国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、ニュージーランドのヤギ肉生産量の推移には特徴的な変動が見られます。1961年の400トンから1973年には1,500トンへと拡大し、その後1991年には3,019トンとピークを迎えましたが、それ以降は減少と増加を繰り返し、2023年には949トンと低下しています。ヤギ肉生産量全体の変動からは、ニュージーランドの農業政策や地政学的な影響がうかがえます。
ニュージーランドのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 949 |
-41.75% ↓
|
2022年 | 1,629 |
-19.54% ↓
|
2021年 | 2,025 |
1.48% ↑
|
2020年 | 1,995 |
8.8% ↑
|
2019年 | 1,834 |
0.36% ↑
|
2018年 | 1,827 |
29.03% ↑
|
2017年 | 1,416 |
1.14% ↑
|
2016年 | 1,400 |
11.55% ↑
|
2015年 | 1,255 |
-3.39% ↓
|
2014年 | 1,299 |
4.76% ↑
|
2013年 | 1,240 |
14.92% ↑
|
2012年 | 1,079 |
-14.3% ↓
|
2011年 | 1,259 |
2.44% ↑
|
2010年 | 1,229 |
5.49% ↑
|
2009年 | 1,165 |
-9.97% ↓
|
2008年 | 1,294 |
-15.15% ↓
|
2007年 | 1,525 |
11.8% ↑
|
2006年 | 1,364 |
-5.41% ↓
|
2005年 | 1,442 |
-4.38% ↓
|
2004年 | 1,508 |
13.73% ↑
|
2003年 | 1,326 |
-13.16% ↓
|
2002年 | 1,527 |
-3.66% ↓
|
2001年 | 1,585 |
26.4% ↑
|
2000年 | 1,254 |
-18.78% ↓
|
1999年 | 1,544 |
-9.02% ↓
|
1998年 | 1,697 |
-3.63% ↓
|
1997年 | 1,761 |
14.2% ↑
|
1996年 | 1,542 |
-4.46% ↓
|
1995年 | 1,614 |
-13.97% ↓
|
1994年 | 1,876 |
-13.39% ↓
|
1993年 | 2,166 |
-8.06% ↓
|
1992年 | 2,356 |
-21.96% ↓
|
1991年 | 3,019 |
51.1% ↑
|
1990年 | 1,998 |
-21.25% ↓
|
1989年 | 2,537 |
138.89% ↑
|
1988年 | 1,062 |
158.39% ↑
|
1987年 | 411 |
86.82% ↑
|
1986年 | 220 |
-63.33% ↓
|
1985年 | 600 |
-20% ↓
|
1984年 | 750 |
19.05% ↑
|
1983年 | 630 |
-16% ↓
|
1982年 | 750 |
-11.76% ↓
|
1981年 | 850 |
-10.53% ↓
|
1980年 | 950 |
5.56% ↑
|
1979年 | 900 |
76.47% ↑
|
1978年 | 510 |
59.38% ↑
|
1977年 | 320 |
-75.38% ↓
|
1976年 | 1,300 |
18.18% ↑
|
1975年 | 1,100 |
15.79% ↑
|
1974年 | 950 |
-36.67% ↓
|
1973年 | 1,500 |
36.36% ↑
|
1972年 | 1,100 |
10% ↑
|
1971年 | 1,000 |
42.86% ↑
|
1970年 | 700 |
9.38% ↑
|
1969年 | 640 |
14.29% ↑
|
1968年 | 560 |
-6.67% ↓
|
1967年 | 600 |
3.45% ↑
|
1966年 | 580 |
-3.33% ↓
|
1965年 | 600 |
1.69% ↑
|
1964年 | 590 |
9.26% ↑
|
1963年 | 540 |
50% ↑
|
1962年 | 360 |
-10% ↓
|
1961年 | 400 | - |
ニュージーランドのヤギ肉生産量は、過去60年以上にわたり波を打つように推移してきました。このデータを分析すると、生産量の増減に農業政策、気候条件、市場需要の変動、そして経済的・地政学的要因が密接に関与していることがわかります。
1960年代から1970年代にかけてのデータでは、徐々に生産量が増加し、1973年に1,500トンと比較的大きな値に達しました。この時期にはヤギ肉需要の伸びが背景にあったと考えられます。しかし、その後1977年に320トンと急激に減少した点は、経済的不安定や市場の供給過多が影響した可能性を示唆しています。
1988年以降、生産量は再び大幅に増加し、1991年には3,019トンと過去最高を記録しました。この急成長は、当時の輸出拡大に向けた政府政策や貿易協定の影響を受けていると考えられます。しかし、このピーク以降は緩やかな減少傾向を示し、2000年代以降になると1,000~1,500トンの範囲で横ばいになる様子が確認できます。この安定した停滞は、国内需要の減少や、世界市場における他の肉類との競争激化によるものと推測されます。
さらに、2016年以降、生産量は再び上昇傾向を見せ、2020年から2021年には2,000トンを超えるまで回復しました。しかし2022年から2023年にかけて生産量が急激に減少している点は注目に値します。2023年の949トンという値は、過去の中でも低水準といえます。このような減少要因は、新型コロナウイルス感染症の影響や、自然災害による牧草地の荒廃、それに伴う農業労働力の不足が挙げられます。また、輸出の停滞や国際価格の変動も関与している可能性があります。
今後の課題として、ヤギ肉生産の持続可能性をどのように確保するかが挙げられます。まず、多様な市場需要に対応するためには国内外のマーケティング体制を強化し、新しい取引先を開拓することが必要です。また、新型コロナウイルスやその他の疫病に対する防疫対策を強化するとともに、農業従事者の労働環境を向上させる努力が必要です。
さらに、地球温暖化の影響による気象条件の変化を考慮し、牧草の効率的な管理や耐性の強い品種の育成を進めることが求められます。同時に、国内消費の喚起策も並行して講じるべきです。料理方法の普及や観光と結びつけたプロモーション活動などは、ヤギ肉産業に新たな活力をもたらす可能性があります。
このデータが示す通り、ヤギ肉生産量は多方面の要因に依存しています。ニュージーランド政府は、長期的な視点での政策立案が必要です。これには、地域間協力の枠組みを強化し、気候変動リスクや貿易摩擦に対する早期対応策を練ることが含まれます。また、地元農家への補助金制度の充実も検討されるべきでしょう。このような取り組みによって、ニュージーランドのヤギ肉産業は再び安定した成長軌道に戻ることが期待されます。