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タジキスタンの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タジキスタンの羊飼養数は1992年の2,484,200匹から2022年の4,175,661匹へと、30年間で約68%の増加を記録しました。一方、1990年代半ばには減少傾向が見られ、その後2000年代初頭より顕著な回復基調に転じています。特に2010年代後半以降は急激な増加が目立ちます。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 3,783,512
-9.39% ↓
2022年 4,175,661
3.02% ↑
2021年 4,053,219
6.12% ↑
2020年 3,819,489
2.2% ↑
2019年 3,737,435
1.93% ↑
2018年 3,666,729
0.85% ↑
2017年 3,635,763
4.18% ↑
2016年 3,489,997
3.74% ↑
2015年 3,364,192
4.25% ↑
2014年 3,226,920
4.18% ↑
2013年 3,097,496
7.02% ↑
2012年 2,894,289
6.07% ↑
2011年 2,728,556
4.25% ↑
2010年 2,617,373
1.5% ↑
2009年 2,578,600
8.62% ↑
2008年 2,374,060
21.42% ↑
2007年 1,955,200
3.25% ↑
2006年 1,893,625
6.26% ↑
2005年 1,782,000
6.58% ↑
2004年 1,672,000
5.08% ↑
2003年 1,591,100
6.79% ↑
2002年 1,489,900
0.81% ↑
2001年 1,477,900
0.39% ↑
2000年 1,472,200
-1.48% ↓
1999年 1,494,300
-3.84% ↓
1998年 1,554,000
-5.83% ↓
1997年 1,650,200
-9.11% ↓
1996年 1,815,700
-7.28% ↓
1995年 1,958,200
-5.88% ↓
1994年 2,080,500
-7.01% ↓
1993年 2,237,400
-9.93% ↓
1992年 2,484,200 -

タジキスタンの羊飼養数に関するデータは、国内の農業生産や経済における牧畜業の重要性を反映した指標といえます。この数値は、食肉生産や乳製品、羊毛の供給に依存する地域経済の状況を物語っています。また、家計収入源としての羊の飼養は、特に農村部で重要な役割を果たしています。

歴史を振り返ると、1992年から2000年代初頭までの飼養数の減少は、ソビエト連邦崩壊後の経済的混乱と関連しています。この時期、タジキスタン全体が経済基盤を再建する過程にあり、多くの畜産業者や牧畜家が飼養を維持するのに苦労しました。しかしながら、2000年代を通じて経済の安定が進み、政策の支援や地域コミュニティの努力により徐々に回復基調に転じました。

2010年以降、特に2015年を境にして、飼養数は加速度的に増加しています。この増加には、気候条件の改善や放牧地の適切な利用が影響している可能性があります。また、中国や中央アジア諸国との羊肉貿易の需要増加も大きく寄与していると考えられます。近年では、飼養技術の進歩や金融機関による零細農家への支援などもプラス要因として作用しています。ただし、急激な増加に伴い、持続可能な牧草地運営と気候変動の影響にどう対処するかが新たな課題として浮上しています。

他国との比較において、日本や韓国のように牧畜業が占める割合が小さい国では、同じ期間中に畜産頭数の増加はさほど大きくありません。一方、タジキスタンと地理的条件が類似するキルギスやウズベキスタンでは、似た傾向として一定の回復基調が見られます。しかし、タジキスタンのような急成長ペースには至っていない点で、同国の特殊性が浮き彫りになります。

将来を見据えると、気候変動による影響を軽減するための放牧地管理、大規模な疫病発生のリスクに備えた防疫体制の整備が必要です。また、輸出拡大を見込む場合には、国際市場向けの品質向上や規格の標準化が求められるでしょう。このような課題には、政府による農村地域への支援、国際機関を巻き込んだインフラ整備、農家教育プログラムの充実が効果的です。

結論として、タジキスタンの羊飼養数の増加は、農村経済の発展を示す明るい兆しである一方で、持続可能性を確保し、環境・市場ニーズへの適応を図るための取り組みが急務です。この動向は今後の中央アジア地域全体の牧畜業の未来を展望する上で、重要なモデルケースとなるでしょう。