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タジキスタンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の2024年7月に更新されたデータによると、タジキスタンの羊肉生産量は1992年から2023年にかけて大きな変動を示しています。1992年の20,000トンから1990年代後半には生産量が急激に低下する一方、その後は急速な回復と増加が見られました。2018年の85,915トンをピークに、近年では再び減少傾向にあり、2023年には65,928トンに落ち込んでいます。この推移は、政治的・経済的な変化や農業政策、気候変動の影響が複合的に関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 65,928
-20.85% ↓
2022年 83,297
5.11% ↑
2021年 79,246
-0.94% ↓
2020年 80,000
-7.44% ↓
2019年 86,428
0.6% ↑
2018年 85,915
7.88% ↑
2017年 79,642
41% ↑
2016年 56,483
4.4% ↑
2015年 54,100
9.51% ↑
2014年 49,400
14.88% ↑
2013年 43,000
8.45% ↑
2012年 39,650
-5.82% ↓
2011年 42,100
7.29% ↑
2010年 39,240
6.51% ↑
2009年 36,843
3.49% ↑
2008年 35,600
17.49% ↑
2007年 30,300
6.32% ↑
2006年 28,500
5.95% ↑
2005年 26,900
27.49% ↑
2004年 21,100
7.65% ↑
2003年 19,600
24.84% ↑
2002年 15,700
19.85% ↑
2001年 13,100
1.55% ↑
2000年 12,900
-2.27% ↓
1999年 13,200
-1.49% ↓
1998年 13,400
13.65% ↑
1997年 11,790
9.17% ↑
1996年 10,800
-4.42% ↓
1995年 11,300
-3.42% ↓
1994年 11,700
-8.59% ↓
1993年 12,800
-36% ↓
1992年 20,000 -

タジキスタンの羊肉生産量推移を見てみると、1992年以降大きな変化がありました。1990年代初頭から中盤にかけて、羊肉生産量は急激に減少しました。この1990年代の生産量の落ち込みは、タジキスタンが独立を果たした直後の経済の混乱と内戦によるものであると考えられます。資源分配や農業関連インフラの弱体化が生産に深刻な影響を与えた結果、1993年には12,800トン、1996年には10,800トンにまで減少しました。この時期、農業全般が影響を受け、家畜の飼育環境も悪化したと推測されます。

2000年代以降、タジキスタンの羊肉生産量は回復傾向を辿り、特に2005年以降は継続的な増加が目立つようになります。2004年には21,100トンだった生産量が、2010年には39,240トン、2015年には54,100トンと大幅に成長しました。この背景には、政府の牧畜業振興政策や国際的な支援が挙げられるとともに、紛争の終結と経済の安定化も重要な役割を果たしたと考えられます。また、羊肉がタジキスタン国内の食生活や輸出品目として重要な位置を占めていることも各方面からの支援を後押しした要因となっています。

2018年に85,915トンというピークを迎えたのち、2020年にかけて小幅な変動はあるものの概ね高水準を維持していました。しかし2020年以降は、新型コロナウイルスの影響や地域的な気候変動、また地政学的リスクが複合的に絡み合って生産量は減少傾向に転じています。特に2021年から2023年にかけては急激な落ち込みが見られ、2023年には65,928トンにまで減少しました。これに伴い、国内市場や輸出先における需要をどのように満たすかが課題となっています。

タジキスタンの羊肉生産は他国と比較しても独特の課題を抱えています。同じ中央アジア地域のウズベキスタンやカザフスタンは、国内インフラの強化と市場の多様化を進めており、安定した生産量の実現に成功しています。一方、タジキスタンでは地形や交通インフラが生産地と消費地の連携を難しくしている点が課題です。また、日本や韓国、中国などのアジアの他地域では、羊肉の生産基盤を強化するために飼料技術や畜産業の機械化が進められていますが、タジキスタンではこれらの技術が十分に浸透していないことも生産の伸び悩みにつながっているといえます。

今後、タジキスタンが羊肉生産を安定的に増加させるためには、いくつかの方策が考えられます。まず、牧草地の管理や拡大を含む飼育基盤の整備が必要です。また、国際機関や隣国からの技術支援を受け入れ、農業技術の向上を図ることが重要です。さらに、輸出向けの高付加価値商品の開発に注力することで、国際市場の需要を取り込み、収益性を向上させることも検討すべきでしょう。最後に、地域的な気候変動に対処するための環境政策や耕作地の適応措置も同時に進めるべきです。

総じて、タジキスタンの羊肉生産量の推移は、同国の経済・政治・環境に深く結びついていることが明らかです。今後の政策は、現状の課題を踏まえた多角的な支援と地域協力を軸に展開されるべきでしょう。そして、これが成功すれば、タジキスタンの農業分野の持続可能な発展が一歩近づくと期待されます。