国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータから、ニュージーランドの豚飼育数の推移を見ると、1961年には約65万5千頭であった豚飼育数が1964年に最高値の約77万頭に達しましたが、それ以降は減少傾向が目立ち、特に2000年代以降、20万~30万頭という範囲で推移しています。近年では2020年の約23万4千頭が最低値となり、その後微増しつつも2022年時点では約27万5千頭であることが確認されています。
ニュージーランドの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 275,291 |
2021年 | 248,717 |
2020年 | 234,533 |
2019年 | 255,934 |
2018年 | 287,051 |
2017年 | 273,860 |
2016年 | 254,607 |
2015年 | 268,300 |
2014年 | 286,971 |
2013年 | 297,724 |
2012年 | 313,703 |
2011年 | 326,788 |
2010年 | 335,114 |
2009年 | 322,788 |
2008年 | 324,594 |
2007年 | 366,671 |
2006年 | 355,501 |
2005年 | 341,465 |
2004年 | 388,640 |
2003年 | 377,249 |
2002年 | 342,015 |
2001年 | 354,489 |
2000年 | 368,754 |
1999年 | 368,887 |
1998年 | 350,730 |
1997年 | 406,924 |
1996年 | 424,000 |
1995年 | 431,000 |
1994年 | 422,766 |
1993年 | 395,117 |
1992年 | 411,148 |
1991年 | 407,306 |
1990年 | 394,700 |
1989年 | 411,334 |
1988年 | 413,558 |
1987年 | 425,542 |
1986年 | 435,012 |
1985年 | 454,462 |
1984年 | 436,396 |
1983年 | 408,403 |
1982年 | 405,771 |
1981年 | 420,259 |
1980年 | 434,084 |
1979年 | 443,452 |
1978年 | 471,229 |
1977年 | 484,961 |
1976年 | 432,844 |
1975年 | 422,391 |
1974年 | 461,726 |
1973年 | 475,842 |
1972年 | 476,989 |
1971年 | 552,279 |
1970年 | 577,925 |
1969年 | 553,388 |
1968年 | 614,177 |
1967年 | 602,695 |
1966年 | 666,905 |
1965年 | 716,008 |
1964年 | 771,450 |
1963年 | 766,025 |
1962年 | 685,541 |
1961年 | 655,432 |
ニュージーランドにおける豚の飼育数は、過去数十年間で大きな変化を遂げてきました。1960年代初頭には豚の飼育数が顕著に増加し、1964年には約77万頭という頂点に達しましたが、それ以降は減少傾向が続きました。この減少の背景として、農業の多様化や経済構造の変化、特に乳製品や肉牛など他の畜産業へのシフトがあげられます。これはニュージーランドが乳製品輸出大国であるという地政学的背景とリンクしています。
1980年代から2000年代にかけては、数値の変動が多少緩やかになり、一部の年には増減が見られるものの飼育規模は全体的に縮小している傾向が顕著です。これには、農業生産における産業構造の変化に加え、国際市場の競争激化が影響していると考えられます。特に中国やアメリカなど、豚肉の主要輸出国が強力な競争者として市場に存在する中、ニュージーランドの小規模畜産業は適応を強いられました。
近年の状況を見ると、2018年の約28万7千頭から2020年の約23万4千頭へと一時的に大きく減少し、その後2022年には約27万5千頭と回復傾向が見られます。この変化には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がもたらした供給チェーンの混乱や、その後の食料需要の変化が影響している可能性が高いと考えられます。また、自然災害の影響や高コストな飼料の輸入に依存する構造的な弱点も要因として見逃せません。ニュージーランドはその地理的位置から飼料輸入コストが高く、国内養豚業の維持が挑戦的な状態となる場面もあるものと推測されます。
豚飼育数の減少は、ニュージーランド国内の食肉供給や産業雇用にも影響を及ぼす一方で、地政学的に重要な持続可能性問題への取り組みも暗黙の課題となっています。集約的な産業による環境負荷削減や、動物福祉の向上を目指す国際的なムーブメントにニュージーランドがどう適応するかが鍵となるでしょう。
今後の課題としては、まず国内養豚業の生産性向上が挙げられます。たとえば、デジタル技術を用いた効率的な飼育管理や、環境に配慮した餌供給システムの設計が効果的です。また、急速に変化する市場需給に対応できるよう、国内外での市場拡大策やブランド戦略の明確化も重要です。さらに、飼料輸入への依存を減らすために、国内での代替飼料生産を振興し、関連農業との統合施策を進めることが求められます。
最終的に、持続可能な農業に向けた国際協力が不可欠です。ニュージーランドは他国と協働し、畜産における先進的な技術開発を共有するとともに、養豚業のグローバル市場での地位向上を目指すべきです。また、気候変動や地域紛争などによる地政学的リスクが養豚業の安定性に影響し得るため、こういったリスクに対する予防的な政策策定も必要です。
ニュージーランドの豚飼育数の推移は、単なる農業統計以上の示唆を持っています。それは、地球規模の課題である食糧安全保障や持続可能な生産体制への道筋をどう形作るかを問いかけるものと言えるでしょう。この点で、政府、企業、研究機関が連携し、さまざまな革新を支援することがニュージーランドのみならず世界全体の発展につながると考えられます。