余地が残されている状況です。
比較の観点では、グルジアの牛乳生産は世界の主要国と比べると規模が小さいアグリビジネス分野と言えます。例えば、牛乳生産で世界をリードするインドは年間の生産量が2億トンを超え、アメリカやドイツといった諸国も数千万トンという規模を誇ります。一方、日本は、2023年に約750万トンの生産を記録しており、これはグルジアの生産量の約12倍にあたります。このように、世界トッププレーヤーとの差は歴然としています。
グルジアの課題としては、持続可能な生産基盤の構築が挙げられます。牧草地や飼料供給の効率化、牛の品種改良、農場規模の最適化などは、生産性向上を促すための重要な要素です。また、地域的な紛争や政情不安が生産量に与える影響も看過できません。さらに、地球温暖化や気候変動が牧草地の変動をもたらす可能性があるため、自然環境への適応も急務となります。
今後の具体的な提言として、国内需要の増加を図るための乳製品の品質向上や、多国間協力による輸出市場の拡大が挙げられます。また、若い世代が農業に従事するような施策を進め、農業従事者の高齢化問題への対応が必要です。小規模農家への技術的・資金的な支援プログラムを展開し、地域経済の復興と乳製品産業の振興を図るべきです。さらに、災害リスク管理や、紛争時にも機能する農業インフラの確立が重要です。
結論として、グルジアの牛乳生産量は過去数十年間で大きな変遷を辿り、現在は回復基調にありますが、依然として多くの課題を抱えています。これらの問題を解決するためには、国内外からの持続可能な支援や政策の推進が必要不可欠です。国際協力を通じて、安定した牛乳生産基盤と市場を構築することで、グルジアの農業産業を強化し、食料安全保障に貢献することが期待されます。