Skip to main content

アルメニアの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、アルメニアの牛の飼養数は1992年の566,452頭から始まり、2000年代中盤には増加傾向が見られました。しかし、2017年以降は再び減少し、2022年の飼養数は559,627頭となり、過去30年間で波動の多い推移を示しています。特に2022年の数字は、2016年のピークである701,535頭から約20%減少しています。

年度 飼養数(頭)
2022年 559,627
2021年 613,413
2020年 579,256
2019年 571,861
2018年 590,585
2017年 655,771
2016年 701,535
2015年 688,553
2014年 677,584
2013年 661,003
2012年 599,243
2011年 571,357
2010年 570,633
2009年 584,779
2008年 629,146
2007年 620,197
2006年 592,067
2005年 573,260
2004年 565,844
2003年 535,784
2002年 514,244
2001年 497,306
2000年 478,730
1999年 469,077
1998年 465,751
1997年 509,559
1996年 507,512
1995年 503,693
1994年 501,635
1993年 498,863
1992年 566,452

アルメニアの牛飼養数の推移を観察すると、1990年代には約50万頭台後半で安定していたものの、1998年には465,751頭に急落しました。この減少は、1991年のソビエト連邦崩壊後の経済的混乱が直接的原因であると考えられます。ソ連崩壊後、アルメニアは主要な食糧供給網を失い、農業政策の移行期間において飼養環境が不安定化しました。その後、2000年代初頭から2008年にかけては経済の立て直しに伴い安定した増加が見られ、629,146頭まで回復しました。しかし、2009年以降には再び減少が見られ、この傾向は世界的な金融危機や地域的な経済運営の影響が影響した可能性があります。

特に注目すべきは、2016年に701,535頭というピークを迎えた後の動向です。この後、飼養数は急激に下降し、2022年には559,627頭と、大幅な減少に至りました。この背景にはいくつかの要因が考えられます。一つは、アルメニアとアゼルバイジャン間のナゴルノ・カラバフ紛争に関連する地政学的リスクです。この地域紛争は農業インフラの破壊や農村地域の不安定化につながり、飼育環境に重大な影響を及ぼしている可能性があります。また、地球温暖化による農業生産効率の低下や、飼料価格の高騰も影響しているとみられます。

アルメニアの牛飼養数は、農業を基軸とする地方経済にとってだけでなく、国内の食糧自給率や乳製品生産においても重要な役割を果たしています。そのため、この減少傾向は、アルメニアの経済全体に広範な影響を及ぼす可能性があります。他国と比較してみると、中国やインドなど人口規模が大きい国では牛の飼養数が増加基調にありますが、これは国内外の需要に応えるための政策的な支援によるものです。アルメニアの場合、規模が小さいこともあり、同様の政策支援が欠けている可能性があります。

未来に向けて、アルメニアがこの減少傾向を克服するには、いくつかの具体的な施策が必要です。まず、地域産業振興に向けた持続可能な農業政策を実施し、牛飼養環境を安定化させる必要があります。例えば、飼料価格の補助金政策を進めることや、最新の飼育技術を農家に普及させることが重要です。また、輸出市場の開発に取り組むことも、内需拡大と同時に飼養意欲を高める手段となります。さらに、地政学的リスクを軽減するための地域間協力枠組みの強化や、災害時に備えた農業保険制度の導入も検討するべきです。

結論として、最新データが示すアルメニアの牛飼養数の減少は、地政学的リスク、気候変動、及び適切な政策支援の欠如が複合的に影響していると考えられます。持続可能な農業政策と地域経済の強化への取り組みを通じて、将来的な安定と成長を目指す必要があります。これは、アルメニア国内のみならず、国際的な食糧供給網の維持にも資する重要な要素です。