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ニュージーランドのオート麦生産量推移(1961年~2023年)

最新の国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、ニュージーランドのオート麦生産量は1961年から2023年にかけて大きく変動を見せています。1960年代から1980年代半ばにかけては、平均50,000~70,000トンという安定した生産量を記録していた一方、1990年代以降、減少傾向が見られ、特に2000年代に入ってからは平均30,000トン前後に落ち着いています。2023年の生産量は30,259トンとなり、2022年と比較して若干の減少が見られます。このトレンドは、気候変動、農業技術の進化、競争的な国際市場の変化など、複合的な要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 30,259
-8.28% ↓
2022年 32,991
33% ↑
2021年 24,805
6.62% ↑
2020年 23,264
-13.27% ↓
2019年 26,824
10.45% ↑
2018年 24,286
-30.58% ↓
2017年 34,983
-25% ↓
2016年 46,645
60.19% ↑
2015年 29,119
-16.18% ↓
2014年 34,741
23.09% ↑
2013年 28,225
55.78% ↑
2012年 18,118
-36.35% ↓
2011年 28,466
-40.21% ↓
2010年 47,608
41.26% ↑
2009年 33,703
32.36% ↑
2008年 25,463
-7.51% ↓
2007年 27,531
-3.33% ↓
2006年 28,478
-0.82% ↓
2005年 28,714
-6.91% ↓
2004年 30,844
3.04% ↑
2003年 29,934
-14.44% ↓
2002年 34,986
56.23% ↑
2001年 22,394
-36.74% ↓
2000年 35,400
-15.11% ↓
1999年 41,700
-1.18% ↓
1998年 42,200
-14.05% ↓
1997年 49,100
19.13% ↑
1996年 41,217
7.41% ↑
1995年 38,375
-33.51% ↓
1994年 57,718
1.63% ↑
1993年 56,793
-1.44% ↓
1992年 57,625
0.77% ↑
1991年 57,187
-27.5% ↓
1990年 78,877
19.71% ↑
1989年 65,892
2.89% ↑
1988年 64,044
-18.53% ↓
1987年 78,610
31.24% ↑
1986年 59,900
17.49% ↑
1985年 50,982
-31.82% ↓
1984年 74,771
-6.16% ↓
1983年 79,677
30.75% ↑
1982年 60,939
35.13% ↑
1981年 45,096
-27.31% ↓
1980年 62,039
6.51% ↑
1979年 58,249
13.02% ↑
1978年 51,540
-11.13% ↓
1977年 57,997
38.68% ↑
1976年 41,820
-16.72% ↓
1975年 50,219
-20.59% ↓
1974年 63,237
40.64% ↑
1973年 44,965
-9.08% ↓
1972年 49,456
-17.2% ↓
1971年 59,732
3.52% ↑
1970年 57,700
10.65% ↑
1969年 52,146
16.5% ↑
1968年 44,761
58.86% ↑
1967年 28,177
-35.27% ↓
1966年 43,527
-3.81% ↓
1965年 45,249
61.44% ↑
1964年 28,028
50.18% ↑
1963年 18,663
-45.46% ↓
1962年 34,221
-19.72% ↓
1961年 42,627 -

ニュージーランドのオート麦生産量は、特に1960年代から1980年代にかけて、50,000トン以上を安定して記録していました。1983年には79,677トンとピークを迎えましたが、その後は概ね下降傾向にあります。近年の最も低い値は、2012年の18,118トンであり、それ以降も生産が大幅に回復することはなく、2020年代は概ね30,000トン前後で推移しています。

このような生産量の変化は、いくつかの重要な背景によって説明できます。まず、気候変動が作物の生育に悪影響を与えている可能性が挙げられます。ニュージーランドは温帯に属し比較的農業に適した気候を持っていますが、気候変動による不安定な降雨パターンや気温の上昇が、オート麦の生育条件を厳しくしている可能性があります。また、海外市場での競争が激化する中で、国内での栽培が魅力を失いつつある点も見逃せません。例えば、オーストラリアやカナダは世界有数のオート麦生産国であり、ニュージーランドの市場シェアは限られています。

さらに、国内農業政策も影響を与えている可能性があります。近年、ニュージーランドでは酪農を主力とする農業が台頭しており、牧草地や乳牛飼育のために穀物栽培地が減少していることが考えられます。農業経済学的観点から見れば、収益性の高い作物や事業が優先されやすいため、収益性が比較的低いオート麦の栽培面積が縮小していると言えそうです。

課題の一つとして、気候変動への適応が挙げられます。耐乾燥性や収量が高い品種の導入や、灌漑設備の充実が有効であると考えられます。また、オート麦は健康志向の高まりに伴って世界的に需要が増加しており、これを機会と捉えるべきです。例えば、オートミルク製品の原料としての需要や、大麦との競合を避ける新たな活用方法が考えられるでしょう。

地政学的に見ても、ニュージーランドはアジア太平洋地域の大市場にアクセスしやすい地理的条件を持っています。中国やインドでは人口増加とともに健康志向の食品が重視されており、これらの市場に目を向けた輸出戦略の強化が求められます。具体的には、オート麦を使った高度加工製品の輸出を促進するための支援政策が効果的です。たとえば、政府や民間企業が連携してオート麦加工技術の研究開発を行い、製品の付加価値を高めることが有用と考えられます。

一方で、土地利用の競争からくる栽培面積の減少をどう解決するかも重要です。これに対する対策としては、作物の多様化を支援する補助金政策や、地域農業コミュニティとの連携による栽培支援が挙げられます。また、持続可能な農業を推進するため、環境負荷の少ない栽培方法を導入し、地元農家の収益を向上させる試みも検討すべきです。

最後に、長期的な視点から見れば、パンデミックや自然災害の影響がオート麦生産量に与えるリスクも考慮する必要があります。ニュージーランドは比較的災害の少ない安定した国とはいえ、近年の洪水や干ばつは収穫に影響を及ぼしている可能性があります。これらの事象への備えとして、農業共済の拡大や気候変動に即した防災計画の導入が求められます。

ニュージーランドのオート麦生産の現状は、複雑な要因が絡み合った結果から生じています。それでも、国内外の市場ニーズや新たな栽培技術の開発を活かすことで、この課題を克服するための余地は十分にあります。今後、持続可能な農業と国際市場での競争力向上を目指し、政府、農業セクター、そして研究機関が協力して戦略を具体化することが重要です。