国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、タジキスタンの鶏飼養数は1992年の6,586万羽をピークに急激に減少し、1997年には198万羽にまで落ち込むという大幅な減少が見られました。その後徐々に回復し、2000年代以降は一貫して増加傾向を示しています。特に2018年以降の増加幅は顕著で、2021年には20,801万羽と過去最高値に達しましたが、2022年には15,279万羽へと減少し、一部の変動が見られています。
タジキスタンの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 15,279.00 |
2021年 | 20,801.00 |
2020年 | 16,000.00 |
2019年 | 9,037.00 |
2018年 | 6,636.00 |
2017年 | 5,217.00 |
2016年 | 5,051.00 |
2015年 | 5,143.00 |
2014年 | 5,248.00 |
2013年 | 5,021.00 |
2012年 | 4,851.00 |
2011年 | 4,403.00 |
2010年 | 3,938.00 |
2009年 | 3,683.00 |
2008年 | 3,280.00 |
2007年 | 2,580.00 |
2006年 | 2,451.00 |
2005年 | 2,296.00 |
2004年 | 1,888.00 |
2003年 | 1,542.00 |
2002年 | 1,320.00 |
2001年 | 1,062.00 |
2000年 | 770.00 |
1999年 | 675.00 |
1998年 | 564.00 |
1997年 | 198.00 |
1996年 | 478.00 |
1995年 | 1,473.00 |
1994年 | 2,951.00 |
1993年 | 2,787.00 |
1992年 | 6,586.00 |
タジキスタンの鶏飼養数における推移データを見ると、この国が直面した歴史的背景、経済構造の転換、そして政策の影響が色濃く反映されています。1992年から1997年にかけて、飼養数が急激に減少したことは、タジキスタンが旧ソ連崩壊後の激しい経済危機や内戦(1992年から1997年)を経験したことに起因しています。この期間、農業インフラへの投資の減少、物流の混乱、そして経済基盤の脆弱化が農業生産全般に大きな影響を与えました。この当時、家庭での鶏の飼育が広範囲にわたり縮小されたと考えられ、肉や卵の供給も不安定な状態が続きました。
1998年以降、経済の安定化や農村部の復興が進む中で鶏飼養数はゆるやかな回復傾向に転じました。例えば、2000年から2010年の間は毎年数%ずつの増加が確認されており、この増加は小農家による自給的飼育と、商業ベースの鶏生産の台頭が寄与したと考えられます。さらに、2010年代には国際的な支援による畜産技術の導入や、政府の家禽(かきん)産業振興政策によって成長が加速しました。
特に2018年以降に見られる急激な増加(2018年の6,636万羽から2021年の20,801万羽への増加)は、国内の需要増加と輸出向けの生産拡大を背景にしています。この時期、都市部の需要拡大に合わせた大規模養鶏施設の建設や、近隣諸国への供給増加が顕著でした。しかしながら、2022年には飼養数が約15,279万羽へと減少しており、この減少にはコロナ禍による輸送制限や飼料コストの上昇といった外部要因が影響を及ぼした可能性があります。
タジキスタンでは現在、鶏飼養数の変動が、地政学的リスクや国際市場に大きく依存している点が課題とされています。同国は内陸国であり、飼料の多くを輸入に頼っています。そのため、世界的な穀物価格の高騰や国際的な物流の混乱が、飼料の供給と価格に直接的な影響を及ぼしています。また、隣国との物流路が地政学的に不安定であることも、家禽産業の持続的成長を阻む要因として挙げられます。
今後、持続可能な養鶏産業を発展させるためには、まず地域内での穀物生産の増加を推進することが重要です。これにより、飼料の供給を国内で一部賄う基盤を整えることが可能となります。同時に、近隣諸国と協力し、効率的で安定した物流ネットワークを構築することも鍵となります。例えば、インフラ整備のための外資導入や、農畜産技術交流のための国際協力を強化すれば、長期的な生産性向上が期待できます。
さらに、疫病管理の強化や飼育環境の改善も見逃せない課題です。過去のパンデミックや疫病流行では輸出入が制限されるなど、鶏産業が外的要因に脆弱であることが露呈しました。タジキスタンにおいても、他国の成功例をもとに、監視体制の整備やワクチン普及を実施する必要があります。
結論として、タジキスタンの鶏飼養数の大幅な改善は、経済成長や政策転換が効果的に機能してきた証と言えます。しかし、地域依存性や外的リスクを軽減するためには、自主的な生産基盤の確立や国際協力が不可欠です。国際機関の支援を活用しつつ、内外需のバランスを鑑みた政策を進めることで、安定的かつ持続的な家禽産業の発展を達成できるでしょう。