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グレナダのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、グレナダのバナナ生産量は1960年代から非常に大きな変動を見せてきました。1960年代にはピーク時で32,000トンに達した生産量は、その後1970年代から一貫して減少傾向にあり、2022年にはわずか2,558トンにまで落ち込みました。このデータは、グレナダのバナナ農業が長期的に直面してきた晴天リスク、地政学的な影響、気象条件、輸出市場の変化などの複合的な問題を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,159
-15.6% ↓
2022年 2,558
-21.36% ↓
2021年 3,253
32.34% ↑
2020年 2,458
-34.96% ↓
2019年 3,779
-24.87% ↓
2018年 5,030
-24.19% ↓
2017年 6,635 -
2016年 6,635 -
2015年 6,635 -
2014年 6,635 -
2013年 6,635
13.73% ↑
2012年 5,834
29.92% ↑
2011年 4,491
49.75% ↑
2010年 2,999
17.74% ↑
2009年 2,547
-16.76% ↓
2008年 3,060
-10.03% ↓
2007年 3,401
-12.14% ↓
2006年 3,871
902.85% ↑
2005年 386
-87.13% ↓
2004年 3,000
-3.23% ↓
2003年 3,100
-24.39% ↓
2002年 4,100 -
2001年 4,100
1.23% ↑
2000年 4,050
1.25% ↑
1999年 4,000
21.21% ↑
1998年 3,300
-2.94% ↓
1997年 3,400
-44.26% ↓
1996年 6,100
-26.51% ↓
1995年 8,300
-4.6% ↓
1994年 8,700
-3.33% ↓
1993年 9,000
-10% ↓
1992年 10,000
-10.71% ↓
1991年 11,200
-6.67% ↓
1990年 12,000
-6.25% ↓
1989年 12,800
-8.57% ↓
1988年 14,000
9.38% ↑
1987年 12,800
2.4% ↑
1986年 12,500 -
1985年 12,500
-9.65% ↓
1984年 13,835
0.13% ↑
1983年 13,817
-1.1% ↓
1982年 13,971
-4.81% ↓
1981年 14,677
-10% ↓
1980年 16,308
-23.35% ↓
1979年 21,276
2.09% ↑
1978年 20,841
9.69% ↑
1977年 19,000
-9.52% ↓
1976年 21,000
16.67% ↑
1975年 18,000
38.46% ↑
1974年 13,000
-13.33% ↓
1973年 15,000
-16.67% ↓
1972年 18,000
-5.26% ↓
1971年 19,000
-20.83% ↓
1970年 24,000
-14.29% ↓
1969年 28,000
-12.5% ↓
1968年 32,000
3.23% ↑
1967年 31,000
19.23% ↑
1966年 26,000 -
1965年 26,000
57.58% ↑
1964年 16,500
-16.24% ↓
1963年 19,700
15.88% ↑
1962年 17,000
3.66% ↑
1961年 16,400 -

グレナダのバナナ生産量の変遷は、この島国の農業と経済の構造の変化を示しています。1960年代におけるグレナダのバナナ生産量は急成長を遂げ、最高32,000トンという記録を達成しました。この時期には、バナナが同国の農業輸出の重要な部分を占め、主に英国を中心とした市場向けに輸出されていました。しかし1970年代後半以降、生産量は減少傾向を示し始め、この傾向は現在に至るまで続いています。

バナナ生産量減少の背景にはいくつかの要因が挙げられます。まず、気候変動がグレナダの農業に深刻な影響を及ぼしています。特にハリケーンや異常気象の頻発が、安定的な農業生産の維持を困難にしています。たとえば、2004年にはハリケーン「アイバン」がグレナダを直撃し、バナナ栽培を含む広範な農業に甚大な被害を与えました。この一度の災害は、その後の生産量急減に深く関連しています。

また、地政学的要因も無視できません。世界的なバナナ市場における競争激化および需要構造の変化が、輸出市場での競争力の低下をもたらしました。特に1990年代以降、ラテンアメリカ諸国からの安価なバナナ供給が増加し、グレナダのような小規模生産者は市場での地位を失い始めました。これは輸出収入を減少させ、農業インフラおよび設備投資に影響を与えました。

さらに、農業労働力の減少も重要な課題です。多くの若い世代が農業から工業や観光業への転職を選んだため、農業従事人口が大幅に縮小しました。国内消費量をまかなう程度の生産がまだ存在するものの、これ以上の拡大は困難な状況にあります。このような人材不足の問題は、近代的な農業技術の導入を阻む一因にもなっています。

しかしながら、近年、グレナダ政府や国際協力機関は、この問題に取り組むための対策を進めています。例えば、持続可能な農業の普及や、気候変動への対応能力を高める新しい技術の導入といった取り組みが行われています。また、地域間の協力強化や、有機農産物としてのプレミアム市場への参入も重要な手段として検討されています。

今後、グレナダがバナナ生産の持続可能性を確保し、再び産業として復活を遂げるためには、具体的な対策が必要です。一つは、気候変動に対応した栽培技術や耐性の強い品種の開発と普及を進めることです。これにより、ハリケーンや旱魃など気象変動への耐久力を高めることが期待されます。また、農業従事者に対する教育やトレーニングプログラムを充実させることで、次世代農業に適応した生産性向上を図る必要があります。

さらに、地域間協力による市場アクセスの強化も重要です。例えば、カリブ海諸国と共同で輸出市場の多様化を図ることや、生産者協同組合を活用した集約的な輸送体制の構築などが、有効な戦略になるでしょう。

結論として、グレナダのバナナ生産量が減少している状況は、自然災害、地政学的要因、国内外市場の変化、そして農業労働力の減少など、さまざまな要因が絡み合った結果です。この課題を克服するためには、技術革新や市場戦略の転換、政策的な支援が不可欠です。国際機関や国際的な支援を活用しながら、持続可能で競争力のある農業体制を構築することが目指されています。