国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新の最新データによると、南アフリカの落花生生産量は1961年以降多様な変動を経験してきました。1960年代には30万トンを超える水準が一般的だった一方、2022年と2023年の生産量はいずれも5万トンを下回る規模となっています。また、過去数十年にわたり、長期的には減少傾向を示し、特に1980年代以降急激な落ち込みが観察されます。しかしながら、一部の年では大幅な増加も見られており、不規則な変動も特徴的です。このような落花生生産の動態は気候条件や経済状況の変動、政策の変化や農業インフラの影響を強く受けていることが示唆されます。
南アフリカの落花生生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 53,000 |
9.28% ↑
|
2022年 | 48,500 |
-24.57% ↓
|
2021年 | 64,300 |
28.39% ↑
|
2020年 | 50,080 |
158.14% ↑
|
2019年 | 19,400 |
-65.96% ↓
|
2018年 | 57,000 |
-38.08% ↓
|
2017年 | 92,050 |
420.64% ↑
|
2016年 | 17,680 |
-71.62% ↓
|
2015年 | 62,300 |
-16.38% ↓
|
2014年 | 74,500 |
79.52% ↑
|
2013年 | 41,500 |
-29.66% ↓
|
2012年 | 59,000 |
-8.17% ↓
|
2011年 | 64,250 |
-26.99% ↓
|
2010年 | 88,000 |
-11.56% ↓
|
2009年 | 99,500 |
12.05% ↑
|
2008年 | 88,800 |
53.1% ↑
|
2007年 | 58,000 |
-21.62% ↓
|
2006年 | 74,000 |
15.63% ↑
|
2005年 | 64,000 |
-44.35% ↓
|
2004年 | 115,000 |
71.81% ↑
|
2003年 | 66,934 |
-49.95% ↓
|
2002年 | 133,730 |
-39.85% ↓
|
2001年 | 222,319 |
63.32% ↑
|
2000年 | 136,128 |
-16.62% ↓
|
1999年 | 163,260 |
50.55% ↑
|
1998年 | 108,442 |
-31.31% ↓
|
1997年 | 157,876 |
-26.86% ↓
|
1996年 | 215,857 |
84.04% ↑
|
1995年 | 117,288 |
-32.82% ↓
|
1994年 | 174,600 |
15.86% ↑
|
1993年 | 150,700 |
13.48% ↑
|
1992年 | 132,800 |
1.14% ↑
|
1991年 | 131,300 |
1.08% ↑
|
1990年 | 129,900 |
-30.94% ↓
|
1989年 | 188,100 |
-27.99% ↓
|
1988年 | 261,200 |
90.24% ↑
|
1987年 | 137,300 |
10.82% ↑
|
1986年 | 123,900 |
-40.29% ↓
|
1985年 | 207,500 |
167.4% ↑
|
1984年 | 77,600 |
-17.45% ↓
|
1983年 | 94,000 |
-25.04% ↓
|
1982年 | 125,400 |
-62.32% ↓
|
1981年 | 332,800 |
-11.86% ↓
|
1980年 | 377,600 |
86.01% ↑
|
1979年 | 203,000 |
-36.74% ↓
|
1978年 | 320,900 |
31.09% ↑
|
1977年 | 244,800 |
62.44% ↑
|
1976年 | 150,700 |
-42.63% ↓
|
1975年 | 262,700 |
-54.16% ↓
|
1974年 | 573,100 |
184.42% ↑
|
1973年 | 201,500 |
-52.13% ↓
|
1972年 | 420,900 |
5.23% ↑
|
1971年 | 400,000 |
22.93% ↑
|
1970年 | 325,400 |
-11.02% ↓
|
1969年 | 365,700 |
51.24% ↑
|
1968年 | 241,800 |
-45.45% ↓
|
1967年 | 443,300 |
107.73% ↑
|
1966年 | 213,400 |
3.59% ↑
|
1965年 | 206,000 |
-5.46% ↓
|
1964年 | 217,900 |
-20.65% ↓
|
1963年 | 274,600 |
43.77% ↑
|
1962年 | 191,000 |
-28.92% ↓
|
1961年 | 268,700 | - |
1961年時点では、南アフリカの落花生生産量は26万8,700トンと安定したスタートを見せ、その後1960年代には増減を繰り返しながら30万トンを超える年も多く見られました。しかし、1970年代以降になるとこの安定性が崩れ始め、生産量は激しく揺れ動く状況となりました。例えば1974年には57万3,100トンに達しましたが、そのわずか2年後の1976年には15万700トンまで急落しています。こうした大きな変動は、干ばつや降雨量の不足といった気候要因だけでなく、輸出需要や農業政策の変更が影響したと考えられています。
1980年代から2000年代にかけては、生産量が徐々に減少していく長期的な傾向も顕著です。この間、南アフリカでは都市化の進展や作物の市場価値の変化が進み、落花生の栽培面積が縮小しました。特筆すべき点として、2003年と2005年にはそれぞれ6万6,934トンと6万4,000トンにまで減少し、その後も大きな回復は見られませんでした。更には、2016年の1万7,680トンと2019年の1万9,400トンという数値は、1961年からの統計の中で最低水準となっており、落花生の生産量が危機的状態にあることを示唆しています。
生産量の変動要因としては、地政学的リスクや農業インフラの不足が挙げられます。特に干ばつや極端な天候が頻発する南部アフリカ地域では、水資源の確保が困難で、雨水に依存する形態の農業は非常に脆弱です。また、国内の農業資本の限界や、国際市場における競争力の低下も重要な問題です。さらには、収穫後のインフラや流通網の整備不良により、収穫された落花生が市場に届く前に品質が劣化してしまう例も報告されています。このように、複合的な要因が南アフリカの落花生生産の低迷に寄与しています。
政策提言としては、まず灌漑施設の強化を進め、水不足への耐性を高めることが急務です。次に、近隣諸国との農業協力を進め、地域全体での水資源や技術の共有を推進することも効果的です。例えば、南部アフリカ開発共同体(SADC)の枠組みを利用し、地域規模で落花生栽培を支援する政策を提案することで、広域的な農業安定が図れるかもしれません。また、農業技術の普及や土壌改良の推進、耐乾性品種の導入を含む品種改良分野への投資も重要です。
さらに、国際的な視点で見ると、同様に落花生を重要産品とするインドやアメリカといった主要国との技術交流を行い、情報共有を深めることも長期的な安定に資するでしょう。特にインドは、乾燥地域でも落花生の生産が進んでいる例として注目に値します。
結論として、南アフリカの落花生生産量が抱える課題は、国際協力や資源管理の枠組みの中で統合的に解決を図るべき問題といえます。落花生は食品産業のみならず、油脂産業にとっても重要な原材料であるため、その安定供給は南アフリカ国内の経済だけではなく、世界への影響も大きいです。農業生産基盤の復興と近代化が実現すれば、未来の南アフリカ農業は再び競争力を取り戻し、生産量の再活性化に繋がる可能性があります。