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ニュージーランドのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、ニュージーランドのヤギ飼養頭数は、1961年の28,000頭から1988年のピークである1,300,680頭まで増加しました。その後、急激な減少が続き、2022年には88,428頭となり、およそ60年前の水準近くまで戻っています。この推移は、ニュージーランドの農業環境や市場需要、政策変更に強く影響されていたことが示唆されます。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 88,428
2021年 116,666
2020年 116,666
2019年 93,606
2018年 88,255
2017年 98,812
2016年 112,385
2015年 74,718
2014年 97,370
2013年 79,977
2012年 90,096
2011年 85,970
2010年 95,281
2009年 82,229
2008年 95,731
2007年 111,981
2006年 131,033
2005年 144,000
2004年 141,206
2003年 179,435
2002年 153,000
2001年 163,400
2000年 182,840
1999年 186,390
1998年 228,000
1997年 215,000
1996年 228,000
1995年 256,000
1994年 284,000
1993年 353,000
1992年 532,767
1991年 792,577
1990年 1,062,900
1989年 1,222,388
1988年 1,300,680
1987年 1,053,955
1986年 722,564
1985年 426,887
1984年 230,365
1983年 150,497
1982年 92,747
1981年 68,061
1980年 52,607
1979年 48,958
1978年 28,192
1977年 14,434
1976年 70,000
1975年 60,000
1974年 50,000
1973年 90,000
1972年 65,000
1971年 40,000
1970年 40,000
1969年 40,416
1968年 42,651
1967年 45,000
1966年 45,000
1965年 45,000
1964年 45,000
1963年 40,000
1962年 25,000
1961年 28,000

ニュージーランドにおけるヤギ飼養頭数の歴史的な推移を見ると、いくつかの重要なトレンドが浮かび上がります。1961年には28,000頭であった飼養頭数は、1970年代中頃まで大きな増減は見られず、むしろ安定していました。これは当時、ニュージーランドの農業が他の家畜、特に羊や牛に重点を置いていたため、ヤギ農業が比較的限られた規模で行われていたことが背景にあります。

しかし、1970年代後半から1980年代にかけて飼養頭数は急激に増加しました。特に1983年以降、わずか数年の間に10倍近い増加が見られたことは特筆すべきです。この増加は、ヤギ乳やヤギ毛(特にモヘア)の市場需要の高まりやニュージーランド政府の支援政策が関連していると考えられます。この時期、ヤギ産業が新たな収益源として注目され、多くの農家が参入したことが影響を与えたと分析されます。また、この急成長は、特にアジアやヨーロッパ諸国でのヤギ製品需要の高まりとも関連があると考えられます。

しかし1988年以降、約1,300,680頭をピークに、飼養頭数が減少し始めました。特に1990年代初頭になると、急激な減少傾向が顕著となり、1995年にはわずか256,000頭まで落ち込みました。この減少要因としては、世界市場でのモヘア価格の低迷、農業政策の転換、またはヤギ産業における過剰供給と競争激化が挙げられます。これらの変化により、飼養の採算性が低下し、多くの農家が生産をあきらめたと見られます。

2000年代以降は、おおむね10万頭前後と比較的安定した水準で推移しており、2022年には88,428頭と落ち着きを見せています。この安定傾向の背景としては、規模の縮小が進む一方で、専門性の高い高品質製品への需要が支えとなっている点があると考えられます。また、ニュージーランド国内でも、より専門性の高いエコ農業や持続可能な生産方式が注目されるようになり、伝統的な大量生産から高付加価値型への転換が進んでいると考察されます。

このデータは、ニュージーランドのヤギ産業が市場と需要の変化に大きく影響を受けることを示す好例です。それゆえ、今後も市場動向の深い分析が求められます。一方で、地政学的リスクや輸出規制、疫病の流行などがヤギ飼養頭数とその関連産業にどのような影響を与えるかも考えなくてはなりません。たとえば、新型コロナウイルスの影響で輸出動線が制限され、国際需要が一時的に低迷した背景があります。

将来的には、この産業を持続可能にするために以下のような対策を提案します。第一に、気候変動や土地利用の観点から、地域環境に適したヤギ飼養対策を推進すべきです。第二に、輸出向けに高品質な乳製品や衣料品(モヘアやカシミヤ)をさらに強化するための投資を行うことが必要です。こうした方向性により、国内外からの付加価値を上げ、市場ニーズに柔軟に応えることが可能になるでしょう。

結論として、ニュージーランドのヤギ飼養頭数の推移は、農業環境の変化や政策要因、国際市場の影響を受けてきたことが改めて浮き彫りになりました。今後も国内外の動向に素早く対応できる産業モデルを構築し、持続可能な枠組みの中で、付加価値の高い製品を生産することでさらなる発展が可能と考えられます。国際機関や政府も協力し、科学的データに基づいた政策支援を続けることが、この産業の未来を支える鍵となるでしょう。