国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データに基づくと、南アフリカの馬肉生産量は1961年の2,000トンから長期的に減少傾向を示しています。その後、2000年代にはある程度の安定化が見られましたが、2011年に2,100トンへ一時的に増加した後は再び減少に転じ、2023年時点では1,308トンと低水準で推移しています。この生産量の動向からは、需要の変化や経済的・地政学的な要因の影響を垣間見ることができます。
南アフリカの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,308 |
-2.82% ↓
|
2022年 | 1,346 |
-0.07% ↓
|
2021年 | 1,347 |
0.16% ↑
|
2020年 | 1,345 |
0.6% ↑
|
2019年 | 1,337 |
15.64% ↑
|
2018年 | 1,156 |
-15.35% ↓
|
2017年 | 1,366 |
0.88% ↑
|
2016年 | 1,354 |
-0.01% ↓
|
2015年 | 1,354 |
1.04% ↑
|
2014年 | 1,340 |
-10.49% ↓
|
2013年 | 1,497 |
-16.67% ↓
|
2012年 | 1,797 |
-14.44% ↓
|
2011年 | 2,100 |
6.06% ↑
|
2010年 | 1,980 |
5.32% ↑
|
2009年 | 1,880 |
23.68% ↑
|
2008年 | 1,520 | - |
2007年 | 1,520 |
1.33% ↑
|
2006年 | 1,500 |
1.43% ↑
|
2005年 | 1,479 |
-1.41% ↓
|
2004年 | 1,500 | - |
2003年 | 1,500 | - |
2002年 | 1,500 | - |
2001年 | 1,500 | - |
2000年 | 1,500 |
7.14% ↑
|
1999年 | 1,400 | - |
1998年 | 1,400 | - |
1997年 | 1,400 |
-17.65% ↓
|
1996年 | 1,700 |
6.25% ↑
|
1995年 | 1,600 |
14.29% ↑
|
1994年 | 1,400 |
16.67% ↑
|
1993年 | 1,200 |
20% ↑
|
1992年 | 1,000 | - |
1991年 | 1,000 | - |
1990年 | 1,000 | - |
1989年 | 1,000 | - |
1988年 | 1,000 | - |
1987年 | 1,000 | - |
1986年 | 1,000 | - |
1985年 | 1,000 | - |
1984年 | 1,000 | - |
1983年 | 1,000 | - |
1982年 | 1,000 | - |
1981年 | 1,000 | - |
1980年 | 1,000 | - |
1979年 | 1,000 | - |
1978年 | 1,000 | - |
1977年 | 1,000 | - |
1976年 | 1,000 | - |
1975年 | 1,000 | - |
1974年 | 1,000 | - |
1973年 | 1,000 | - |
1972年 | 1,000 |
-16.67% ↓
|
1971年 | 1,200 | - |
1970年 | 1,200 | - |
1969年 | 1,200 |
-25% ↓
|
1968年 | 1,600 | - |
1967年 | 1,600 | - |
1966年 | 1,600 |
-11.11% ↓
|
1965年 | 1,800 | - |
1964年 | 1,800 |
-10% ↓
|
1963年 | 2,000 | - |
1962年 | 2,000 | - |
1961年 | 2,000 | - |
南アフリカの馬肉生産量の推移は、幅広い社会的・経済的トレンドを映し出す指標です。馬肉生産量(トン)は、1960年代初頭には2,000トンで安定していましたが、1964年以降は減少傾向が顕著となり、1980年代には1,000トン前後で安定的な状態を保つようになりました。その後、1990年代後半から徐々に回復し、2011年には2,100トンのピークを記録しましたが、その後は急速に生産量が減少しています。この変動の背景には、経済的要素、国内外の市場動向、さらには地政学的要因が関与していると考えられます。
まず、馬肉生産の縮減は、消費嗜好や文化的背景に影響を受けていると考えられます。南アフリカでは、馬肉は主要蛋白源としての需要が低く、その消費量や輸出量は、牛肉や鶏肉と比較して著しく少ない傾向にあります。また、輸出市場も限定的であるため、国際的な市場変動の影響を受けやすい点が特徴です。たとえば、欧州諸国など馬肉の需要が高い地域では、消費者の食品安全性への懸念や倫理的観点から需要が減少している傾向がみられます。
さらに地政学的観点から見ると、南アフリカの畜産業全般に影響を与える課題も見逃せません。たとえば、土地利用の競争や気候変動による乾燥化、家畜の感染症の広がりなどの要因が馬肉の生産量に影響を与えている可能性があります。また、これは南アフリカ国内だけの問題ではなく、近隣諸国やサハラ以南のアフリカ全体の畜産業の課題ともリンクしています。
2011年の2,100トンというピークの背景には、一時的な輸出需要の増加や産業政策の転換が影響したとも考えられますが、その後の減少傾向は持続的な課題を示しています。特に2018年以降、年間生産量が1,200トン前後に低迷していることは、経済的な低成長や輸出市場の縮小の影響が大きいと推測されます。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる食肉加工業の停滞や国際貿易の制約も要因として挙げられるでしょう。
このような現状を踏まえると、南アフリカが今後馬肉生産の持続可能性を保持しつつ、国内外市場に適応するためにはいくつかの戦略が必要です。一つは、高品質で安全な馬肉を生産するための畜産技術や衛生管理の強化です。特に、動物の健康管理を徹底し、食品安全基準を満たすことで、輸出市場における競争力を高めることが求められます。また、地域的な協力体制を強化し、南部アフリカ諸国での市場の拡大を図るべきです。さらに、乾燥化や土地劣化に対応するための持続可能な牧草地管理や、水資源の効率的な利用技術の推進も重要です。
結論として、南アフリカの馬肉生産は、多様な要因に左右される複雑な動態を持っています。この動向の把握と未来への対応策の策定は、農業セクターの持続可能な発展を確保し、地域内外の農畜産物の競争力を維持するために不可欠です。国内政策の強化や国際協力の枠組みづくりを通じ、未来志向の展望を持った戦略的な対応が求められるでしょう。