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スロベニアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、スロベニアの牛乳生産量は1992年の580,218トンから2000年代にかけて増加傾向にあり、2002年には727,639トンでピークを迎えました。それ以降は徐々に減少し、2023年には605,290トンとなりました。全体的に見ると、増減の波はあるものの、中長期的には減少傾向にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 605,290
-3.21% ↓
2022年 625,350
-2.28% ↓
2021年 639,930
1.47% ↑
2020年 630,650
1.22% ↑
2019年 623,020
-0.94% ↓
2018年 628,930
-2.94% ↓
2017年 647,986
-0.26% ↓
2016年 649,675
3.03% ↑
2015年 630,583
2.27% ↑
2014年 616,581
3.54% ↑
2013年 595,496
-4.1% ↓
2012年 620,943
3.22% ↑
2011年 601,591
-3.83% ↓
2010年 625,521
-4.31% ↓
2009年 653,682
-1.92% ↓
2008年 666,472
3.77% ↑
2007年 642,262
-2.54% ↓
2006年 659,031 -
2005年 659,031
1.33% ↑
2004年 650,400
-1.7% ↓
2003年 661,651
-9.07% ↓
2002年 727,639
11.46% ↑
2001年 652,835
0.65% ↑
2000年 648,628
2.33% ↑
1999年 633,832
5.77% ↑
1998年 599,279
2.14% ↑
1997年 586,735
-1.02% ↓
1996年 592,797
-2.45% ↓
1995年 607,685
5.52% ↑
1994年 575,919
4.9% ↑
1993年 549,020
-5.38% ↓
1992年 580,218 -

スロベニアの牛乳生産は、国家成立直後の1992年の580,218トンからスタートしました。その後、1990年代後半から2000年代初頭にかけて生産量は着実に増加し、2002年に727,639トンという最高値を記録しました。しかし、この年を境に生産量は緩やかに下落へ転じ、特に2010年代以降は顕著な低下が見られます。2023年時点の生産量は605,290トンと、2002年のピーク時に比べると約17%減少しました。

この動向の背景には、いくつかの複合的な要因が考えられます。まず、EU加入後の市場開放がスロベニアの酪農業に与えた影響が挙げられます。EU域内では価格競争が激化し、より大規模で効率的な生産を行う他国との競争がスロベニアの酪農業者に圧力をかけました。また、都市化やライフスタイルの変化により、農業従事者が減少していることも重要な要因です。さらに、気候変動の影響により、長期的に農地利用が難しくなり、生産が不安定化している可能性も否定できません。

また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行も、生産と消費に影響を及ぼしました。パンデミック中には物流の停滞や労働力不足などが発生し、特に輸出市場への影響が大きかったとみられます。2023年時点の生産量が依然として減少傾向にあることから、パンデミックの長期的な余波が回復に影響している可能性があります。

他国と比較すると、スロベニアの牛乳生産量は、例えばヨーロッパの主要生産国であるドイツ(2022年には3,330万トン)、フランス(2,452万トン)、オランダ(1,414万トン)に比べると極めて小規模です。また、人口の多いインドでは約1億8,000万トンと圧倒的な生産量を誇り、国際的な競争においてスロベニアの小規模な生産は脆弱性を抱えています。ただし、国内市場向けには高品質な牛乳や乳製品が求められ、特に有機製品などニッチ市場での価値が高いことが強みと考えられます。

将来的には、スロベニア政府や酪農業関係者がいくつかの具体的な対策を講じることが重要です。例えば、効率的かつ環境に配慮した酪農技術の導入や、小規模農家を支援する政策が求められます。また、地理的な特性を生かし、高付加価値な有機乳製品や地域ブランドを構築することで、国際市場において競争力を高めることも考えられます。さらに、EUの共通農業政策(CAP)の資金を活用し、農業者の教育やイノベーションを推進することによって、長期的な生産体制の安定化を図ることが期待されます。

結論として、スロベニアの牛乳生産量の推移は、国内および国際的な市場環境、気候、社会の変化による影響を受けています。現在の減少傾向が続く場合、高付加価値戦略の強化や国際市場での差別化がますます重要になるでしょう。農業者や政府だけでなく消費者も、地域経済や環境への影響を考慮した製品選択に寄与する役割が求められます。