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南アフリカのそば生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が最新のデータを公表しました。このデータによると、南アフリカのそば生産量は1960年代から2022年にかけて大きな変動を経て、特に1960年代後半から1970年代初頭に急増と急減が見られました。2000年代以降は生産量が一貫して低下し続けており、2022年時点では225トンとなっています。この生産量は最盛期の1968年の20,409トンと比較すると、顕著な減少を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 223
-1.06% ↓
2022年 225
1.07% ↑
2021年 223
-0.95% ↓
2020年 225
-1.27% ↓
2019年 228
-0.75% ↓
2018年 229
-1.04% ↓
2017年 232
-1.03% ↓
2016年 234
-1.09% ↓
2015年 237
-1.57% ↓
2014年 241
-3.78% ↓
2013年 250
4.17% ↑
2012年 240
2.13% ↑
2011年 235
-5.64% ↓
2010年 249
-1.05% ↓
2009年 252
-1.03% ↓
2008年 254
-1% ↓
2007年 257
-0.99% ↓
2006年 259
-0.97% ↓
2005年 262
-0.95% ↓
2004年 265
-0.93% ↓
2003年 267
-0.91% ↓
2002年 269
-0.89% ↓
2001年 272
-9.38% ↓
2000年 300
20% ↑
1999年 250
-9.69% ↓
1998年 277
-0.84% ↓
1997年 279
-0.83% ↓
1996年 282
-0.83% ↓
1995年 284
-0.81% ↓
1994年 286
-0.81% ↓
1993年 289
-0.8% ↓
1992年 291
-0.79% ↓
1991年 293
-2.27% ↓
1990年 300 -
1989年 300
111.27% ↑
1988年 142
-85.12% ↓
1987年 954
-9.23% ↓
1986年 1,051
1.35% ↑
1985年 1,037
110.77% ↑
1984年 492
-13.99% ↓
1983年 572
-34.33% ↓
1982年 871
-68.57% ↓
1981年 2,771
-3.78% ↓
1980年 2,880
-49.65% ↓
1979年 5,720
-31.9% ↓
1978年 8,400
212.27% ↑
1977年 2,690
-10.78% ↓
1976年 3,015
-83.15% ↓
1975年 17,896
50.86% ↑
1974年 11,863
311.91% ↑
1973年 2,880
-26.34% ↓
1972年 3,910
-41.64% ↓
1971年 6,700
148.42% ↑
1970年 2,697
-86.78% ↓
1969年 20,400
-0.04% ↓
1968年 20,409
88.4% ↑
1967年 10,833
8.33% ↑
1966年 10,000
-16.67% ↓
1965年 12,000
-20% ↓
1964年 15,000
36.36% ↑
1963年 11,000 -
1962年 11,000 -
1961年 11,000 -

FAOの公表データを基にして南アフリカのそば生産量の推移を分析すると、まず目を引くのはその生産量の大きな変動と、近年の低迷です。1960年代初頭には一定水準で推移していたものの、1964年に生産量が急激に増加し、その後、1968年には20,409トンというピークを迎えました。しかし、その後の1970年代に入ると生産量は急激に減少し、1970年には2,697トンにまで落ち込んでいます。この急減の背景としては、アグリビジネス産業の変化や農業政策の影響、または気候変動などの要因が関与している可能性が考えられます。

1970年代後半から1980年代初頭にかけては、そば生産が数千トン単位で上下を繰り返していましたが、その後もサプライチェーンや消費市場の不振が原因で、1980年代中盤以降は年間1,000トンを下回る水準となりました。興味深いのは、1988年にはわずか142トンという低水準を記録している点で、これは農地転用や他作物へのシフトが主要因であると思われます。

2000年代以降はさらに安定的に低迷し、年間300トンを超えることは稀となり、2022年には225トンにとどまりました。このような長期的な低下傾向は、そばの生産に対する政府や農業関係者の関心が薄れたこと、または経済的利益を見込めない作物とされたことを示唆しています。また、南アフリカ国内でそばが伝統的に主食とされていないことも、そば栽培の衰退を後押しする要因の一つとなりました。

地政学的背景や地域課題も見逃せません。南アフリカは地政学的には安定しているものの、アフリカ全土での食糧安全保障や気候変動の影響を受けやすい特性があります。気候変動による干ばつや洪水などの自然災害が農業全般に深刻な影響を与えている中、そばなどの収益性が低い穀物は特に激しい競争にさらされています。さらに、COVID-19のパンデミックも、農業労働力不足や物流の停滞を引き起こし、生産の効率を一層低下させた可能性があります。

このような状況を改善するためには、いくつかの具体的な提言が行えます。一つは、政府や国際機関によるそば栽培の奨励を目的とした補助金や技術支援です。たとえば、気候変動対策を兼ねた持続可能な農業技術を導入し、そばの収穫効率を高めるプログラムを推進するべきです。また、国内外市場の需要喚起のためには、そばを利用した加工品の開発や健康食品としてのマーケティング戦略を展開することも有効です。さらに、地域協力の枠組みを活用し、近隣諸国と共同でそば製品の輸出市場を拡大する取り組みも視野に入れるべきでしょう。

結論として、南アフリカにおけるそば生産量は著しく減少していますが、これは収益性や国内外の需要の低さ、さらに気候変動や自然災害の影響といった複合的な要因の結果です。この問題を解決するためには、地域特有の課題に対応した包括的で持続可能な政策が必要となります。将来的には農業政策の再編、取引市場の拡大、そして気候変動対策の強化を通じて、そば生産の復活を目指すべきです。