国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データに基づくと、グレナダにおけるプランテン(調理用バナナ)の生産量は、1960年代から増加の傾向を見せ、特に1990年代中盤から2000年代初めにかけて持続的な成長を遂げました。しかし、2004年以降、生産量は大きな変動を見せ、2014年にピークとなる生産量(3,171トン)を記録したものの、その後、再び減少傾向を辿っています。2023年には1,570トンと、生産量が縮小しています。この背景には自然災害や農業インフラの制約、市場条件の変化が影響していると考えられるます。
グレナダのプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,570 |
-30.93% ↓
|
2022年 | 2,273 |
-27.01% ↓
|
2021年 | 3,114 |
2.47% ↑
|
2020年 | 3,039 |
70.35% ↑
|
2019年 | 1,784 |
-29.12% ↓
|
2018年 | 2,517 |
-27.86% ↓
|
2017年 | 3,489 |
-22.35% ↓
|
2016年 | 4,493 |
-22.08% ↓
|
2015年 | 5,766 |
81.84% ↑
|
2014年 | 3,171 |
86.86% ↑
|
2013年 | 1,697 |
60.81% ↑
|
2012年 | 1,055 |
11.46% ↑
|
2011年 | 947 |
9.87% ↑
|
2010年 | 862 |
5.03% ↑
|
2009年 | 820 |
4.24% ↑
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2008年 | 787 |
4.37% ↑
|
2007年 | 754 |
4.5% ↑
|
2006年 | 722 |
4.3% ↑
|
2005年 | 692 |
-46.66% ↓
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2004年 | 1,297 |
-42.87% ↓
|
2003年 | 2,271 |
18.88% ↑
|
2002年 | 1,910 |
6.37% ↑
|
2001年 | 1,796 |
7.04% ↑
|
2000年 | 1,677 |
8.02% ↑
|
1999年 | 1,553 |
9.4% ↑
|
1998年 | 1,419 |
11.32% ↑
|
1997年 | 1,275 |
14% ↑
|
1996年 | 1,118 |
15.31% ↑
|
1995年 | 970 |
47.42% ↑
|
1994年 | 658 |
3.62% ↑
|
1993年 | 635 |
-2.91% ↓
|
1992年 | 654 |
0.15% ↑
|
1991年 | 653 |
0.15% ↑
|
1990年 | 652 |
-2.1% ↓
|
1989年 | 666 |
-1.62% ↓
|
1988年 | 677 |
0.59% ↑
|
1987年 | 673 |
3.22% ↑
|
1986年 | 652 |
63% ↑
|
1985年 | 400 |
6.95% ↑
|
1984年 | 374 |
-11.58% ↓
|
1983年 | 423 |
-8.04% ↓
|
1982年 | 460 |
23.99% ↑
|
1981年 | 371 |
-2.11% ↓
|
1980年 | 379 |
-4.77% ↓
|
1979年 | 398 |
99% ↑
|
1978年 | 200 |
-22.48% ↓
|
1977年 | 258 |
1.18% ↑
|
1976年 | 255 |
5.37% ↑
|
1975年 | 242 |
1.26% ↑
|
1974年 | 239 |
1.7% ↑
|
1973年 | 235 |
11.9% ↑
|
1972年 | 210 |
16.02% ↑
|
1971年 | 181 |
-4.74% ↓
|
1970年 | 190 |
-5% ↓
|
1969年 | 200 |
-4.76% ↓
|
1968年 | 210 |
-4.55% ↓
|
1967年 | 220 |
-4.35% ↓
|
1966年 | 230 |
4.55% ↑
|
1965年 | 220 | - |
1964年 | 220 |
4.76% ↑
|
1963年 | 210 | - |
1962年 | 210 |
5% ↑
|
1961年 | 200 | - |
グレナダのプランテン(調理用バナナ)生産量の推移を見ると、この農産物が国の農業活動において重要な役割を担っていることが明らかです。特に、1990年代から2000年代初頭までの20年間に生産量が飛躍的に増加していることから、この期間中にプランテン産業が拡大した要因について深掘りする必要があります。この増加は、気候条件の安定のみならず、農業技術の普及や地域市場での需要の伸びに支えられていた可能性があります。
一方で、2004年以降、データは急激な減少を示し、大幅な年次変動が見られました。これは、同年に発生したハリケーン「アイバン」の影響が原因といえます。このハリケーンは驚異的な勢力でグレナダを直撃し、農作物の被害は莫大でした。その後の復旧過程で徐々に生産量は回復しましたが、2015年に一時的に5,766トンという最大値を記録したものの、再び下降傾向に入りました。こうした激しい変動は主に自然災害の頻発と、その影響を軽減するための十分な対策が取られていないことが要因であると考えられます。
近年では、2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)による影響も無視できません。パンデミックによる物流の停滞、農業労働力の減少、輸出市場の縮小がプランテン生産にも影響を及ぼした可能性があります。これにより、農家が生産を維持するための経済的リスクが拡大しました。また、2021年以降には回復する兆しがあるものの、2023年には再び1,570トンにまで減少しており、持続的な生産基盤の構築が求められています。
グレナダにおけるプランテン産業を発展させるためには、いくつかの課題への対応が必要です。第一に、気候変動やハリケーンなどの自然災害への備えを強化することが重要です。例えば、耐候性の高い作物品種の導入や、防風林の適切な配置、排水管理の改善などの取り組みが有効です。第二に、農業支援体制を強化するために、農家への技術研修や融資を通じたサポート体制の拡充が求められます。特に小規模農家が多いグレナダでは、効率的な支援が生産性向上に直結します。
さらに、国際市場における競争力を高めるためには、品質管理の向上、加工品としての付加価値創出、さらには観光産業との連携を図ることも重要です。例えば、有機栽培や地域ブランドを活用したプロモーション活動は、新たな収入源を生み出す可能性があります。
結論として、グレナダのプランテン生産量は過去数十年にわたり大きな変動を経験してきましたが、改善の余地はまだ多く残されています。自然災害や市場変動による影響を最小限に抑えながら、地元の農業を強化する政策を導入することで、この農産物は引き続き重要な経済資源となるでしょう。国際的な支援や地域との協力を通じて、安定した農業基盤を築き、持続可能な発展を実現することが期待されます。