FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、グレナダのサツマイモ生産量は1961年には410トンでしたが、2022年には675トンとなっています。この間に大きな変動が見られ、一時は減少傾向が続いていましたが、2000年代後半以降には再び増加基調を示しました。ただし、2014年からの劇的な増産を経て、2019年の1,624トンをピークに再び減少傾向が見られています。この推移を通して、グレナダの農業環境や経済状況、気候変動など多様な要因が影響していることが示唆されています。
グレナダのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 479 |
-29.04% ↓
|
2022年 | 675 |
-29.02% ↓
|
2021年 | 951 |
-26.05% ↓
|
2020年 | 1,286 |
-20.81% ↓
|
2019年 | 1,624 |
23.69% ↑
|
2018年 | 1,313 |
6.14% ↑
|
2017年 | 1,237 |
-1.9% ↓
|
2016年 | 1,261 |
-27.03% ↓
|
2015年 | 1,728 |
58.97% ↑
|
2014年 | 1,087 |
144.27% ↑
|
2013年 | 445 |
86.43% ↑
|
2012年 | 239 |
8.61% ↑
|
2011年 | 220 |
26.43% ↑
|
2010年 | 174 |
35.8% ↑
|
2009年 | 128 |
9.4% ↑
|
2008年 | 117 |
60.27% ↑
|
2007年 | 73 |
-42.06% ↓
|
2006年 | 126 |
35.48% ↑
|
2005年 | 93 |
-22.5% ↓
|
2004年 | 120 | - |
2003年 | 120 |
-20% ↓
|
2002年 | 150 | - |
2001年 | 150 |
-25% ↓
|
2000年 | 200 | - |
1999年 | 200 |
-20% ↓
|
1998年 | 250 | - |
1997年 | 250 |
-7.41% ↓
|
1996年 | 270 |
0.75% ↑
|
1995年 | 268 | - |
1994年 | 268 |
1.9% ↑
|
1993年 | 263 |
-1.5% ↓
|
1992年 | 267 |
1.52% ↑
|
1991年 | 263 |
1.15% ↑
|
1990年 | 260 |
1.96% ↑
|
1989年 | 255 |
10.87% ↑
|
1988年 | 230 |
0.88% ↑
|
1987年 | 228 |
1.33% ↑
|
1986年 | 225 |
-19.06% ↓
|
1985年 | 278 |
0.72% ↑
|
1984年 | 276 | - |
1983年 | 276 |
-6.76% ↓
|
1982年 | 296 |
9.63% ↑
|
1981年 | 270 |
-2.17% ↓
|
1980年 | 276 |
-25.61% ↓
|
1979年 | 371 |
-5.12% ↓
|
1978年 | 391 |
-3.46% ↓
|
1977年 | 405 |
19.12% ↑
|
1976年 | 340 |
6.92% ↑
|
1975年 | 318 |
2.25% ↑
|
1974年 | 311 |
1.97% ↑
|
1973年 | 305 |
-32.22% ↓
|
1972年 | 450 |
-11.42% ↓
|
1971年 | 508 |
1.6% ↑
|
1970年 | 500 |
-1.96% ↓
|
1969年 | 510 |
2% ↑
|
1968年 | 500 | - |
1967年 | 500 |
3.95% ↑
|
1966年 | 481 |
6.89% ↑
|
1965年 | 450 |
2.27% ↑
|
1964年 | 440 |
2.33% ↑
|
1963年 | 430 |
2.38% ↑
|
1962年 | 420 |
2.44% ↑
|
1961年 | 410 | - |
グレナダのサツマイモ生産は、1961年から2022年までのデータを見ると、非常に特徴的な変動を経験していることが分かります。1960年代から1970年代の初期には、生産量は緩やかに増加していきました。この時期には、サツマイモが国民の主要な作物の一つとして重要な役割を果たしていたことが考えられます。しかし、1972年以降、生産量が次第に減少に転じ、特に1973年から1976年は急激な減少を記録しています。この背景には、グレナダの社会経済的な変化や、農業の近代化の遅れが影響している可能性があります。
1980年代から2006年にかけて、生産量は低調なままでした。サツマイモは長期保存が難しく、天候などの環境条件に影響を受けやすい作物です。また、この期間はグレナダがいくつかの自然災害に見舞われたことに加えて、農業から観光業への経済のシフトが進んでいたことが、サツマイモ生産に悪影響を与えた可能性があります。2005年には過去最低の93トンまで減少しましたが、その後徐々に増加を見せ、2014年には急激な伸びを記録して1,087トンとなり、2015年にはさらに増産し1,728トンと過去最高値に達しました。
この大幅な増産の背景としては、グレナダ政府が農業分野への支援を強化したこと、農業技術の改善、新たな市場へのアクセスが挙げられます。また、気候変動による天候の改善が一時的に追い風となった可能性もあります。しかしながら、2019年以降には再び生産量が減少しています。この減少は、気候変動による異常気象や、世界的なパンデミック(新型コロナウイルス)の影響など、複合的な要因が関係すると推測されます。
これらの長期的なデータ分析から、いくつかの課題が浮かび上がります。まず、サツマイモ生産は気候条件や自然災害に非常に影響されやすいことです。グレナダのような小規模な島国では、嵐や洪水、干ばつなど、地政学的に制御が難しい自然環境の影響を強く受けます。そのため、農業従事者に気候変動に適応するためのトレーニングを提供することや、耐久性のある品種の開発が重要です。
また、市場の需要の変化や輸送・物流インフラの未整備も生産量変動の一因と考えられます。特に輸出市場において、効率的な流通ルートや加工品の開発は、農産物の付加価値を高めるための重要な戦略となります。これには、国際市場での競争力を確保するための基準適合(たとえば品質管理や有機認証など)の取り組みも含まれるでしょう。
さらに、地域衝突や新型コロナウイルスといった地政学的なリスクも、労働力や農産物の供給に影響を与えました。今後、政府や国際機関は、農業分野における安定的な資金供給や災害対策を一層強める必要があると言えます。
結論として、グレナダのサツマイモ生産は、環境的および経済的要因に大きく左右されるものであり、特に昨今の気候変動問題は無視できない課題です。政府と地域社会が連携し、気候変動に強い農業、物流インフラの整備、新技術の導入に取り組むことで、持続可能な生産体制を構築することが求められます。このような対応は、グレナダの農業のみならず、経済全体における持続可能な発展に寄与するものとなるでしょう。