Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ニュージーランドの牛乳生産量は1961年の5,217,000トンから緩やかに増加を続け、2022年には21,051,000トンに達しています。特に2000年代以降、生産量が急激に伸び、2012年から2018年にかけて20,000,000トンを超えました。しかし近年、2021年をピークにやや減少傾向が観察されています。
ニュージーランドの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 21,051,000 |
2021年 | 21,886,376 |
2020年 | 21,871,305 |
2019年 | 21,786,167 |
2018年 | 21,947,466 |
2017年 | 21,461,603 |
2016年 | 21,175,530 |
2015年 | 21,938,825 |
2014年 | 21,319,715 |
2013年 | 19,469,000 |
2012年 | 19,129,000 |
2011年 | 17,339,000 |
2010年 | 17,010,456 |
2009年 | 16,483,000 |
2008年 | 15,216,840 |
2007年 | 15,618,288 |
2006年 | 15,172,464 |
2005年 | 14,637,894 |
2004年 | 15,030,000 |
2003年 | 14,349,000 |
2002年 | 13,865,939 |
2001年 | 13,119,412 |
2000年 | 12,235,392 |
1999年 | 10,881,408 |
1998年 | 11,380,000 |
1997年 | 11,058,000 |
1996年 | 10,010,000 |
1995年 | 9,285,000 |
1994年 | 9,812,000 |
1993年 | 9,003,000 |
1992年 | 8,050,000 |
1991年 | 7,871,000 |
1990年 | 7,509,000 |
1989年 | 7,252,000 |
1988年 | 7,751,000 |
1987年 | 7,292,000 |
1986年 | 8,235,000 |
1985年 | 7,884,000 |
1984年 | 7,624,250 |
1983年 | 6,915,950 |
1982年 | 6,781,920 |
1981年 | 6,683,970 |
1980年 | 6,700,470 |
1979年 | 6,374,250 |
1978年 | 6,081,133 |
1977年 | 6,648,788 |
1976年 | 6,563,124 |
1975年 | 6,096,615 |
1974年 | 5,688,935 |
1973年 | 6,069,780 |
1972年 | 6,242,141 |
1971年 | 5,962,442 |
1970年 | 5,986,180 |
1969年 | 6,458,882 |
1968年 | 6,180,215 |
1967年 | 6,251,430 |
1966年 | 6,133,650 |
1965年 | 5,836,100 |
1964年 | 5,518,800 |
1963年 | 5,346,500 |
1962年 | 5,224,700 |
1961年 | 5,217,000 |
ニュージーランドの牛乳生産量の推移は、国内外の需要と供給、経済動向、そして気候変動といった多様な要因を反映しています。1961年の生産量は5,217,000トンで、当時の乳製品市場はほぼ国内需要に限定されていました。しかしその後の技術革新と輸出戦略の成功により、特に1990年代以降には国際市場向けの生産が飛躍的に拡大しました。
データを見ると、2000年頃から急激な生産量の増加が顕著です。この背景には、特に中国やアジア市場での乳製品需要の高まり、酪農技術の進歩、そして輸出主導型の政策が寄与しています。ニュージーランドは2020年代に至るまで、世界有数の乳製品輸出国としての地位を確立しています。例えば2014年から2018年の間、一貫して21,000,000トンを超える生産量を維持しています。このころ、ニュージーランドの乳製品輸出の主な市場は、中国、東南アジア、中東諸国などとなっていました。ただし、この急速な成長は課題をもたらしました。特に、過剰生産と市場の飽和を受けて、価格の下落が指摘されています。
一方、2021年以降生産量の伸びは緩やかになり、2022年には21,051,000トンとやや減少しています。この減少の主因として、まず気候変動の影響が挙げられます。ニュージーランドでは干ばつや洪水などの極端な気象現象が頻発しており、牧草地の生産性に深刻な影響を及ぼしています。また、家畜の負担軽減や温室効果ガス排出削減策の影響もあります。同国の酪農部門は、国民一人当たりの温室効果ガス排出量が世界で最も高い水準にあるとされており、これに対する批判が高まっています。その結果、政府や業界はより持続可能な酪農への転換を図っていますが、これが一部で生産効率の低下につながっている可能性があります。
他国との比較では、ニュージーランドの牛乳生産量は中国やアメリカといった大国には届かないものの、国際市場への依存度が高く、輸出に関しては競争力を保っています。たとえばアメリカや中国では、国内消費が牛乳生産の主要な目的となっていますが、ニュージーランドは生産量の大半を輸出に割り当てています。この輸出依存型の構造は、地政学的リスクや新型コロナウイルスパンデミックのような世界的な供給チェーンの混乱の影響を受けやすいという特徴を持っています。
今後の課題として、まず第一に気候変動によるリスクへの対応が挙げられます。干ばつや気象変動への備えとして、より効率的な水資源管理や牧草品種の改良が必要です。また、二酸化炭素やメタンの排出量削減のため、革新的な酪農技術の導入も急務です。さらに、外交政策の観点では、輸出依存のリスク分散を図ることが求められます。たとえば、依存する特定の市場ではなく、多国間での輸出先の多様化を進めることで安定性を向上させることが考えられます。
結論として、ニュージーランドの牛乳生産は過去60年間で大きな成長を遂げ、その過程で同国は世界有数の乳製品輸出国としての地位を確立しました。しかし、経済的な持続可能性や気候変動問題への対応が大きな課題となっています。これらの課題に対処しつつ、効率と環境負荷のバランスを取った持続可能な酪農業が次世代において重要なテーマとなるでしょう。国や国際機関は政策策定において、これらの点を重点的に取り入れる必要があります。