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スロベニアのニンニク生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによると、スロベニアのニンニクの生産量は1990年代から長期的に減少した後、2010年代中頃に回復傾向を見せて一時は1000トンを超える水準に達しました。しかしながら、2022年以降再び生産量が減少傾向を示しており、2023年には800トンと以前の水準に戻りつつあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 800
8.11% ↑
2022年 740
-27.45% ↓
2021年 1,020
-4.67% ↓
2020年 1,070
0.94% ↑
2019年 1,060
3.92% ↑
2018年 1,020
1.69% ↑
2017年 1,003
-7.9% ↓
2016年 1,089
11.12% ↑
2015年 980
7.46% ↑
2014年 912
11.08% ↑
2013年 821
98.79% ↑
2012年 413
-8.02% ↓
2011年 449
53.77% ↑
2010年 292
-4.89% ↓
2009年 307
1.99% ↑
2008年 301
18.5% ↑
2007年 254
-9.29% ↓
2006年 280
16.67% ↑
2005年 240
-12.73% ↓
2004年 275
-8.03% ↓
2003年 299
-9.39% ↓
2002年 330
-33.2% ↓
2001年 494
-22.81% ↓
2000年 640
-20.1% ↓
1999年 801
18.49% ↑
1998年 676
-35.12% ↓
1997年 1,042
1.36% ↑
1996年 1,028
-6.63% ↓
1995年 1,101
-16.02% ↓
1994年 1,311
-1.43% ↓
1993年 1,330
-4.39% ↓
1992年 1,391 -

スロベニアにおけるニンニク生産量の推移を概観すると、1992年に記録された生産量1,391トンから1990年代後半まで持続的な減少が続きました。特に1998年には676トンまで落ち込み、その後2005年には240トンという最も低い水準に達しました。この時期の減少の背景として、EU加盟前後の農業部門の競争変化や輸入増加が影響を与えた可能性があります。特に、効率的な規模で農業を行う国際的な生産者との競争が、中規模農家の生産量減少を引き起こしたと考えられます。

2000年代後半以降は、生産量の低迷が続く一方で、2008年から2015年にかけての緩やかな回復傾向が確認できます。特に2013年から2016年にかけては急速な増加が見られ、再び1,000トンを超える水準に到達しました。この増加の理由として、EUからの農業補助金の活用による効率改善や品質高水準のニンニクへの需要が挙げられるでしょう。また、地産地消を推進するキャンペーンやオーガニック農産物市場の成長が、国内の生産者を支援した可能性が高いです。

2019年以降、スロベニアのニンニク生産量は概ね安定した数値を示しましたが、2022年には740トンまで減少しました。この下落の理由としては、気候変動による極端な天候や新型コロナウイルス感染症の影響による物流困難、労働力不足などが影響した可能性が考えられます。特に、農作業に必要な手作業の割合が多いニンニク生産では、パンデミック下での人員不足が生産量の減少に直結したと推測されます。2023年には800トンまで回復しましたが、以前の水準には戻っていないことから、安定生産への課題が残されています。

スロベニアのニンニク生産量の減少は、国際市場において中国やインドなどの大生産国との競争が激化していることとも関連があります。例えば、中国は世界のニンニク生産の約75%を占めており、その生産規模と低価格はスモールスケールの生産国にとって大きな競争障壁となります。一方、スロベニアの市場では国内需要の一部が輸入品によって補われている状況が続いています。

将来的には、スロベニアのニンニク生産を持続可能にするための対策として、以下のような具体策が挙げられます。一つは、高品質で差別化されたニンニクの生産をさらに推進することです。ヨーロッパ市場においてオーガニックニンニクや伝統農法で栽培された商品は根強い需要があります。生産者との連携強化を図り、ブランド力を高めることで、輸入品との差別化を進めることが重要です。二つ目としては、気候変動に対応した栽培方法の導入です。耐病性や干ばつ耐性を持つ品種の研究開発を推進し、生産リスクを低減することが求められています。

また、新型コロナウイルスを契機に労働力への依存を低減するため、機械化技術の導入や効率的な作業方法の普及も検討すべきです。EUや地域の農業支援プログラムを活用し、新規農業従事者の参入を促進するとともに、都市部と農村部との労働力移動を円滑にする政策が必要です。さらに、地域間での協力体制を構築し、小規模生産者が連携してコスト削減と流通拡大を同時に実現する取り組みも有益でしょう。

地政学的背景においては、輸出拡大のためにも他のヨーロッパ諸国との農産物貿易協力や、特に中東およびアフリカ市場への販路拡大も視野に入れるべきです。一方で、地政学的対立や天候不順が持続的に影響を及ぼす可能性を考慮し、多角的なリスク管理が重要です。結果として、スロベニアのニンニク生産の持続可能性を高めることで国内経済への正の影響だけでなく、国際市場での競争力も向上させることが期待されます。

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