国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ニュージーランドの馬飼養数は1961年の70,000頭から近年にかけて顕著に減少しています。1960年代から1980年代にかけて全体的な増加傾向が見られましたが、その後は波を描きながら減少し、2022年には33,531頭と過去最低値を記録しました。この長期的変動の背景には、経済要因、農業政策の変化、土地利用の変化、さらに地域特有の産業需要の変動が影響していると考えられます。
ニュージーランドの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 33,531 |
2021年 | 40,276 |
2020年 | 38,647 |
2019年 | 38,445 |
2018年 | 40,525 |
2017年 | 43,684 |
2016年 | 48,801 |
2015年 | 40,935 |
2014年 | 51,611 |
2013年 | 57,427 |
2012年 | 56,878 |
2011年 | 56,505 |
2010年 | 64,105 |
2009年 | 65,149 |
2008年 | 62,511 |
2007年 | 66,215 |
2006年 | 68,000 |
2005年 | 72,000 |
2004年 | 76,918 |
2003年 | 80,397 |
2002年 | 75,856 |
2001年 | 76,500 |
2000年 | 73,000 |
1999年 | 70,000 |
1998年 | 75,000 |
1997年 | 75,000 |
1996年 | 67,700 |
1995年 | 68,600 |
1994年 | 67,800 |
1993年 | 87,206 |
1992年 | 87,951 |
1991年 | 91,000 |
1990年 | 93,980 |
1989年 | 98,120 |
1988年 | 96,671 |
1987年 | 94,292 |
1986年 | 100,000 |
1985年 | 99,365 |
1984年 | 94,595 |
1983年 | 100,167 |
1982年 | 90,000 |
1981年 | 80,000 |
1980年 | 69,939 |
1979年 | 63,631 |
1978年 | 62,132 |
1977年 | 66,000 |
1976年 | 66,000 |
1975年 | 66,000 |
1974年 | 66,340 |
1973年 | 70,000 |
1972年 | 74,000 |
1971年 | 74,000 |
1970年 | 75,561 |
1969年 | 76,000 |
1968年 | 79,500 |
1967年 | 80,000 |
1966年 | 83,000 |
1965年 | 86,783 |
1964年 | 80,000 |
1963年 | 75,000 |
1962年 | 75,000 |
1961年 | 70,000 |
ニュージーランドにおける馬飼養数の推移は、同国の産業構造や社会的変化を反映した重要なデータです。まず1960年代から1980年代にかけては馬の飼養数が増加し、特に1983年には過去最高の100,167頭に達しました。この増加の背景には、農業における馬の利用の継続的需要や、競馬や娯楽産業の発展による飼養の拡大があった可能性があります。しかし1980年代後半から徐々に減少が見られ、2022年の33,531頭まで大幅に縮小しました。
馬飼養数の減少には複合的な理由が考えられます。一つは地域産業の変化です。ニュージーランドでは農業機械の導入が進み、従来馬が担っていた農作業が大部分で機械に置き換わりました。また競馬産業も特定の地域では低迷し、娯楽としての需要が限定的になった可能性があります。さらに土地利用の変化も重要です。過去数十年で都市化が進み、馬の飼養に適した土地の減少が進行しました。
社会的な変化も重要な要因の一つです。馬がかつて農業や移動手段として必需品だった時代に比べ、現代ではその需要は急激に減少しました。さらに新型コロナウイルス感染症の影響により、馬を維持するためのコストが上昇し、多くの飼養者が飼育を諦めた可能性もあります。これに加え、気候変動による影響も見逃せません。干ばつや土壌劣化が進むと、馬の飼養に必要な牧草や水資源が確保しづらくなるため、長期的な減少要因となるでしょう。
これらの課題を踏まえると、馬飼養の現状を改善するための具体的な対策が必要です。まず、一部の農家や馬関連産業に対して、適切な助成金や奨励金を提供することで、持続可能な規模での馬飼養をサポートすることが考えられます。また地域経済と連携して、馬を活用した観光産業の振興を図るべきです。例えば、「乗馬観光」や「馬文化体験プログラム」を通じて地域住民や観光客の関心を引き、新たな経済需要を生み出すことが可能です。
さらに、環境変化の影響に対処するための政策も不可欠です。気候変動に対応した土地管理や水資源の確保、馬の健康を維持するための研修プログラムの強化が有効でしょう。国際的な協力も視野に入れるべきであり、飼養技術や環境保全における先進国の事例から学び、ニュージーランドの実情に合致した対策を導入することが望まれます。
結論として、馬飼養数の推移はニュージーランドの産業および社会の変化を反映した動向である一方で、その減少は持続的な対応が求められる重要な課題です。飼養者への環境支援や地域産業との連携、さらに気候変動への適応策を実施することで、馬の飼養数を安定的に維持しつつ、農村地域の経済や文化維持に寄与する可能性が示唆されます。今後、政府や地方自治体、国際機関が連携しながら長期的な解決策を模索することが期待されます。