国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、ベラルーシにおけるヤギの飼養頭数は1992年の44,000頭からはじまり、ピーク時の2010年には75,000頭まで増加しました。しかし、それ以降は減少傾向に転じ、直近の2022年には52,100頭と報告されています。この動向は農村部の経済状況や家畜需要の変化と関連している可能性があります。
ベラルーシのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 52,100 |
2021年 | 53,300 |
2020年 | 56,900 |
2019年 | 60,100 |
2018年 | 63,300 |
2017年 | 64,700 |
2016年 | 68,000 |
2015年 | 68,500 |
2014年 | 68,000 |
2013年 | 68,300 |
2012年 | 73,200 |
2011年 | 72,300 |
2010年 | 75,000 |
2009年 | 73,200 |
2008年 | 71,800 |
2007年 | 69,600 |
2006年 | 67,600 |
2005年 | 65,800 |
2004年 | 63,100 |
2003年 | 64,400 |
2002年 | 66,000 |
2001年 | 65,000 |
2000年 | 58,300 |
1999年 | 56,300 |
1998年 | 59,000 |
1997年 | 59,000 |
1996年 | 58,000 |
1995年 | 54,000 |
1994年 | 52,000 |
1993年 | 45,000 |
1992年 | 44,000 |
FAOの最新データに基づくベラルーシのヤギ飼養頭数推移を見てみると、1992年から2010年までの期間には一貫した増加が見られました。この増加は、家畜の飼養が農業経済や家庭の自給自足の一部として重視されたことや、比較的小規模な資金投入でヤギの生産が可能であったことが影響していると考えられます。この期間のピークである2010年には75,000頭が記録され、ヤギの飼養産業が盛況であったことを示しています。
一方、2010年以降は減少に転じています。特に2017年以降の減少幅が顕著であり、2022年には52,100頭と、ピーク時の約69%まで落ち込んでいます。この変化は、多岐にわたる要因が関与していると考えられます。まず、都市化が進行する中で農村部の人口減少が続いており、これが伝統的な家畜飼養の衰退につながっています。また、経済的な理由から小規模農家がヤギ飼養を維持することが難しくなっている可能性も指摘されます。さらに、他の家畜(たとえば乳牛や豚)に比べたヤギ製品(乳や肉)の市場ニーズの変化がこの動向に影響を与えたとも考えられます。
ベラルーシの飼養頭数の減少傾向は地域的な要因に加え、地政学的な背景とも関連がある可能性があります。近年、国際的な制裁や隣国との緊張関係が、農業分野への外部支援や産業市場への影響を及ぼしています。これにより農家の収益基盤が不安定化し、特に小規模養殖業者への影響が大きいと考えられます。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックも、外国貿易の停滞や国内の流通網の制約を通じて畜産業に影響を与えたことが指摘されています。このような外的要因が重なる中で、ヤギ飼養業の回復に向けた政策の導入が急務です。
今後の課題としては、まず農業政策の再構築が挙げられます。ヤギ飼養は低投資で始められるため、小規模農家や新規参入者にとって魅力的な選択肢となる可能性を秘めています。そのため、政府や地方機関による飼養・出荷支援、技術提供、ヤギ製品の価値向上を図るためのブランド化なども有効です。また、日本やドイツなどで進んでいる農村観光との連携や地産地消プログラムなどを参考にすることも考えられます。他国との際だった差として、ドイツでは農村支援を通じてヤギや羊の飼養がエコツーリズムの一環として認知されており、同様の取り組みをベラルーシでも展開する余地があります。
地域間協力の深化も重要です。特に近隣諸国との貿易や協調ネットワークを改善し、ヤギ畜産品(乳製品や皮革製品)の輸出市場を拡大する努力も必要です。これにより国内の需要だけでなく、国外市場の開拓によって持続可能な飼養が可能になるでしょう。
結論として、ベラルーシのヤギ飼養頭数の推移は、国内外の多面的な課題に直面している状況を反映しています。しかし、適切な政策と国際協力を通じて再び持続的な成長を実現する可能性は十分に残されています。さらに精密な地域別実態調査を行い、具体的施策を策定することが、経済的な回復と持続的な農村振興への道筋を切り開くでしょう。