国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、グレナダの牛乳生産量は1961年の930トンから1975年に1,870トンまで増加しましたが、1980年代以降は急激な減少を経験し、1990年代は500トン前後で安定する形となりました。その後、2000年代後半から緩やかな増加傾向を見せ、2022年には563トンと小幅な回復を見せています。
グレナダの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 563 |
2021年 | 562 |
2020年 | 561 |
2019年 | 560 |
2018年 | 556 |
2017年 | 555 |
2016年 | 555 |
2015年 | 555 |
2014年 | 555 |
2013年 | 555 |
2012年 | 558 |
2011年 | 700 |
2010年 | 550 |
2009年 | 657 |
2008年 | 612 |
2007年 | 551 |
2006年 | 520 |
2005年 | 520 |
2004年 | 520 |
2003年 | 520 |
2002年 | 520 |
2001年 | 520 |
2000年 | 520 |
1999年 | 520 |
1998年 | 520 |
1997年 | 532 |
1996年 | 520 |
1995年 | 520 |
1994年 | 510 |
1993年 | 505 |
1992年 | 500 |
1991年 | 495 |
1990年 | 490 |
1989年 | 485 |
1988年 | 480 |
1987年 | 500 |
1986年 | 500 |
1985年 | 550 |
1984年 | 600 |
1983年 | 800 |
1982年 | 1,000 |
1981年 | 1,160 |
1980年 | 1,160 |
1979年 | 1,250 |
1978年 | 1,660 |
1977年 | 1,700 |
1976年 | 1,800 |
1975年 | 1,870 |
1974年 | 1,800 |
1973年 | 1,660 |
1972年 | 1,700 |
1971年 | 1,520 |
1970年 | 1,560 |
1969年 | 1,530 |
1968年 | 1,520 |
1967年 | 1,400 |
1966年 | 1,500 |
1965年 | 1,350 |
1964年 | 1,330 |
1963年 | 1,200 |
1962年 | 1,200 |
1961年 | 930 |
グレナダの牛乳生産量は1960年代から1970年代後半にかけて順調に増加し、1975年には1,870トンと過去最高の数値を記録しました。この時期は農牧業の成長が見られ、地元の需要に応えるだけでなく少量ながらも輸出用にも供給が可能であったと考えられます。しかし1979年を境に状況が変わり始め、その後1980年代にかけて急激な減少が続きました。特に1984年以降は600トンを下回り、1986年には500トンに達しました。その背景には政治的不安定や経済基盤の弱体化に加え、輸入品への依存度の増加や農業支援策の不十分さが影響していると考えられます。
1990年代以降は500トン前後で低い水準が続くものの一定の安定が見られ、2000年代後半には再び回復傾向に転じました。2007年から2009年にかけて牛乳生産量は551トンから657トンと短期的に増加しましたが、2010年以降は年ごとの変動が見られつつも、生産量が600トンを超えることは少なくなっています。近年では2022年に563トンとやや持ち直してはいますが、依然として1960年代後半から1970年代半ばのピーク時と比べると大幅に低い水準で推移しています。
グレナダの牛乳生産量における課題の一つは、近代的な農牧業技術の導入が遅れている点にあります。限られた農地と資本では効率的な生産を支えるインフラ投資が難しいことに加え、小規模経営が主流なために競争力が低い状況です。また、気候変動の影響もこの生産動態に影響を与えていると考えられます。突発的な天候災害や気温の上昇は、放牧地の利用可能性や乳牛の健康に直接的な影響を及ぼします。さらに、グレナダは輸入に大きく依存しているため、地元産業の需要に合った支援政策が不足していることも現状を悪化させています。
一方で、グレナダが現在進行形で直面している課題は他国にも共通する部分があります。たとえば、アメリカやヨーロッパでは近年新たな酪農技術やインフラが普及し、効率的な生産を実現している一方で、気候変動の影響や国際市場の競争激化は避けられない現象となっています。日本の状況を見ても、足りない牛乳を補うため輸入に頼る側面があり、輸入価格や貿易状況に影響されやすい点が似通っています。こうした背景を踏まえ、グレナダは融合型農牧業や国際機関からの技術協力の活用を進めることが回復の鍵となります。
将来的には持続可能な酪農業を目指した政策が重要です。たとえば、小規模農家向けの融資や技術支援の強化、若年層の農業従事者育成のための教育プログラムの創設が有効でしょう。また、気候変動への対策として耐干性牧草や酪農適応型の牛種の導入も検討に値します。さらに、地域間での協力体制を構築し、カリブ海諸国との連携によって効率的なサプライチェーンを維持することも重要です。
結論として、グレナダの牛乳生産量は過去のピークに比べ依然として回復を遂げられていませんが、緩やかな増加傾向が見られます。この現状をさらに改善するためには、地元の特性に適した政策の導入や国際的な支援の活用が必要です。FAOやその他の国際機関が提供するデータや知識を基盤とし、効率化と持続可能性を両立した農牧業への転換を進めるべきでしょう。同時に、地政学的なリスクや気候変動に対する備えを固めることで、安定的な牛乳生産とその市場競争力の向上が期待されます。