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南アフリカのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関、FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、南アフリカのブドウ生産量は1961年の516,553トンから2023年には1,973,819トンとなり、全体として大幅な増加が見られます。ただし、年間ごとに大きな変動がみられる時期や、生産量が特に伸びた時期も確認されています。1970年代後半以降、1,000,000トンを上回る生産量が定着し、2000年以降にさらなる増加が進みましたが、近年はやや停滞または減少傾向を示す年もあり、環境的・経済的な課題が浮き彫りになってきたと言えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,973,819
-4.4% ↓
2022年 2,064,742
3.22% ↑
2021年 2,000,297
-0.4% ↓
2020年 2,008,242
6.6% ↑
2019年 1,883,869
-0.94% ↓
2018年 1,901,736
-6.44% ↓
2017年 2,032,582
3.37% ↑
2016年 1,966,291
-2.04% ↓
2015年 2,007,336
2.98% ↑
2014年 1,949,264
-1.55% ↓
2013年 1,979,872
7.52% ↑
2012年 1,841,385
9.58% ↑
2011年 1,680,436
-3.62% ↓
2010年 1,743,496
-0.29% ↓
2009年 1,748,590
-6.26% ↓
2008年 1,865,282
2.92% ↑
2007年 1,812,410
3.13% ↑
2006年 1,757,355
4.43% ↑
2005年 1,682,813
-4.49% ↓
2004年 1,761,922
5.91% ↑
2003年 1,663,530
9.32% ↑
2002年 1,521,703
14.62% ↑
2001年 1,327,635
-8.74% ↓
2000年 1,454,729
-6.49% ↓
1999年 1,555,659
16.66% ↑
1998年 1,333,481
-7.3% ↓
1997年 1,438,550
1.93% ↑
1996年 1,411,310
3.56% ↑
1995年 1,362,820
5.98% ↑
1994年 1,285,940
3.21% ↑
1993年 1,246,000
-11.45% ↓
1992年 1,407,160
6.78% ↑
1991年 1,317,770
-0.01% ↓
1990年 1,317,920
4.26% ↑
1989年 1,264,100
2.16% ↑
1988年 1,237,350
3.04% ↑
1987年 1,200,800
13.77% ↑
1986年 1,055,490
-8.11% ↓
1985年 1,148,690
-6.25% ↓
1984年 1,225,330
-1.56% ↓
1983年 1,244,790
5.84% ↑
1982年 1,176,090
14.04% ↑
1981年 1,031,340
-6.38% ↓
1980年 1,101,580
13.39% ↑
1979年 971,479
7.05% ↑
1978年 907,528
23.24% ↑
1977年 736,412
-17.29% ↓
1976年 890,369
1.85% ↑
1975年 874,159
18.27% ↑
1974年 739,099
-12.62% ↓
1973年 845,888
2.93% ↑
1972年 821,811
-1.61% ↓
1971年 835,287
22.34% ↑
1970年 682,783
-26% ↓
1969年 922,660
0.42% ↑
1968年 918,835
14.29% ↑
1967年 803,960
4.72% ↑
1966年 767,760
-4.89% ↓
1965年 807,212
30.04% ↑
1964年 620,763
-0.92% ↓
1963年 626,547
15.2% ↑
1962年 543,864
5.29% ↑
1961年 516,553 -

南アフリカのブドウ生産量推移を見ると、最も顕著な特徴は生産量の全体的な増加です。1961年には約51万トンに過ぎなかったブドウの生産量は、2023年には約197万トンとなり、60年余りでおよそ3.8倍に増加しました。これは、農業技術の向上、灌漑システムの整備、市場の拡大などが主要な要因として挙げられます。1980年代から1990年代にかけての急激な生産増加は、南アフリカ経済の自由化や世界市場の需要増加が背景にあります。

しかしながら、この増加の中で、生産量の変動幅が大きい年も確認されています。たとえば、1970年には682,783トンと前後の年と比べて急落していますが、これは天候不順や水不足が原因と考えられます。また、2018年や2019年にも比較的大きな減少が見られ、この時期は新型コロナウイルスや干ばつ、資源不足の影響が相まって生産活動が制約を受けた可能性があります。このように、外的要因が生産量に直接的な影響を与える性質が、南アフリカのブドウ農業の特徴の1つです。

一方で、2000年以降の生産量はほとんどの年で1,500,000トンを超えており、特に2015年以降は2,000,000トンを超える年が増加しています。これにより南アフリカは国際市場においてもブドウの重要な生産国としての地位を確立しています。ただし、近年のデータを見ると気になる点も増えています。2022年には、2,064,742トンという近年の最高値を記録しましたが、2023年には1,973,819トンと若干の減少が見られます。この減少は、新型コロナウイルスの社会的影響や現地の気候変動による水資源の不足、さらには国内のエネルギー危機など、複合的な要因によるものと推測されます。

未来に向けた課題としては、まず第一に、南アフリカにおける気候変動の影響を緩和する農業手法の導入が挙げられます。特に水不足のリスクを軽減するために、高効率な灌漑技術や耐乾燥性の強い品種の普及が重要です。また、生産の増加ペースが鈍化していることを受けて、農業従事者の技術力向上や、国内外の新たな市場を開拓する取り組みも必要です。

さらに、地政学的課題として、南アフリカがアフリカ南部全域の農業センターの役割を果たす中で、地域の安定性が生産活動に影響を及ぼしています。地域内の紛争や経済格差の拡大が、輸送インフラや労働力の確保に与える影響も無視できません。このため、地域間協力の枠組み作りや貿易ルートの多様化が提案されます。南アフリカが率先して他国と協力し、共同で農業政策を策定することが、安定した農業成長の柱となるでしょう。

政策提言としては、農業の生産性向上に加え、気候変動を見越した長期的な戦略の導入を挙げられます。例えば、持続可能な資源利用を促進するための政府補助金や技術提供が考えられます。また、労働力確保の観点からも、農村地域への支援を強化することが大切です。さらに、国際的な組織や先進国と連携して輸出市場を多元化し、国際的な需要変動に柔軟に対応できる体制作りが求められます。

全体的には、南アフリカのブドウ生産は伸び続けており、それが地域経済と国際市場に与える意義は大きいです。しかし、生産の変動や環境的な課題を踏まえると、持続可能な農業発展に向けた体制づくりが急務です。国際連携を強化しつつ、地域特有の問題を克服していくことが鍵となるでしょう。このような取り組みによって、南アフリカが今後も世界のブドウ市場で中心的な役割を果たすことが期待されます。