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タジキスタンのジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年時点の最新データによれば、タジキスタンのジャガイモ生産量は1992年から2022年までの30年間で著しい変動を見せています。初期の1990年代には10万トン台程度で推移していましたが、急速な成長を経て2010年代初頭にはピークの約111万トンに達しました。その後、2014年以降は一部の年で減少傾向が見られるものの、2019年以降は90万トン前後で比較的安定しています。ただし、近年は気候変動や農業資源の制約などが影響しており、新たな課題が浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,144,900
26.77% ↑
2022年 903,117
0.01% ↑
2021年 903,000
-1.42% ↓
2020年 916,000
-7.89% ↓
2019年 994,433
3.09% ↑
2018年 964,644
23.22% ↑
2017年 782,892
-12.83% ↓
2016年 898,116
1.21% ↑
2015年 887,418
3.95% ↑
2014年 853,738
-23.48% ↓
2013年 1,115,696
12.58% ↑
2012年 991,044
14.82% ↑
2011年 863,100
13.55% ↑
2010年 760,139
10.03% ↑
2009年 690,853
1.63% ↑
2008年 679,774
2.67% ↑
2007年 662,093
15.41% ↑
2006年 573,687
3.34% ↑
2005年 555,125
5.29% ↑
2004年 527,240
11.39% ↑
2003年 473,331
32.7% ↑
2002年 356,703
15.74% ↑
2001年 308,189
1.64% ↑
2000年 303,223
26.55% ↑
1999年 239,609
37.28% ↑
1998年 174,545
36.24% ↑
1997年 128,119
18.96% ↑
1996年 107,700
-3.49% ↓
1995年 111,600
-16.72% ↓
1994年 134,000
-8.84% ↓
1993年 147,000
-12.19% ↓
1992年 167,400 -

タジキスタンは中央アジアに位置する内陸国であり、農業はその経済と国民の生活において重要な役割を果たす国です。ジャガイモは同国の主要な農作物の一つであり、とくに高地地域において多く生産されています。FAOが提供するデータを解析すると、タジキスタンのジャガイモ生産量は大きく三つの時期に分けて特徴を見ることができます。

1990年代前半、冷戦終結後の経済的混乱と国内の内戦(1992年から1997年)による影響が農業部門全体を直撃しました。この時期には生産量が低下を続け、1995年には約11万トンという最も低い数字が記録されています。この減少の背景には、農業インフラの不足、肥料や種子などの農資材の入手難、および農地管理の停滞が挙げられます。

その後、内戦終結後の安定とともに、1998年以降は生産量が急速に回復し、農業技術の改善や作付面積の拡大によって2000年代には大きな成長が見られました。特に2003年から2013年にかけては、非常に顕著な増加が記録され、この間にジャガイモ生産量は2倍以上に達しました。2013年の約111万トンが一つのピークとなり、タジキスタンの農業の成功を示す指標として評価されます。

しかしながら、2014年以降は気候変動や水資源不足、さらには国際経済状況の変化が影響し、生産量は一時的な減少傾向に入りました。近年では2019年を含むいくつかの年で約90万トン台を維持しており、全体的には安定していますが、2013年のピークと比較するとやや停滞が見られます。特に2020年以降はCOVID-19の世界的流行による供給チェーンの問題や、農業資源の輸入遅延が影響を与え、一部の年で減少傾向が続いています。

タジキスタンのジャガイモ生産にはいくつかの課題が存在します。一つは、水不足と気候変動への対応です。同国の農業は灌漑依存型であり、降水量減少や気温上昇が農作物に直接的な悪影響を及ぼしています。また、効率的な農業技術やインフラ整備が不十分であるため、生産性向上の余地が大きいと言えます。さらに、ジャガイモ市場の需要と供給をバランスさせる適切な流通システムの整備も必要です。他国の例を挙げると、日本や韓国では効率的な農業機械の導入や精密農業(ICT技術による農業管理)が進み、耕地面積そのものを拡大できなくても収穫量を増加させています。これらの取り組みはタジキスタンにとって参考になります。

今後、タジキスタンが持続可能なジャガイモ生産を実現するためには、以下の対策が求められます。第一に、気候変動に対応した耐乾性や病害虫耐性のある品種の開発・普及が重要です。第二に、農家や地域コミュニティへの技術教育を通じて、農業生産性を向上させる取組が必要です。また、第三に国際協力を活用して農業インフラや貯蔵・輸送システムを活性化させることが効果的です。

地域間協力の視点から、中央アジア諸国間で灌漑技術の共有や農業における気候リスク対応の共同研究を行うことも有効でしょう。一方で、地政学的リスクを考慮することも重要です。この地域では水資源をめぐる緊張がしばしば問題となっています。農業用水の公平な分配や水管理システムのデジタル化を進めることで、こうした潜在的なリスクを軽減することが可能です。

結論として、タジキスタンのジャガイモ生産は過去30年間で顕著な成長を遂げましたが、現在は停滞期に入りつつあり、その回復には継続的な努力が必要です。国際的な援助や技術協力を積極的に活用しつつ、国内の農業基盤を整備することで、タジキスタンはさらに強固で持続可能な農業経済を築くことが期待されます。