国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、ニュージーランドのトマト生産量は、長期的には一部のピークと低迷を繰り返しながら推移してきました。特に1990年代半ばには生産量が急増し、1994年には148,200トンと過去最大の数値を記録しましたが、その後は周期的な減少傾向が見られ、2022年には41,878トンまで減少しています。この推移は、ニュージーランドの農業政策、気候変動、国際市場の影響など多くの要因に起因していると考えられます。
ニュージーランドのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 41,878 |
2021年 | 41,187 |
2020年 | 41,295 |
2019年 | 56,051 |
2018年 | 56,435 |
2017年 | 48,109 |
2016年 | 69,948 |
2015年 | 74,088 |
2014年 | 80,049 |
2013年 | 84,258 |
2012年 | 89,978 |
2011年 | 92,686 |
2010年 | 90,290 |
2009年 | 92,000 |
2008年 | 90,000 |
2007年 | 110,000 |
2006年 | 92,000 |
2005年 | 90,000 |
2004年 | 95,000 |
2003年 | 100,000 |
2002年 | 87,000 |
2001年 | 87,000 |
2000年 | 87,000 |
1999年 | 87,000 |
1998年 | 67,500 |
1997年 | 100,000 |
1996年 | 138,100 |
1995年 | 136,500 |
1994年 | 148,200 |
1993年 | 69,500 |
1992年 | 77,600 |
1991年 | 100,000 |
1990年 | 90,000 |
1989年 | 80,000 |
1988年 | 80,000 |
1987年 | 70,000 |
1986年 | 70,000 |
1985年 | 60,000 |
1984年 | 60,000 |
1983年 | 60,000 |
1982年 | 61,000 |
1981年 | 47,974 |
1980年 | 57,288 |
1979年 | 48,725 |
1978年 | 61,804 |
1977年 | 60,899 |
1976年 | 47,222 |
1975年 | 50,227 |
1974年 | 65,483 |
1973年 | 64,345 |
1972年 | 60,071 |
1971年 | 42,174 |
1970年 | 44,354 |
1969年 | 49,672 |
1968年 | 50,447 |
1967年 | 37,698 |
1966年 | 36,961 |
1965年 | 49,900 |
1964年 | 46,200 |
1963年 | 50,700 |
1962年 | 45,397 |
1961年 | 37,100 |
ニュージーランドにおけるトマト生産量の推移を見てみると、農業セクターにおける変遷や影響を如実に示しています。1960年代から1970年代における生産量は約40,000~60,000トンの間で比較的安定していましたが、1980年代後半にかけて徐々に増加し、1990年代に大きなピークを迎えました。1994年の148,200トンという記録的な生産量は、当時の国内市場および輸出需要の増加と技術革新による農業の効率化が主要因だと考えられます。
しかしながら、2000年代に入ると、100,000トン前後で推移していた生産量が徐々に減少。2010年代にはさらなる低迷が顕著となり、2020年以降は約40,000トン台にまで減少しました。2020年以降の特に急激な減少は、新型コロナウイルスの影響で農業労働者の不足が発生したことが一因と見られています。このほか、地球温暖化による気候条件の変動も一部の地域での生産量に影響を与えた可能性があります。
ニュージーランドの国内市場での需要だけでなく、特にアジアや北米市場への輸出需要もトマト生産に影響を与える主要な要因です。例えば、日本などの先進国では、安全で高品質な農産物としてニュージーランド産のトマトを求める声がある一方、近年は中国やインドといった成長市場からの安価な競合製品の流入が、ニュージーランド産トマトの競争力低下を招いている可能性があります。
このような状況下で、ニュージーランドが向き合うべき課題は複数あります。第一に、生産効率を向上させるためのスマート農業技術への投資が必要です。例えば、IoT技術やAIを活用した精密農業によって、適切な水資源管理や害虫対策、生産管理を強化できます。これにより、気候変動の影響を最小限に抑えることが期待されます。
第二に、トマトの加工品や付加価値商品の開発を推進することで、輸出市場における競争力を高めるべきです。例えば、日本やドイツなどでは、トマトを使ったソースやペーストなど加工品の需要が高いため、これらの市場に向けた商品開発を行うことが求められます。
また、国際的な枠組みの中で貿易協定を活用し、新たな市場を開拓することも重要です。特にアジア太平洋地域の自由貿易協定(CPTPP)や二国間の貿易協定を通じて、ニュージーランドのトマト産業を支援できる可能性があります。
長期的な視点からも、人材育成と教育への投資が欠かせません。農業従事者の高齢化が進む中、若年層に魅力ある職場環境を提供するとともに、移民政策や外国人労働者の受け入れを適切に進めることで、労働力不足に対応することができます。
まとめると、ニュージーランドのトマト生産量は長期的に変動を続けながらも、近年は明らかに下落傾向にあります。これを改善するには、技術革新や市場開拓、人材確保を含む包括的なアプローチが必要です。ニュージーランド政府や農業団体がこれらの課題に具体的に取り組むことで、この主要産業の再生と発展を図ることができるでしょう。