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ニュージーランドの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによると、ニュージーランドの羊飼養数は長期的に減少しており、2022年には約2,533万匹となりました。1961年には約4,846万匹であり、1982年には約7,030万匹とピークを迎えましたが、その後減少傾向に転じました。この半世紀で飼養数がおよそ3分の1にまで縮小しています。このデータは、ニュージーランド農業の構造的変化や市場需要の変化を示唆しています。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 24,359,267
-3.85% ↓
2022年 25,333,562
-1.55% ↓
2021年 25,732,889
-1.14% ↓
2020年 26,028,935
-2.96% ↓
2019年 26,821,846
-1.74% ↓
2018年 27,295,749
-0.84% ↓
2017年 27,526,537
-0.21% ↓
2016年 27,583,673
-5.28% ↓
2015年 29,120,827
-2.29% ↓
2014年 29,803,402
-3.19% ↓
2013年 30,786,761
-1.52% ↓
2012年 31,262,715
0.42% ↑
2011年 31,132,328
-4.39% ↓
2010年 32,562,612
0.55% ↑
2009年 32,383,588
-5% ↓
2008年 34,087,864
-11.37% ↓
2007年 38,460,476
-4.04% ↓
2006年 40,081,594
0.51% ↑
2005年 39,879,660
1.55% ↑
2004年 39,271,336
-0.71% ↓
2003年 39,552,112
-0.05% ↓
2002年 39,572,000
-1.09% ↓
2001年 40,010,000
-5.32% ↓
2000年 42,260,000
-7.49% ↓
1999年 45,679,888
2.88% ↑
1998年 44,400,000
-3.64% ↓
1997年 46,077,000
-2.78% ↓
1996年 47,393,908
-2.91% ↓
1995年 48,816,272
-1.31% ↓
1994年 49,466,056
-1.65% ↓
1993年 50,298,360
-4.32% ↓
1992年 52,568,000
-4.7% ↓
1991年 55,161,648
-4.65% ↓
1990年 57,852,192
-4.48% ↓
1989年 60,568,656
-6.24% ↓
1988年 64,600,080
0.55% ↑
1987年 64,243,856
-4.78% ↓
1986年 67,469,520
-0.57% ↓
1985年 67,853,616
-2.7% ↓
1984年 69,739,008
-0.75% ↓
1983年 70,262,576
-0.06% ↓
1982年 70,301,456
0.6% ↑
1981年 69,883,760
1.62% ↑
1980年 68,771,776
8.26% ↑
1979年 63,523,312
2.19% ↑
1978年 62,162,864
5.17% ↑
1977年 59,104,816
4.8% ↑
1976年 56,400,384
1.95% ↑
1975年 55,320,000
-1.01% ↓
1974年 55,883,008
-1.41% ↓
1973年 56,683,808
-6.9% ↓
1972年 60,882,720
3.35% ↑
1971年 58,912,000
-2.26% ↓
1970年 60,276,112
0.57% ↑
1969年 59,937,424
-0.89% ↓
1968年 60,473,600
0.74% ↑
1967年 60,029,984
4.69% ↑
1966年 57,343,264
6.69% ↑
1965年 53,747,760
4.79% ↑
1964年 51,291,808
2.19% ↑
1963年 50,190,288
2.45% ↑
1962年 48,988,000
1.08% ↑
1961年 48,462,304 -

ニュージーランドは、長年にわたり世界有数の羊産業を支えており、牛肉や乳製品と並んで主要な農業輸出産品として重要な役割を果たしてきました。特に、羊毛や羊肉の生産量で世界的なシェアを占め、1980年代には約7,030万匹の羊を飼養していました。しかし、1982年以降、長期的な減少を続け、2022年には約2,533万匹とピーク時の約3分の1にまで縮小しました。この変化にはいくつかの要因が絡んでいます。

まず、国際市場の需要構造の変化が挙げられます。1980年代以降、世界的に合成繊維が普及したことで、羊毛の需要が減少しました。さらに、ニュージーランドの輸出相手国であるヨーロッパやアメリカでは食肉消費の多様化が進み、牛肉や鶏肉の需要が相対的に高まりました。このように、輸入品の需要減少が羊産業に大きな影響を与えました。

次に、国内農業の優先順位と政策変化も影響を及ぼしました。1984年にニュージーランド政府が農業補助金を廃止して以降、効率性を高めるための生産転換が進みました。この結果、多くの羊農場が乳牛やキウイフルーツなど、より収益性の高い産業に転換しました。また、1980年代から進行した都市化による農地の縮小も羊産業の衰退に拍車をかけました。

地政学的リスクと気候変動も羊産業に影響を与えています。ニュージーランドは気候変動により干ばつや異常気象に直面しており、こうした状況は農地の生産性を低下させます。また、海外輸出が重要な産業であるため、地域間での貿易摩擦や輸出相手国での保護主義台頭といったリスクも影響を及ぼしています。

この動向を踏まえた課題への対策として、まず羊産業の多様化と高付加価値の製品へのシフトが求められます。例えば、プレミアム羊肉や高品質の羊皮革製品、特殊羊毛品種を活かした製品開発が考えられます。また、地元資源を活用した観光業との連携やエコツーリズムへの展開も、新しい収益の流れを生み出す可能性があります。さらに持続可能な農業技術の採用や気候変動への対応も不可欠です。

特に国際競争力を維持するためには、輸出市場の多様化と貿易協定の強化が重要です。主にアジア太平洋地域への輸出拡大を図ることが考えられます。例えば、日本、中国、韓国などでは高品質な羊肉や羊毛製品の需要が増えており、農作物や加工品も含めた輸出戦略の強化が鍵となります。また、食品のトレーサビリティ(生産履歴の追跡)や環境法規制への対応を強化し、国際基準を満たす製品を提供することが競争力向上につながります。

結論として、ニュージーランドの羊産業は過去から現在にかけて大きな変化の中で縮小してきましたが、新たな価値創造と持続可能な発展への取り組みが今後の成長の鍵を握ると言えます。農業政策や環境政策を調整し、新たな市場機会を探ることで、この産業の再活性化が期待されます。また、これを実現するためには政府、産業界、科学技術部門間の協力が不可欠です。今後もニュージーランドが農業大国としての地位を維持するためには、持続可能性と競争力を両立する戦略的な取り組みが必要です。