FAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、南アフリカにおける羊の飼養数は1961年の37,897,008匹から徐々に増減を見せ、1966年に40,306,896匹でピークを迎えました。その後、長期的な減少傾向が続き、2022年には21,432,364匹まで下落しました。このような大幅な減少は気候変動、土地利用の変化、経済状況の影響など、複数の要因が絡み合った結果と考えられます。
南アフリカの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 21,432,364 |
2021年 | 21,464,621 |
2020年 | 21,604,708 |
2019年 | 22,085,207 |
2018年 | 22,500,072 |
2017年 | 22,688,930 |
2016年 | 23,287,247 |
2015年 | 23,937,984 |
2014年 | 24,122,558 |
2013年 | 24,527,671 |
2012年 | 24,391,112 |
2011年 | 24,302,776 |
2010年 | 24,501,044 |
2009年 | 24,989,032 |
2008年 | 25,093,896 |
2007年 | 25,082,100 |
2006年 | 24,982,996 |
2005年 | 25,334,000 |
2004年 | 25,360,000 |
2003年 | 25,820,000 |
2002年 | 26,000,000 |
2001年 | 28,800,000 |
2000年 | 28,550,716 |
1999年 | 28,680,272 |
1998年 | 29,344,956 |
1997年 | 29,186,534 |
1996年 | 28,933,524 |
1995年 | 28,784,326 |
1994年 | 29,133,700 |
1993年 | 28,929,900 |
1992年 | 30,955,200 |
1991年 | 32,580,000 |
1990年 | 32,665,008 |
1989年 | 30,935,008 |
1988年 | 29,640,000 |
1987年 | 29,753,008 |
1986年 | 29,481,008 |
1985年 | 30,256,000 |
1984年 | 31,265,008 |
1983年 | 33,202,000 |
1982年 | 34,195,008 |
1981年 | 31,650,000 |
1980年 | 31,641,008 |
1979年 | 31,585,216 |
1978年 | 32,001,504 |
1977年 | 31,961,280 |
1976年 | 31,001,008 |
1975年 | 30,988,800 |
1974年 | 30,295,968 |
1973年 | 30,742,000 |
1972年 | 30,237,008 |
1971年 | 33,122,912 |
1970年 | 34,286,000 |
1969年 | 39,346,992 |
1968年 | 39,543,616 |
1967年 | 38,826,032 |
1966年 | 40,306,896 |
1965年 | 37,000,000 |
1964年 | 36,675,008 |
1963年 | 38,000,000 |
1962年 | 38,000,000 |
1961年 | 37,897,008 |
南アフリカにおける羊の飼養数の推移は、国内のみならず世界的な畜産業の全体像を理解するうえでも重要な指標となります。1961年から2022年までのデータを見ると、1966年に記録した40,306,896匹をピークに、羊の飼養数は全体的な減少傾向が見て取れます。特に1970年から減少が顕著化し、2022年には21,432,364匹という水準にまで落ち込みました。これにより、過去最大値と比べ約47%の減少が記録されています。
1966年のピーク以降に見られる羊の減少傾向は、多岐にわたる要因によるものです。まず、気候変動による降雨パターンの変化や干ばつなどの頻発が、羊の飼育可能な草地の生産性を低下させています。これに加えて、人間活動による都市化や土地転用が進み、家畜の放牧地が縮小していることも重要な背景として挙げられます。さらに、経済的な側面では、羊毛価格の変動や、南アフリカを含む国際市場の需要変動が飼養数に影響を及ぼしていると考えられます。
1990年代には、南アフリカの経済的改革や国際市場の変化が始まりました。この時期に、飼養数が著しく減少していることがデータからも確認できます。農業労働力の削減や代替品となる化学繊維の台頭が、羊毛産業の競争力を低下させた可能性があります。これに加え、牧畜民が新たな収益源を模索し、他の家畜や作物への転向を進めたことも影響を与えています。
近年では、新型コロナウイルスのパンデミックの影響が間接的に現れています。羊肉や羊毛の輸出に関してロジスティック上の課題が生じ、輸送コストの上昇や市場収縮が飼養数減少の一因となりました。このほか、感染症のリスクが高まり、家畜の健康管理のコストが増加したことも小規模牧畜民にとって負担となったと推測されます。
このような現象を背景に、いくつかの具体的な対策が求められます。まず、放牧地の砂漠化を防ぐため、持続可能な土地管理手法を促進することが重要です。例えば、植生回復プロジェクトの推進や水資源管理の改善が考えられます。また、羊毛や羊肉の品質改善を通じて国際市場での競争力を向上させることも、重要な施策の一つです。例えば、高品質の羊毛生産に適応した品種改良プログラムや、生産流通の効率化に向けた農村インフラの改善が挙げられます。
さらに、農業政策における支援体制の強化が必要です。牧畜民向けの技術支援や教育、資金援助の拡充が課題として挙げられます。特に、小規模牧畜民が気候変動や市場変動に対応できるよう、リスク分散を助ける仕組みが求められています。これには、民間部門や国際機関との協力を通じた資金の確保や、保険制度の導入・拡充も含まれるでしょう。
南アフリカの羊産業の再生は地域経済と食料安全保障に直結する重要課題です。FAOなどの国際機関と協調し、短期的な対応とともに長期的な戦略を進めることで、持続可能な形で問題を克服していくことが期待されます。