国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ニュージーランドの鶏卵生産量は長期的に波がありながらも増加傾向を見せています。1961年の42,300トンから2023年には62,432トンとなり、60年以上で約1.5倍に増加しました。ただし、近年では特に2020年に68,164トンと過去最高値を記録したのち、2022年には急落の59,141トンへの減少が見られ、2023年にはやや持ち直したものの62,432トンにとどまっています。
ニュージーランドの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 62,432 |
5.57% ↑
|
2022年 | 59,141 |
-13.01% ↓
|
2021年 | 67,986 |
-0.26% ↓
|
2020年 | 68,164 |
8.62% ↑
|
2019年 | 62,757 |
1.34% ↑
|
2018年 | 61,924 |
-0.94% ↓
|
2017年 | 62,510 |
3.83% ↑
|
2016年 | 60,205 |
4.75% ↑
|
2015年 | 57,473 |
6.43% ↑
|
2014年 | 54,000 |
1.89% ↑
|
2013年 | 53,000 |
3.72% ↑
|
2012年 | 51,100 |
-2.29% ↓
|
2011年 | 52,300 |
-1.47% ↓
|
2010年 | 53,082 |
2.48% ↑
|
2009年 | 51,800 |
-2.63% ↓
|
2008年 | 53,200 |
14.17% ↑
|
2007年 | 46,598 |
-8.63% ↓
|
2006年 | 51,000 |
0.23% ↑
|
2005年 | 50,882 |
6.14% ↑
|
2004年 | 47,940 |
3.94% ↑
|
2003年 | 46,124 |
1% ↑
|
2002年 | 45,667 |
4.03% ↑
|
2001年 | 43,898 |
2.07% ↑
|
2000年 | 43,007 |
2% ↑
|
1999年 | 42,165 |
-0.32% ↓
|
1998年 | 42,300 |
0.71% ↑
|
1997年 | 42,000 |
0.24% ↑
|
1996年 | 41,900 |
0.96% ↑
|
1995年 | 41,500 | - |
1994年 | 41,500 |
-3.49% ↓
|
1993年 | 43,000 |
-2.27% ↓
|
1992年 | 44,000 |
-4.39% ↓
|
1991年 | 46,020 |
0.48% ↑
|
1990年 | 45,802 |
2.47% ↑
|
1989年 | 44,700 |
9.83% ↑
|
1988年 | 40,700 |
0.49% ↑
|
1987年 | 40,500 |
-16.32% ↓
|
1986年 | 48,400 |
1.47% ↑
|
1985年 | 47,700 |
-7.2% ↓
|
1984年 | 51,400 |
-6.03% ↓
|
1983年 | 54,700 |
-7.29% ↓
|
1982年 | 59,000 |
0.68% ↑
|
1981年 | 58,600 |
7.72% ↑
|
1980年 | 54,400 |
-5.5% ↓
|
1979年 | 57,564 |
-1.8% ↓
|
1978年 | 58,617 |
2.58% ↑
|
1977年 | 57,143 |
7.25% ↑
|
1976年 | 53,282 |
-6.3% ↓
|
1975年 | 56,862 | - |
1974年 | 56,862 |
-2.41% ↓
|
1973年 | 58,266 |
7.58% ↑
|
1972年 | 54,159 |
1.85% ↑
|
1971年 | 53,176 |
2.12% ↑
|
1970年 | 52,070 |
1.15% ↑
|
1969年 | 51,480 |
0.57% ↑
|
1968年 | 51,188 |
0.37% ↑
|
1967年 | 51,000 |
8.97% ↑
|
1966年 | 46,800 |
4% ↑
|
1965年 | 45,000 |
0.9% ↑
|
1964年 | 44,600 |
1.13% ↑
|
1963年 | 44,100 |
4.01% ↑
|
1962年 | 42,400 |
0.24% ↑
|
1961年 | 42,300 | - |
ニュージーランドは牧畜業や農業が主要な産業であり、鶏卵生産も国内消費と輸出を支える重要な分野として位置づけられています。同国の鶏卵生産量推移を詳しく見ると、1961年から2023年までに生産量は大きく増加していますが、その過程には特徴的な波動が見られます。
1961年から1970年代前半にかけては生産量が穏やかに増加しており、経済成長に伴う国内の需要増加がその背景にあると考えられます。しかし、1974年以降は生産量がやや不安定となり、1980年代後半から1990年代にかけては減少傾向が顕著でした。この減少は、鶏卵消費の多様化、代替蛋白源の台頭、および環境保護や動物福祉の規制強化による飼育方式の変化などが影響した可能性があります。この間、1987年には40,500トンへと落ち込み、それまでの最低値を記録しました。
2000年代に入ると、再び緩やかな増加期に入り、2010年代中盤からは増加スピードが加速しました。これは、より効率的な鶏卵生産方法への転換や、健康志向の高まりで鶏卵が栄養価の高い食品として見直されたことが寄与していると考えられます。2020年には過去最高となる68,164トンを記録しましたが、その後2022年には急激に59,141トンに減少し、これは異常気象や鳥インフルエンザの流行、さらには世界的なパンデミックによる労働力不足が原因として挙げられるでしょう。
ニュージーランドの鶏卵生産量は国際標準と比較して一定の安定感を持つ一方で、最近の数値は他国と共通の課題も反映しています。たとえば、アメリカでも2022年は鳥インフルエンザの影響で鶏卵の供給が大幅に減った年として知られていますが、同時に中国やインドなど、生産量が増加し続ける国々とは対照的な動きです。これらの国々では人口増加と都市化が鶏卵の需要を拡大させています。
ニュージーランドが抱える課題の一つとして、動物福祉や環境政策などによる生産コストの上昇があります。鶏のケージ飼育を廃止する動きや、飼料価格の高騰、農業の持続可能性に向けた規制は、鶏卵生産を持続的に増加させることの難しさを示しています。加えて、パンデミックなどで明らかになった労働力不足や、輸送の制約も生産調整に大きな影響を与えています。
2020年以降の世界的な気候変動や感染症の影響に対応し、ニュージーランドが安定した鶏卵生産を維持するには、いくつかの具体的な提案が考えられます。例えば、国内的にはテクノロジーの導入による生産効率化や、自動化システムの推進が重要です。国際的には、貿易関係を強化することによって供給の安定を確保するとともに、動物福祉政策と持続可能性へ配慮した生産モデルへの転換を進めるべきでしょう。また、非常時に備えた在庫管理や輸送網の強化も重要な課題となります。
今後、地政学的なリスクや自然災害による影響を受けながらも、ニュージーランドが安定的で効率的な鶏卵生産を維持するためには、国内外で密接な協力を行い、自国の特性を活かした長期的なビジョンを持つことが求められます。こうした対策には政府・民間双方の努力が必要であり、特に労働力や技術革新を通じて柔軟性のある生産システムを構築することが、未来の安定した食料供給の鍵となるでしょう。