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アルメニアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、アルメニアのヤギ飼養頭数は1992年から2022年までの間に大きな変動を経験しました。1992年には22,950頭であった飼養頭数は、1999年から2003年の間に大幅に増加してピークの50,022頭を記録しました。その後は減少傾向に転じ、2022年には21,943頭と、過去30年で最低水準にまで落ち込んでいます。全体として、アルメニアのヤギ飼養動態は一貫した増加や安定した水準を保つというよりも、地政学的、経済的、環境的な要因に左右された変動的なパターンを示しています。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 20,561
-6.3% ↓
2022年 21,943
-9.94% ↓
2021年 24,365
6.24% ↑
2020年 22,934
1.69% ↑
2019年 22,552
2.13% ↑
2018年 22,081
-19.77% ↓
2017年 27,521
-10.45% ↓
2016年 30,731
-3.64% ↓
2015年 31,891
4.56% ↑
2014年 30,500
5.1% ↑
2013年 29,020
1.54% ↑
2012年 28,580
-1.08% ↓
2011年 28,891
-2.68% ↓
2010年 29,687
-8.88% ↓
2009年 32,580
-16.43% ↓
2008年 38,985
-9.17% ↓
2007年 42,922
0.51% ↑
2006年 42,704
-8.47% ↓
2005年 46,655
-3.4% ↓
2004年 48,297
-3.45% ↓
2003年 50,022
8.86% ↑
2002年 45,950
7.27% ↑
2001年 42,837
4.54% ↑
2000年 40,977
6.99% ↑
1999年 38,300
81.45% ↑
1998年 21,108
12.4% ↑
1997年 18,779
37.11% ↑
1996年 13,696
5.35% ↑
1995年 13,000
-18.53% ↓
1994年 15,957
-14.34% ↓
1993年 18,629
-18.83% ↓
1992年 22,950 -

アルメニアのヤギ飼養頭数の長期推移は、同国の農業経済や社会的な安定性、地政学的な情勢に深く関連しています。1990年代初頭のデータは、ソビエト連邦の崩壊直後の混乱期にあたります。この時期、農業活動の停滞や経済インフラの崩壊によって、アルメニア全体の畜産業は大きな影響を受けました。これに伴い、ヤギの飼養頭数は1992年の22,950頭から1995年には13,000頭まで急減しました。

しかし、その後1990年代後半から2003年にかけて大幅な回復が見られました。この増加は、アルメニア政府が農業復興を目指し、畜産業に注力した政策と、地元農村部がヤギ飼育を生活の糧として重視したことが影響していると考えられます。特に1999年から2003年にかけての急速な増加、最大時の50,022頭という数字は、ヤギの乳製品や肉製品が市場で注目され、商品価値が向上したことも背景にあるでしょう。

一方で、2004年以降、ヤギの飼養頭数は減少に転じています。この減少にはいくつかの要因が考えられますが、人口流出と都市化の影響が大きいと考えられます。アルメニアでは一定の農村人口が中東やロシア、ヨーロッパに移住することで農業労働力が失われ、伝統的な牧畜文化が衰退しました。また、2008年の世界金融危機による経済的な後退も、農業セクターへの投資低下や家畜飼養のコスト上昇を引き起こし、ヤギ飼養を困難にしたと推測されます。

さらに直近の2020年代では、新型コロナウイルス感染症の影響や、カフカス地方における地政学的緊張が畜産業にも影響を与えました。アルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ地域を巡る武力衝突は、飼育環境の破壊や供給チェーンの断絶をもたらし、生産活動の停滞に繋がったと考えられます。2022年の飼養頭数は21,943頭と、最低水準にまで減少しています。

今後、アルメニア政府や国際機関には、畜産業の復興と持続可能な発展を目指した具体的な政策が求められます。例えば、小規模農家を対象とした財政支援、効率的な飼育技術の導入、そして農村地域へのインフラ整備が重要です。また、地域間協力の促進による食品供給網の安定化や、紛争地域での持続可能な共同管理を進める取り組みも効果的でしょう。さらに、ヤギ乳製品の工業的なブランド化を促進して外部市場に進出する仕組みを確立することで、飼養頭数と経済収入の両面で向上が期待できます。

結論として、アルメニアにおけるヤギ飼養数動向は、農業政策、経済情勢、環境的要因、地域安全保障状況などの複数の要因が複雑に絡み合った結果を示しています。過去に見られた回復期のように、外的要因を乗り越えつつ安定した飼養体制を築くことが今後の課題です。地域間の協力強化と紛争の恒久的解決が、持続可能な畜産業運営の鍵となるでしょう。