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南アフリカのトマト生産量推移(1961-2022)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、南アフリカにおけるトマトの生産量は1961年の185,000トンから2022年の464,563トンまで推移し、全体として増加傾向にあります。しかし、1970年代から1980年代にかけて急速に成長した後、1990年代以降は波がありつつもやや停滞気味でした。2016年には629,974トンでピークを記録しましたが、その後減少傾向となり、2022年には大幅に下落しました。近年の生産量減少は気候変動や経済的な要因、また災害の影響が関連している可能性があります。

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年度 生産量(トン)
2022年 464,563
2021年 530,843
2020年 599,306
2019年 584,452
2018年 537,257
2017年 672,176
2016年 629,974
2015年 558,018
2014年 513,376
2013年 545,842
2012年 564,740
2011年 511,526
2010年 554,108
2009年 533,165
2008年 540,470
2007年 491,220
2006年 504,840
2005年 512,119
2004年 483,095
2003年 436,411
2002年 450,396
2001年 444,822
2000年 392,914
1999年 430,847
1998年 421,175
1997年 444,838
1996年 451,622
1995年 435,360
1994年 385,859
1993年 416,202
1992年 420,499
1991年 462,498
1990年 407,904
1989年 490,456
1988年 390,166
1987年 434,307
1986年 399,000
1985年 411,000
1984年 365,000
1983年 362,000
1982年 397,000
1981年 384,000
1980年 310,000
1979年 276,000
1978年 293,000
1977年 270,000
1976年 335,000
1975年 330,000
1974年 264,000
1973年 240,000
1972年 272,000
1971年 214,000
1970年 221,000
1969年 239,000
1968年 204,000
1967年 241,000
1966年 195,000
1965年 217,000
1964年 210,000
1963年 156,000
1962年 154,000
1961年 185,000

南アフリカのトマト生産量のデータを1961年から2022年まで分析すると、60年以上の期間をかけて生産量が増加していることが確認されます。この期間中、特に1970年代後半から1980年代にかけて生産量は顕著な増加を見せ、1989年には初めて490,456トンを記録しました。その後も増加傾向が続き、2016年には629,974トンという歴史的なピークに達しました。しかし、これ以降の数年間では生産量が不安定な変動を見せ、2022年には464,563トンにまで落ち込みました。

トマトは南アフリカ国内の農業生産において重要な役割を果たしており、国内市場や加工食品産業の原材料として広く利用されています。同時に、輸出作物としての価値も有しており、特にヨーロッパや隣国への輸出が重要な部分を占めています。一方で生産の変動には外的な要因が大きく関係しています。気候変動による作況の悪化、干ばつや洪水などの自然災害の発生、さらに新型コロナウイルスの流行がもたらした物流の混乱や経済的な打撃が近年の生産量減少に影響を与えた可能性が高いです。

過去の長期的なデータを見ると、生産量の上昇は1970年代後半以降、農業技術の進歩、灌漑技術の普及、政府支援政策の導入などが後押しした結果であると考えられます。とりわけ、気候的に適した地域での栽培拡大が効果的でした。しかし、近年では気候変動に起因する異常気象が農作物に悪影響を及ぼしており、2021年から2022年にかけての減少はその一例です。加えて、化学肥料や農薬の価格高騰、電力供給の不安定さも農業部門におけるコスト増をもたらし、農民経営に負担を与えています。

さらに地政学的な背景も、生産量の推移に間接的な影響を及ぼしています。例えば、南アフリカは隣国からの移住労働者に大きく依存していますが、これらの労働者をめぐる政策変更や地域対立が労働供給の不安定化を招くことが懸念されています。また、ヨーロッパ連合諸国をはじめとする諸外国との貿易協定の変更が、輸出市場への圧力を強めるリスクを含んでいます。

こうした状況を踏まえると、南アフリカのトマト生産における今後の課題は、気候レジリエンス(気候への適応力)の強化、インフラや技術支援のさらなる充実、国際的な貿易枠組みの安定化といえるでしょう。具体的な対策として、気候変動に対応する灌漑システムの改良や、水不足リスクを軽減するための地域間協力が挙げられます。また、自然災害や疫病の発生に備えるため、保険制度の充実や早期警戒のためのデジタル技術の導入が重要です。

さらに、国際的な課題解決にも取り組むべきです。アフリカ南部全体での農業生産の安定を目指し、SADC(南部アフリカ開発共同体)などの地域組織との連携が不可欠です。国際協力を通じて、輸出拡大を商機に転じるための戦略を構築することが未来の成長につながると考えられます。

結論として、南アフリカのトマト生産量は過去には増加基調にありましたが、近年の減少は気候変動や経済的課題、地政学的要因による影響が複合的に絡んでいます。今後の政策として、国内農業の持続可能性を高めるための長期的な技術支援や資源管理政策が求められるだけでなく、地域や国際社会との協力を強化することが鍵となるでしょう。