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ニュージーランドのイチゴ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ニュージーランドのイチゴ生産量は1960年代以降、増減を繰り返しながら、2010年代以降大幅な減少傾向を見せています。1961年の700トンから開始し、1990年代には一時的に6,700トン(1999年)まで増加しましたが、2022年には2,453トンへと顕著な減少を示しました。この長期的なデータは、気候変動、農業政策、資源配分、労働環境の変化などの複数要因による影響が反映されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,239
-8.73% ↓
2022年 2,453
-16.82% ↓
2021年 2,949
-4.08% ↓
2020年 3,075
-19.57% ↓
2019年 3,823
-1.03% ↓
2018年 3,863
0.89% ↑
2017年 3,829
-18.23% ↓
2016年 4,682
-14.33% ↓
2015年 5,466
-12.79% ↓
2014年 6,267
6.87% ↑
2013年 5,864
8.58% ↑
2012年 5,401
-2.51% ↓
2011年 5,540
-1.94% ↓
2010年 5,650
-4.24% ↓
2009年 5,900
11.32% ↑
2008年 5,300
6% ↑
2007年 5,000
21.6% ↑
2006年 4,112
-16.08% ↓
2005年 4,900
0.78% ↑
2004年 4,862
-13.18% ↓
2003年 5,600
-15.02% ↓
2002年 6,590
1.38% ↑
2001年 6,500 -
2000年 6,500
-2.99% ↓
1999年 6,700
1.52% ↑
1998年 6,600
10% ↑
1997年 6,000
9.09% ↑
1996年 5,500
10% ↑
1995年 5,000
25% ↑
1994年 4,000
9.59% ↑
1993年 3,650
4.29% ↑
1992年 3,500
-12.5% ↓
1991年 4,000 -
1990年 4,000 -
1989年 4,000
20.48% ↑
1988年 3,320
-22.79% ↓
1987年 4,300
-10.42% ↓
1986年 4,800
4.35% ↑
1985年 4,600
4.55% ↑
1984年 4,400
-3.3% ↓
1983年 4,550
4.55% ↑
1982年 4,352
4.64% ↑
1981年 4,159
-21.41% ↓
1980年 5,292
9.93% ↑
1979年 4,814
8.42% ↑
1978年 4,440
24.93% ↑
1977年 3,554
19.1% ↑
1976年 2,984
-4.39% ↓
1975年 3,121
-7.36% ↓
1974年 3,369
-0.85% ↓
1973年 3,398
-11.12% ↓
1972年 3,823
-6.78% ↓
1971年 4,101
-10.46% ↓
1970年 4,580
13.53% ↑
1969年 4,034
11.65% ↑
1968年 3,613
7.53% ↑
1967年 3,360
10.6% ↑
1966年 3,038
1.27% ↑
1965年 3,000
5.63% ↑
1964年 2,840
64.16% ↑
1963年 1,730
41.69% ↑
1962年 1,221
74.43% ↑
1961年 700 -

ニュージーランドのイチゴ生産量は、1961年の700トンから約40年間で一貫して増加を続け、1990年代後半にはピークの6,700トンに達しました。この成長期は、主に農業技術の改善、農地の拡張、国内需要の増加が後押しした結果と考えられます。しかし、2000年以降になるとその勢いは失速し、特に2010年以降、生産量は持続的に減少しています。直近の2022年の生産量は2,453トンで、1999年のピークから大幅に縮小しました。

この減少の背景には、いくつかの重要な要因があります。まず、ニュージーランドの農業は気候変動の影響を強く受けています。極端な天候や気温の上昇により、イチゴ栽培に適した条件が維持しづらくなり、土壌環境も劣化しています。特にここ数年の干ばつや豪雨の増加は、収穫量の不安定性を高めています。

また、農業従事者の労働環境にも変化が生じています。農業セクターにおける移民労働力の依存度が高いニュージーランドですが、移民政策の変更や新型コロナウイルス感染症の影響で国際的な人材の確保が難しくなったことが、労働力不足を深刻化させました。これにより、収穫時期に必要な労働力が不足し、生産効率が低下する原因となっています。

さらに、イチゴ生産の収益性にも問題があります。市場競争の激化や輸入品の影響が国内価格の引き下げにつながり、結果として生産コストを回収しづらい状況が続いています。このような状況では、多くの農家がイチゴ栽培を縮小するか、あるいは他の作物に切り替える動きも加速しています。

地政学的リスクも無視できません。例えば、ニュージーランドの主要貿易相手国である中国やアメリカとの関係が複雑化する中、国際的な需要の変動が輸出市場に影響を与えています。このため、国内市場と海外市場の両方で安定した販売ルートを確保する必要性が高まっています。

未来への具体的示唆として、まず第一に、気候変動に対応した農業技術の導入が求められます。これは耐候性の高い品種への転換や水資源管理システムの改善を含みます。また、労働力不足への対策として、国内労働力の確保を促進する政策を進めると同時に、国際的な労働者受け入れ制度の再構築が重要です。

さらに、持続可能な生産を支援するために、イチゴ生産者への補助金や技術支援を強化するべきです。具体的には、デジタル技術を活用した効率的な管理システムの導入や、環境負荷を軽減する栽培方法を推進することが考えられます。加えて、国際市場での競争力を高めるために、高付加価値商品(オーガニックやブランド化されたイチゴなど)の開発が必要です。

最終的に、ニュージーランドのイチゴ産業には、国内外の需要にうまく適応する柔軟な戦略が求められます。こうした取り組みを通じて、減少している生産量に歯止めをかけ、持続可能な成長軌道への転換を図ることができます。国際連合食糧農業機関のデータが明確に示すこの傾向への対応は、現地の農家だけでなく、政府や関連機関、さらには消費者の協力によって初めて実現することができるでしょう。