国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、スロベニアの牛飼養数は1992年から2022年にかけて大きな増減を繰り返しながらも、長期的にはおおむね安定して推移しています。1992年には約48万3千頭であった飼養数が、途中で減少と回復を経て、2022年には約46万5千頭となりました。この期間には、農業政策の変化、欧州連合(EU)加盟の影響、さらに外部要因として市場需要の変動や気候変動など、多くの要素が関係していると考えられます。
スロベニアの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 464,910 |
2021年 | 482,620 |
2020年 | 485,610 |
2019年 | 483,070 |
2018年 | 476,810 |
2017年 | 488,598 |
2016年 | 484,192 |
2015年 | 468,253 |
2014年 | 460,576 |
2013年 | 460,063 |
2012年 | 462,300 |
2011年 | 470,151 |
2010年 | 472,878 |
2009年 | 469,983 |
2008年 | 479,581 |
2007年 | 454,033 |
2006年 | 452,517 |
2005年 | 451,136 |
2004年 | 450,226 |
2003年 | 473,242 |
2002年 | 477,075 |
2001年 | 493,670 |
2000年 | 471,425 |
1999年 | 453,097 |
1998年 | 445,724 |
1997年 | 486,198 |
1996年 | 495,535 |
1995年 | 477,400 |
1994年 | 477,548 |
1993年 | 503,770 |
1992年 | 483,865 |
スロベニアの牛飼養数に関するデータをご覧いただくと、約30年に及ぶ期間において飼養数は一貫して増加もしくは減少し続けるのではなく、比較的に安定的な動向を示していることがわかります。1992年から1993年にかけて急増した飼養数は約50万頭に近づきましたが、その後は減少へと転じました。1998年には約44万5千頭まで落ち込むも、しばらくの間回復の動きが見られ、2001年には再び49万頭近くまで増加しました。ただし、その後の10年間では増減が小幅に繰り返され、2000年代の終わりごろには47万頭前後で推移しました。
しかし、2016年以降、再度増加基調が見られ、2017年には約48万9千頭に達するなど、一時期はピークに近い状態を記録しています。2020年から2021年にかけてもほぼ48万頭以上を維持していましたが、2022年には大きく減少し、46万5千頭近くとなっています。このような動きにはさまざまな要因が絡んでおり、その中でも特に先進国での畜産業を取り巻く環境が複雑化している点が指摘されます。
まず、スロベニアは2004年のEU加盟を契機に、EUの農業政策の影響を大きく受けるようになりました。EUが掲げる「共通農業政策(CAP)」に基づき、各加盟国には環境管理や畜産物生産量に対する細かな規制が課されています。このことが、特に1990年代後半から2000年代にかけて生産に影響を及ぼしていると考えられます。また、国内の農業環境だけでなく、国際的な経済状況や市場価格の変動も影響を及ぼしており、牛肉や乳製品の需要変動、輸入競争なども重要な要因となっています。
さらに、近年の気候変動とその影響も無視できません。スロベニアはヨーロッパの中でも緑豊かな農業、特に放牧畜産が支配的な国です。しかし、高温や干ばつといった気候変動要因により、飼料の供給が不安定になり、飼養数が変動した可能性もあります。この点は世界的にも普遍的な課題であり、EU全体でも持続可能な農業の推進が求められています。
2022年の減少の背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も指摘されます。パンデミックは人々の消費行動に変化を引き起こし、一部の畜産製品はこれまでのような需要を維持できなくなりました。また、物流や生産現場での労働力供給問題も発生し、畜産業全体にプレッシャーをかけた可能性があります。
これらを踏まえると、今後のスロベニアにおける牛の飼養数の推移を安定させ、利点を最大化するためにはいくつかの具体的な対策が必要です。まず、持続可能な畜産業を確立するために、EUレベルでの支援を活用した計画的な飼養管理を進めることが大切です。これには、放牧環境の改善や効率的な餌供給システムの整備が含まれます。また、農んスタッフ教育を強化して経営効率を向上し、自然資源を適切に活用する取り組みが必要です。
地域間協力の促進も課題解決に貢献する可能性を秘めています。スロベニアの近隣国であるオーストリアやクロアチアとも連携を深め、共同で生産・流通の効率化を試みることができます。このような協力体制は、国際競争力を高める上でも有益といえます。また、気候変動対策として、干ばつ耐性の高い飼料種の開発や導入、牧草地の回復プロジェクトの推進など、環境に配慮した施策の実施も検討されるべきです。
スロベニアの畜産業は持続可能な食料供給の重要な一翼を担っています。そのためには、気候や市場の動向への柔軟な対応と、政策の一貫性、さらには農業環境に対する長期的な投資が必要です。これらの取り組みが進むことで、国内外での競争力を維持し、スロベニアの牛飼養数が持続的に推移することが期待されます。