FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2023年までの最新データを見ると、南アフリカのさくらんぼ生産量は1961年から2023年までの間で大きな変動を見せています。特に、2020年以降で生産量の大幅な増加が確認され、2023年には1,797トンと過去最高に近い水準に達しました。一方、1960年代から1980年代の生産量は500トン未満の年が多く、特に1979年には138トンと極めて低い数値を記録しました。
南アフリカのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,797 |
4.11% ↑
|
2022年 | 1,726 |
52.47% ↑
|
2021年 | 1,132 |
35.41% ↑
|
2020年 | 836 |
59.54% ↑
|
2019年 | 524 |
27.8% ↑
|
2018年 | 410 |
67.35% ↑
|
2017年 | 245 |
-42.35% ↓
|
2016年 | 425 |
-12.37% ↓
|
2015年 | 485 |
62.21% ↑
|
2014年 | 299 |
-15.3% ↓
|
2013年 | 353 |
16.89% ↑
|
2012年 | 302 |
-11.44% ↓
|
2011年 | 341 |
17.59% ↑
|
2010年 | 290 |
-37.77% ↓
|
2009年 | 466 |
71.32% ↑
|
2008年 | 272 |
32.04% ↑
|
2007年 | 206 |
16.38% ↑
|
2006年 | 177 |
-54.03% ↓
|
2005年 | 385 |
-28.44% ↓
|
2004年 | 538 |
88.11% ↑
|
2003年 | 286 |
-69.31% ↓
|
2002年 | 932 |
-1.48% ↓
|
2001年 | 946 |
-26.04% ↓
|
2000年 | 1,279 |
19.98% ↑
|
1999年 | 1,066 |
14.5% ↑
|
1998年 | 931 |
-2.21% ↓
|
1997年 | 952 |
208.09% ↑
|
1996年 | 309 |
-34.81% ↓
|
1995年 | 474 |
44.51% ↑
|
1994年 | 328 |
-68.88% ↓
|
1993年 | 1,054 |
356.28% ↑
|
1992年 | 231 |
-87.33% ↓
|
1991年 | 1,823 |
601.15% ↑
|
1990年 | 260 |
-67.01% ↓
|
1989年 | 788 |
-56.49% ↓
|
1988年 | 1,811 |
544.48% ↑
|
1987年 | 281 |
8.91% ↑
|
1986年 | 258 |
-51.78% ↓
|
1985年 | 535 |
80.13% ↑
|
1984年 | 297 |
-63.33% ↓
|
1983年 | 810 |
40.38% ↑
|
1982年 | 577 |
31.44% ↑
|
1981年 | 439 |
-34.96% ↓
|
1980年 | 675 |
389.13% ↑
|
1979年 | 138 |
-52.08% ↓
|
1978年 | 288 |
9.51% ↑
|
1977年 | 263 |
-35.54% ↓
|
1976年 | 408 |
-13.74% ↓
|
1975年 | 473 |
14.53% ↑
|
1974年 | 413 |
-35.77% ↓
|
1973年 | 643 |
-2.72% ↓
|
1972年 | 661 |
57.38% ↑
|
1971年 | 420 |
-25.93% ↓
|
1970年 | 567 |
-25.79% ↓
|
1969年 | 764 |
134.36% ↑
|
1968年 | 326 |
-40.83% ↓
|
1967年 | 551 |
37.41% ↑
|
1966年 | 401 |
-43.2% ↓
|
1965年 | 706 |
41.2% ↑
|
1964年 | 500 |
67.22% ↑
|
1963年 | 299 |
-12.57% ↓
|
1962年 | 342 |
-23.32% ↓
|
1961年 | 446 | - |
南アフリカにおけるさくらんぼの生産は、自然環境や農業技術、さらには市場需要の影響を受けて継続的に変動してきました。1961年から1980年代は300トンから500トンの間を推移し、安定性に欠けた時期といえます。この期間は、その土地の気候変動や未熟な農業技術、灌漑設備の不足などが要因として考えられます。特に1979年の138トンという極端に低い数値は何らかの疫病や異常気象が影響した可能性が考えられます。一方、1988年には1,811トンと急激に上昇し、これ以降、生産量のピークが時々見られるようになります。これはおそらく、農業政策の改善やさくらんぼにおける新しい種苗の導入、輸出市場の需要増加などの要因によるものです。
2020年以降、特筆すべきは生産量の増加が加速した点です。2020年には836トン、2021年は1,132トン、そして2023年には過去最高水準の1,797トンに達しています。この動きには、改良された栽培方法の導入や気候変動に対する適応策、さらには世界市場での需要増加が関係していると考えられます。また、近年はさくらんぼが観光農園や高価格の輸出用果物として認識され、政府や農業団体が積極的に支援するようになってきたことも背景にあるでしょう。
とはいえ、この分野には依然としていくつかの課題が存在します。まず、さくらんぼは気温や水分量に非常に敏感な作物であるため、異常気象の影響を受けやすいことが懸念されています。南アフリカは広い地域で水不足が問題となっており、気候変動がさらに進むと、この影響がより深刻化する可能性があります。また、農村地域における労働力の不足や農地の拡大が制限されている点も持続的な拡大の阻害要因として挙げられます。
こうした問題を解決するために、南アフリカ政府や農業関係者にはいくつかの具体的な施策が求められます。一つには、灌漑設備の整備や節水型農業技術の普及が考えられます。このような技術は干ばつ対策にも役立ち、安定した生産量を確保するために欠かせません。また、気候適応型のさくらんぼの新品種開発を進めることも重要です。そして、農村部の労働力確保のためには、地域住民への教育やインセンティブ提供を行い、農業が魅力的な産業であると認識されるような取り組みが必要でしょう。
さらに、地政学的な観点では、南アフリカのさくらんぼ産業が海外市場への依存度を高めていることがリスクとして挙げられます。特に新型コロナウイルスの影響や国際的な紛争などでサプライチェーンが混乱した場合、輸出が困難になる可能性があります。そのため、内需の拡大を図るために、国内消費者向けキャンペーンや輸送インフラの改善に力を入れる必要があります。
増加傾向にあるさくらんぼの生産量は南アフリカ農業の発展を示し、地域経済に大きな利益をもたらすものです。しかし、長期的な安定と持続的な成長を実現するためには、自然環境や経済環境の変化に柔軟に対応する必要があります。このような取り組みを通じて、環境負荷を最小限に抑えつつ、さらなる生産性向上と農村地域の発展が期待されます。国際機関と連携しながら、持続可能な農業のモデルケースとして名を挙げられるよう、戦略的な発展が求められています。