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ベラルーシの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、ベラルーシにおける羊肉生産量は1990年代初頭にピークを迎えた後、長期的に減少傾向を辿っています。1992年の5,400トンを最高値として、その後急激に縮小し、2000年代以降は1,000トン前後で推移しています。近年においても回復の兆しが見られず、2023年には1,000トンと低迷したままとなっています。これにより、ベラルーシの畜産業における羊肉の地位が大幅に低下している現状が浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,000 -
2022年 1,000
-16.67% ↓
2021年 1,200 -
2020年 1,200 -
2019年 1,200
-14.29% ↓
2018年 1,400 -
2017年 1,400
-6.67% ↓
2016年 1,500
15.38% ↑
2015年 1,300
30% ↑
2014年 1,000
-9.09% ↓
2013年 1,100
10% ↑
2012年 1,000
-23.08% ↓
2011年 1,300
-7.14% ↓
2010年 1,400
7.69% ↑
2009年 1,300
8.33% ↑
2008年 1,200
9.09% ↑
2007年 1,100
10% ↑
2006年 1,000
-16.67% ↓
2005年 1,200
-33.33% ↓
2004年 1,800
-10% ↓
2003年 2,000
11.11% ↑
2002年 1,800
-35.71% ↓
2001年 2,800
7.69% ↑
2000年 2,600
-3.7% ↓
1999年 2,700
-3.57% ↓
1998年 2,800
-12.5% ↓
1997年 3,200
-17.95% ↓
1996年 3,900 -
1995年 3,900
-25% ↓
1994年 5,200
-13.33% ↓
1993年 6,000
11.11% ↑
1992年 5,400 -

ベラルーシの羊肉生産量は、1990年代の社会・経済の激動期を挟みに減少傾向へと転じました。この減少は、当時のソ連崩壊後の混乱や、農業・畜産業の構造的な転換といった地政学的背景が主因の一部であると考えられます。具体的には、1992年には5,400トンであった生産量が1995年には3,900トン、2000年には2,600トンへと急激に減少しており、この急落には経済体制の変革に伴う資源分配の変化や、輸出入政策の影響も含まれます。

2000年代に入ると減少のペースは緩やかになりましたが、それでも生産量が低下し続け、特に2005年以降は1,000トン台で推移しています。この低迷は、羊肉生産自体が同国の農業政策における優先度の低さを反映している可能性があります。同時に、都市化の進展や家畜飼育に従事する労働力の不足も考慮すべき課題といえます。

また、近年の生産動向を見ていると、2010年から2018年にかけて一時的な上昇が確認されましたが、それ以上の回復には至りませんでした。この背景には、羊肉の需要自体が限定的であることや、他の畜産(例えば豚肉や牛肉)の競争力が強い点が挙げられます。加えて、2020年以降の新型コロナウイルスの影響や、2022年のロシア・ウクライナ戦争などの地政学的リスクも、農業全般における供給網の脆弱性を顕著にし、羊肉生産にも間接的な影響を与えた可能性があります。

課題としては、政府および行政の農業政策における羊飼育業の支援不足、国際市場への接続の弱さ、さらには気候変動に伴う農業資源の制約が挙げられます。他国と比較しても、たとえば中国やインドなどでは消費量の増加を背景に生産拡大が進む一方で、ベラルーシのような経済小国では都市部の消費傾向に依存しやすいという点で、国内需要の限界が影響していると考えられます。また、フランスやオーストラリアのように国際市場で主要な輸出元となる成功例からも学ぶべき点が多いと言えます。

今後の具体的な提言として、第一に、国内市場に依存するだけではなく、周辺国や国際市場を視野に入れた輸出促進対策を講じる必要があります。例えば、羊肉の品質を向上させる技術投資や、ベラルーシ産牧畜物のブランド化による収益力強化が考えられます。第二に、持続可能な農業経営のため、牧草地の適正な管理や飼料確保の方法にも注力すべきです。さらに、農業従事者の育成や技術支援プログラムを強化することが、生産の回復と安定につながるでしょう。

結論として、ベラルーシの羊肉生産量の推移は、地域に根差した政策の遅れや、国際的な不足事態への準備不足を反映していると言えます。ただし、他国の生産状況や市場動向を参照すれば、適切な政策変更による改善の可能性もあります。したがって、国内市場の基盤強化と国際市場への進出を両立させる形で、新たな農業戦略を採用することが求められるでしょう。