国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)が発表した最新データによると、アルメニアの羊肉生産量は過去30年間で変動を繰り返しつつ、近年安定した成長を見せています。1990年代には急激な減少が見られ、その後の2000年以降は増加傾向となり、特に2015年から2023年にかけてはおおむね10,000トンを超える水準で推移しています。2023年の生産量は10,900トンとなり、過去最高水準を維持しています。
アルメニアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 10,900 |
0.93% ↑
|
2022年 | 10,800 | - |
2021年 | 10,800 |
1.89% ↑
|
2020年 | 10,600 |
-0.93% ↓
|
2019年 | 10,700 |
-0.93% ↓
|
2018年 | 10,800 |
-1.82% ↓
|
2017年 | 11,000 |
6.8% ↑
|
2016年 | 10,300 |
5.1% ↑
|
2015年 | 9,800 |
8.48% ↑
|
2014年 | 9,034 |
1.12% ↑
|
2013年 | 8,934 |
5.94% ↑
|
2012年 | 8,433 |
1.2% ↑
|
2011年 | 8,333 |
2.46% ↑
|
2010年 | 8,133 |
-7.92% ↓
|
2009年 | 8,833 |
20.46% ↑
|
2008年 | 7,333 |
1.38% ↑
|
2007年 | 7,233 |
1.42% ↑
|
2006年 | 7,132 |
-5.31% ↓
|
2005年 | 7,532 |
5% ↑
|
2004年 | 7,173 |
16.79% ↑
|
2003年 | 6,142 |
5.32% ↑
|
2002年 | 5,832 |
-13.6% ↓
|
2001年 | 6,750 |
-15.95% ↓
|
2000年 | 8,031 |
81.25% ↑
|
1999年 | 4,431 |
-11.93% ↓
|
1998年 | 5,031 |
4.14% ↑
|
1997年 | 4,831 |
-11.05% ↓
|
1996年 | 5,431 |
-22.76% ↓
|
1995年 | 7,031 |
-4.17% ↓
|
1994年 | 7,337 |
-12.15% ↓
|
1993年 | 8,352 |
4.27% ↑
|
1992年 | 8,010 | - |
アルメニアの羊肉生産量は、国の経済や農業政策、地域情勢などさまざまな要因によって変化してきました。データによると、1990年代には羊肉の生産量が著しく低下しており、特に1997年には4,831トンまで減少しました。この低下は、1990年代初頭の旧ソ連崩壊による経済混乱や、ジョージアやアゼルバイジャンとの紛争による地政学的リスクの影響が大きいと考えられます。この時期は、輸送や市場アクセスが制限され、家畜農業全般が衰退した背景がありました。
一方で、2000年以降は回復基調が見られます。2000年には8,031トンにまで回復し、その後、政策的な支援や国内市場の需要の増加が追い風となり、生産量の拡大が進みました。特に2015年以降のデータでは、継続的な増加が確認されており、10,000トンを超える生産が安定的に維持されています。2023年には10,900トンと記録を伸ばし、持続可能な生産の実現に向けた基盤が整ったと評価できます。この成長は、農業の近代化や家畜衛生の改善に加え、輸出市場の強化や地元での消費拡大が寄与していると考えられます。
また、この推移を他国と比較すると、日本や韓国など、輸入を中心とする国々と異なり、アルメニアはあくまで自給自足を基本とした農業国としての側面を持っています。また、アルメニアの隣国であるトルコやジョージアといった地域に比べても、羊肉生産は人口や国土面積に見合った水準であり、特に山岳地域の広がる地形を活かした羊の放牧が主流です。
しかしながら、未来においていくつかの課題が見られることも認識する必要があります。一点目は、2020年のアゼルバイジャンとのナゴルノ・カラバフ紛争の影響です。地域情勢の不安定さが家畜の飼育環境や農業政策に対してリスクをもたらす可能性があります。この問題は今後の持続的な生産量拡大を阻む要因として注視すべきです。二点目は、気候変動の影響です。アルメニアのような山岳地域においては、干ばつや季節外れの降水量の変化が放牧や牧草地の管理に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
解決策として、政府および国際機関は次のような具体的な対策を講じることが求められます。一つは、家畜の飼育に最適なインフラの整備です。特に、干ばつに耐えうる牧草種や土地の改良プログラムを導入することが重要です。また、気候変動に対する国際的な協力を進めることで、将来的なリスクを低減することが期待されます。二つ目に、地域間の協力体制を強化することです。例えば、ジョージアやトルコなどの近隣諸国との連携による牧草地管理技術の共有や、輸出市場の拡大を通じて経済的利益を高めることが考えられます。
結論として、アルメニアの羊肉生産量の推移は、国の経済成長や農業政策の一環としての側面を反映し、特に近年は安定化の兆候が見られます。とはいえ、続く地政学的な緊張や気候変動の課題に直面しており、これらに対応した具体的な政策と国際協力が求められます。特に、サステナビリティを考慮した地域農業の強化が、アルメニア経済の持続的発展に寄与すると考えられます。