Skip to main content

スロベニアの羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スロベニアの羊飼養数は1992年から2022年にかけて、全体的に増加傾向を示しました。特に1992年の28,482匹から2009年までほぼ一貫して増加し、138,958匹に達しました。その後はある程度の増減を見せつつも、2022年時点で117,200匹という水準を保っています。ただし2010年代後半以降には再び減少傾向も見られ、近年の高止まりが特徴的です。このデータはスロベニアの農業や畜産活動が地域社会にどのように影響を与えているかを理解するための貴重な指標です。

年度 飼養数(匹)
2022年 117,200
2021年 119,267
2020年 113,734
2019年 110,260
2018年 108,761
2017年 119,845
2016年 109,406
2015年 113,648
2014年 108,779
2013年 114,152
2012年 119,976
2011年 129,788
2010年 138,108
2009年 138,958
2008年 131,180
2007年 131,528
2006年 129,352
2005年 119,264
2004年 105,660
2003年 107,400
2002年 94,068
2001年 96,227
2000年 72,533
1999年 72,361
1998年 51,947
1997年 43,192
1996年 39,118
1995年 29,077
1994年 26,566
1993年 22,011
1992年 28,482

スロベニアでの羊飼養数は1992年以降、大きな変化を見せてきました。1990年代初頭は28,482匹という比較的少ない数でスタートしましたが、1998年以降から顕著な増加傾向が現れ、2003年には10万匹を突破しました。これは、冷戦終了後の経済変革とともに、農業分野における新しい支援策が畜産業の成長を後押しした可能性が高いと考えられます。特に1990年代後半から2000年代前半は、欧州連合(EU)への準備過程の中で、農業政策の拡充や補助金制度が影響を及ぼしたと推測されます。

2009年にはスロベニアにおける羊飼養数は138,958匹に達し、ピークを迎えました。しかし、この後は徐々に減少に転じ、2014年には約10万匹まで戻っています。この減少の背景には、経済危機や気候変動の影響による牧草地の減少、農家の高齢化があると考えられます。また、都市化が進むことで農村部の人口が減少したことも羊飼育の制約要因となっているようです。

以降の2015年からは一定の回復を見せましたが、2022年時点では117,200匹となっており、2009年のピーク時を下回る水準で安定しています。この結果からは、スロベニアの羊飼養業が復活の兆しを見せつつも、依然として完全な持続的成長への課題を抱えていることが明らかです。

羊飼養数の推移を見てみると、EU加盟(2004年)以降の政策支援が大きな影響を与えたことが分かります。EUの共通農業政策(CAP)は、加盟国に対して畜産物や農産物の持続可能な運営を支援する制度を提供しており、このシステムに適応した農家がその有益性を享受し羊飼養数を増加させたと考えられます。しかし、2010年代に見られる減少傾向に対応するには、さらなる改善策が求められます。

課題として挙げられるのは、まず農業従事者の高齢化です。若年層が農業分野から離れる傾向が強いため、世代交代が進まず持続的な発展が妨げられています。また、気候危機による牧草地生産性の問題も避けては通れません。さらに、他国と比較すると、例えばフランスやイギリスのような大規模な牧羊国に比べて輸出市場の競争力が限られているのも課題です。

今後の対策としては、以下の具体的な提案が可能です。まず、若い農家を支援するための補助金制度や技術教育プログラムを充実させることが重要です。これにより、若年層の農業参加を促し、新たな技術を活用した効率的な経営を可能にする基盤を築けます。また、国内市場だけでなく、EU内やさらに広範な市場での販売促進施策を強化することで、輸出競争力を拡大できます。さらに、気候変動対策として、耐乾性が高い牧草の導入や灌漑施設の整備が求められるでしょう。

最後に、スロベニアが進むべき方針として、EU政策とのさらなる連携と、自然環境を活かした持続可能な畜産業の推進が挙げられます。羊は観光資源としても注目されることがあり、エコツーリズムとの組み合わせや、付加価値の高い乳製品ブランドの開発にも可能性が広がっています。スロベニアの羊飼育が未来の農業モデルとして成功を収めるためには、多方面からの努力が必要と言えるでしょう。