国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、ニュージーランドのキウイフルーツ生産量は、1970年代から2023年にかけて一貫した長期的な増加傾向を示しています。特に1980年代から1990年代までの急激な成長が記録されており、その後は持続的な増加が見られます。2023年には、生産量が662,744トンに達しており、ピークを記録しました。この間には自然災害や疫病の影響を受けつつも、ニュージーランドの農業技術の向上により生産効率が改善しています。世界的にも主要な生産・輸出国としての地位を確立しています。
ニュージーランドのキウイフルーツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 662,744 |
9.81% ↑
|
2022年 | 603,523 |
-3.35% ↓
|
2021年 | 624,431 |
-0.03% ↓
|
2020年 | 624,613 |
4.44% ↑
|
2019年 | 598,059 |
-0.16% ↓
|
2018年 | 599,000 |
35.42% ↑
|
2017年 | 442,313 |
-5.2% ↓
|
2016年 | 466,577 |
6.57% ↑
|
2015年 | 437,819 |
0.19% ↑
|
2014年 | 437,000 |
10% ↑
|
2013年 | 397,287 |
5.55% ↑
|
2012年 | 376,400 |
-10.43% ↓
|
2011年 | 420,231 |
-3.2% ↓
|
2010年 | 434,120 |
12.35% ↑
|
2009年 | 386,389 |
1.15% ↑
|
2008年 | 382,000 |
4.05% ↑
|
2007年 | 367,133 |
11.46% ↑
|
2006年 | 329,384 |
3.58% ↑
|
2005年 | 318,000 |
2.91% ↑
|
2004年 | 309,000 |
29.83% ↑
|
2003年 | 238,000 |
-4.22% ↓
|
2002年 | 248,495 |
-8.2% ↓
|
2001年 | 270,702 |
3.46% ↑
|
2000年 | 261,638 |
20.57% ↑
|
1999年 | 217,000 |
-9.58% ↓
|
1998年 | 240,000 |
-2.04% ↓
|
1997年 | 245,000 |
7.46% ↑
|
1996年 | 228,000 |
2.24% ↑
|
1995年 | 223,000 |
0.9% ↑
|
1994年 | 221,000 |
-5.56% ↓
|
1993年 | 234,000 |
-10.34% ↓
|
1992年 | 261,000 |
12.02% ↑
|
1991年 | 233,000 |
-16.79% ↓
|
1990年 | 280,000 |
47.37% ↑
|
1989年 | 190,000 |
-17.39% ↓
|
1988年 | 230,000 |
13.3% ↑
|
1987年 | 203,000 |
45% ↑
|
1986年 | 140,000 |
33.33% ↑
|
1985年 | 105,000 |
16.67% ↑
|
1984年 | 90,000 |
154.93% ↑
|
1983年 | 35,304 |
39.25% ↑
|
1982年 | 25,353 |
-14.89% ↓
|
1981年 | 29,788 |
65.81% ↑
|
1980年 | 17,965 |
-3.67% ↓
|
1979年 | 18,650 |
94.76% ↑
|
1978年 | 9,576 |
20.23% ↑
|
1977年 | 7,965 |
31.09% ↑
|
1976年 | 6,076 |
37.62% ↑
|
1975年 | 4,415 |
-21.27% ↓
|
1974年 | 5,608 |
54.15% ↑
|
1973年 | 3,638 |
27.87% ↑
|
1972年 | 2,845 |
13.8% ↑
|
1971年 | 2,500 |
25% ↑
|
1970年 | 2,000 | - |
ニュージーランドは、キウイフルーツの大生産国として知られ、その生産の歴史は1970年代にさかのぼります。当初2000トン程度であった生産量は、1980年代に入ると急激に増加しました。例えば、1980年の生産量がわずか17,965トンであったのに対し、1987年には203,000トンを記録しており、この期間の増加幅は異常ともいえる成長速度を示しています。この大幅な成長は、品種改良、輸出需要の拡大、新たな栽培技術の導入と政府の農業支援策が背景にあります。
1980年代後半から1990年代にかけてのデータでは、一部の年度で生産量の変動が見られます。例えば、1990年では280,000トンと過去最高を記録した一方で、続く1991年には233,000トンと減少しています。この変動は主に異常気象や市場需要の調整、また栽培サイクルの影響に起因するものと考えられます。
キウイフルーツ生産量が再び大幅に増加したのは2000年代中頃からです。この時期、特に2009年以降では、ニュージーランドの農業部門の技術革新が顕著に進み、精密農業技術や病害対策の施策によって生産性が向上しました。2023年には662,744トンと過去最高値を記録し、この国が依然としてキウイフルーツ生産のトップランナーであることを示しています。
一方で、この業界は自然災害や疫病リスクとの戦いが課題です。例えば2012年の生産量が376,400トンと低下している理由の一つとして、キウイフルーツ特有の細菌「PSA病」の流行が挙げられます。このような疫病リスクが生産活動に深刻な影響を与える場合があるため、持続可能な農業を実現するためのさらなる研究開発が必要と言えるでしょう。
また、気候変動も着目すべき重要なトピックです。ニュージーランドの地政学的位置は、温暖な気候と肥沃な土地に恵まれており、キウイフルーツの生産に最適な条件を提供してきました。しかしながら、地球温暖化により、降水パターンや気温の変化が進行すると、これまで利用可能であった農地が適切でなくなる可能性があります。このリスクに備えるために、農地の多様化や耐性の高いキウイフルーツ品種の導入が求められます。
さらに、国際競争も見逃せない要因です。中国が近年キウイフルーツの生産量を増加させており、ニュージーランドの輸出市場に影響を与える可能性があります。中国のみならず、イタリアやギリシャなども主要な生産地であり、それぞれが自国のキウイフルーツ産業を保護・促進しています。こうした競争環境の中、ニュージーランドは高品質なブランドイメージや輸送技術の向上など、差別化戦略を強化する必要があります。
将来的には、温暖化対策、品種改良、そして世界的な分業体制の中での競争力強化がこの国のキウイフルーツ産業の持続的発展に不可欠でしょう。また、農業従事者の高齢化対策として、若年層や海外からの働き手を呼び込む政策も重要です。さらには、地域間協力を通じて技術やノウハウを共有し、災害や疫病に関する早期警戒体制を構築することも有効な手段となります。
結論として、ニュージーランドのキウイフルーツ生産は継続的に成長しているものの、気候リスクや疫病、国際競争といった課題にさらされています。この豊かな自然資源と技術的優位性を活用しつつ、国際協力に基づく継続的な対策を講じることで、その繁栄を維持することができるでしょう。