国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、2023年のベラルーシにおける鶏卵生産量は192,573トンで、1992年の194,200トンにほぼ近い値となっています。一方で、2000年代に一時的に減少した生産量は2010年代前半にかけて再び増加し、2014年にはピークとなる213,800トンに達しましたが、その後は減少傾向が見られます。この推移は、ベラルーシ内外の経済的、地政学的要因の影響によるものと考えられます。
ベラルーシの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 192,573 |
-0.68% ↓
|
2022年 | 193,889 |
-1.76% ↓
|
2021年 | 197,366 |
0.94% ↑
|
2020年 | 195,524 |
-3.01% ↓
|
2019年 | 201,600 |
1% ↑
|
2018年 | 199,600 |
0.14% ↑
|
2017年 | 199,315 |
-2.89% ↓
|
2016年 | 205,246 |
-2.91% ↓
|
2015年 | 211,400 |
-1.12% ↓
|
2014年 | 213,800 |
0.23% ↑
|
2013年 | 213,300 |
1.86% ↑
|
2012年 | 209,400 |
2.5% ↑
|
2011年 | 204,300 |
4.23% ↑
|
2010年 | 196,000 |
3% ↑
|
2009年 | 190,300 |
3.59% ↑
|
2008年 | 183,700 |
2.63% ↑
|
2007年 | 179,000 |
-3.24% ↓
|
2006年 | 185,000 |
7.29% ↑
|
2005年 | 172,430 |
5.22% ↑
|
2004年 | 163,870 |
4.38% ↑
|
2003年 | 157,000 |
-3.38% ↓
|
2002年 | 162,500 |
-6.61% ↓
|
2001年 | 174,000 |
-4.55% ↓
|
2000年 | 182,300 |
-3.19% ↓
|
1999年 | 188,300 |
-2.54% ↓
|
1998年 | 193,200 |
0.88% ↑
|
1997年 | 191,520 |
1.74% ↑
|
1996年 | 188,240 |
0.64% ↑
|
1995年 | 187,040 |
-1.76% ↓
|
1994年 | 190,400 |
-2.36% ↓
|
1993年 | 195,000 |
0.41% ↑
|
1992年 | 194,200 | - |
ベラルーシの鶏卵生産量の推移を1992年から2023年まで見てみると、大きな変動が見られます。1990年代のベラルーシはソビエト連邦の崩壊の影響を受け、移行期における経済混乱が農業にも影響を与えたとされています。この結果、生産量は1992年の194,200トンから2003年には157,000トンまで減少しました。しかし、2000年代半ば以降、ベラルーシ政府による農業支援政策や技術の改善が進み、生産量は徐々に回復し、2014年にはピークとなる213,800トンを記録しました。この成長は、国内需要の増加および一部の輸出市場の拡大にも支えられたと考えられます。
一方で、2015年以降は緩やかな減少傾向が続いています。この理由として、ロシアとの経済的な結びつきが強い中で発生した国際的な制裁の影響が挙げられます。また、鶏卵の生産は飼料価格やエネルギーコストの変動に左右されやすい農産部門であり、近年は国際的な供給網の不安定化や気候変動によって生じた飼料穀物の価格高騰が生産コストを圧迫しました。こうした外的要因は生産量の低下に寄与したと考えられます。
さらに、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、2020年から2022年にかけての物流の混乱や生産活動の制約を招きました。これも鶏卵生産量に一定の影響を及ぼした可能性があります。2023年の生産量は192,573トンで、安定期と言える過去の平均値と比較しても低い水準にあります。
特に比較として、鶏卵生産大国である中国やアメリカの生産量が増加を続けている点が挙げられます。中国では省力化・効率化を行う大規模養鶏産業が発達している一方、ベラルーシの生産は中小規模の農家が主流であり、競争力向上に課題があります。また、日本も国内消費向けの鶏卵生産で自給率を高く保っているため、外的要因に柔軟に対応しています。この差は各国の農業政策や市場構造の違いによるものと言えるでしょう。
今後ベラルーシが直面する課題は、持続可能で競争力の高い鶏卵生産体制を築くことです。具体的には、以下のような取り組みが提案されます。まず、養鶏の効率化と技術革新をさらに進めることが重要です。鶏舎の設備改善や生産データのデジタル管理を導入することで、生産効率や品質向上が期待されます。次に、飼料自給率の向上を図ることで、輸入原材料価格高騰への依存を減らす必要があります。また、輸出市場の多様化を進めることで、ロシア依存から脱却し、新たな販路を開拓することも重要でしょう。
気候変動が農産物生産に与える影響が増大している中、環境への配慮も欠かせません。持続可能な農法の推進や再生可能エネルギーの利用促進が、長期的な安定につながる可能性があります。さらに、地域や国際的な協力を通じて鶏卵生産インフラの整備を行い、安定供給を図ることも有効な手段です。
こうした施策を通じて、ベラルーシの鶏卵生産は国内外の市場ニーズに応えられる持続可能な成長を実現できる可能性があります。国や国際機関が連携し、資金支援や技術共有を行うことで、より強靭な生産体制の確立が期待されます。