国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スロベニアのエンドウ豆(生)の生産量は1992年の542トンから始まり、年間ごとに大きく振れ幅のある推移を見せています。2010年代初頭には200トン以下に落ち込む年も見られましたが、2019年と2020年には600トンを超え、その後再び減少傾向を示し、2023年には130トンまで低下しています。この変動には、気候変動や国内農業政策の変化が影響している可能性が考えられます。
スロベニアのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 130 |
-43.48% ↓
|
2022年 | 230 |
-54.9% ↓
|
2021年 | 510 |
-19.05% ↓
|
2020年 | 630 |
-1.56% ↓
|
2019年 | 640 |
190.91% ↑
|
2018年 | 220 |
-2.65% ↓
|
2017年 | 226 |
-12.74% ↓
|
2016年 | 259 |
21.6% ↑
|
2015年 | 213 |
-1.39% ↓
|
2014年 | 216 |
60% ↑
|
2013年 | 135 |
-27.42% ↓
|
2012年 | 186 |
6.9% ↑
|
2011年 | 174 |
11.54% ↑
|
2010年 | 156 |
-44.29% ↓
|
2009年 | 280 |
9.8% ↑
|
2008年 | 255 |
21.43% ↑
|
2007年 | 210 |
-16.67% ↓
|
2006年 | 252 |
12% ↑
|
2005年 | 225 |
5.14% ↑
|
2004年 | 214 |
-10.46% ↓
|
2003年 | 239 |
18.32% ↑
|
2002年 | 202 |
-40.24% ↓
|
2001年 | 338 |
4% ↑
|
2000年 | 325 |
-38.45% ↓
|
1999年 | 528 |
-4.69% ↓
|
1998年 | 554 |
-23.06% ↓
|
1997年 | 720 |
3.9% ↑
|
1996年 | 693 |
-15.59% ↓
|
1995年 | 821 |
106.28% ↑
|
1994年 | 398 |
-6.79% ↓
|
1993年 | 427 |
-21.22% ↓
|
1992年 | 542 | - |
スロベニアのエンドウ豆生産量は統計の開始時期である1992年から現在に至るまで一貫した成長や安定を示しておらず、多くの年で大きな変動が観察されています。この生産量の推移からは、エンドウ豆の生産が国内農業全体において安定的な基幹作物とは考えられていないことがうかがえます。例えば、1992年の542トンから1995年には821トンと急増しましたが、わずか5年後の2000年には325トンまで減少しました。その後も生産量は長らく低迷を続け、特に2002年から2023年にかけてはほとんどの年で300トン以下を記録しています。
全体として、21世紀に入ってからの生産量の減少傾向は顕著であり、これは気候変動、農業従事者の減少、農地転換、生産効率などの総合的な要因によるものと推定されます。気候変動による異常気象や水資源の不足は、農業生産に直接的な影響を与える課題といえます。特に、近年では極端な干ばつや集中豪雨といった異常気象の頻度が増加しており、スロベニアのような規模の小さい農業国ではその影響を緩和する手段が限られていることが問題となっています。また、国内外の農業政策の変更、市場需要の変化も生産量に影響を与えている可能性があります。
2019年及び2020年には約640トンという高い数字を記録しましたが、その後2023年には再び130トンまで下落しました。この急激な減少の背景には、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行が与えた影響が考えられます。特に、パンデミックによって供給チェーンに障害が発生し、肥料や農機具へのアクセスが困難になったこと、また労働力不足が顕著だったことが生産量減少の一因となった可能性があります。さらに、2022年以降の地政学的リスク、特にウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰が農家のコスト負担を増加させ、生産縮小を余儀なくされた可能性もあります。
スロベニアのエンドウ豆生産が抱える課題を具体的に解決するには、いくつかの対策が必要です。まず、農業インフラと灌漑システムの整備を通じて、気候変動の影響を軽減する努力が求められます。加えて、小規模農家への技術支援や補助金制度の充実、さらに地域間協力を促進してエンドウ豆の需要と供給の安定を目指すべきです。気候変動の影響を最小限に抑えるためには、耐乾性や病害虫への耐性を持つ作物品種の研究・導入も欠かせません。同時に、地元市場だけでなく国際市場を視野に入れた販売促進策の検討も重要でしょう。
エンドウ豆生産の継続的な回復と成長のためには国内政策だけでなく地域間協力も鍵となります。特にEU加盟国としてのスロベニアは、EUの農業支援プログラムを効果的に活用することで、国内生産の改善に取り組むことが可能です。反対に、これらの課題への対応が遅れる場合、スロベニアの農業の多様性が失われ、将来的な食料安全保障の面でも懸念が生じる可能性があります。
まとめると、スロベニアのエンドウ豆生産量の推移は、同国の農業が抱える広範な課題を反映しています。気候変動や市場の変化、地政学的リスクへの対応を適切に行うことで、エンドウ豆生産の低迷を食い止めることが重要です。今後は政策的な後押しや国際的な支援がより一層求められる局面と言えるでしょう。