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チュニジアのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、チュニジアのナシ生産量は1961年の3,000トンから始まり、1990年代には年間30,000~50,000トン台を安定して記録しました。その後、2000年代には68,000トンを超える生産量に到達する年もありましたが、2010年代後半以降、大幅に減少傾向を示しています。2023年の生産量は22,256トンで、過去最高の記録である2008年の75,000トンと比較して非常に低い水準にとどまっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 22,256
1.16% ↑
2022年 22,000
46.67% ↑
2021年 15,000
36.36% ↑
2020年 11,000
-47.62% ↓
2019年 21,000
61.54% ↑
2018年 13,000
-33.33% ↓
2017年 19,500
21.88% ↑
2016年 16,000
-34.69% ↓
2015年 24,500
44.12% ↑
2014年 17,000
-64.58% ↓
2013年 48,000
-22.58% ↓
2012年 62,000
1.64% ↑
2011年 61,000
-7.58% ↓
2010年 66,000
10% ↑
2009年 60,000
-20% ↓
2008年 75,000
41.51% ↑
2007年 53,000
-18.46% ↓
2006年 65,000
22.64% ↑
2005年 53,000
-14.52% ↓
2004年 62,000
3.33% ↑
2003年 60,000
-11.76% ↓
2002年 68,000
23.64% ↑
2001年 55,000
1.85% ↑
2000年 54,000
8% ↑
1999年 50,000
-7.24% ↓
1998年 53,900
14.68% ↑
1997年 47,000
-7.84% ↓
1996年 51,000
70% ↑
1995年 30,000
-16.67% ↓
1994年 36,000
-14.29% ↓
1993年 42,000
16.67% ↑
1992年 36,000
10.43% ↑
1991年 32,600
30.4% ↑
1990年 25,000
-24.24% ↓
1989年 33,000
21.77% ↑
1988年 27,100
17.83% ↑
1987年 23,000
-9.09% ↓
1986年 25,300
-4.89% ↓
1985年 26,600
43.78% ↑
1984年 18,500
15.63% ↑
1983年 16,000
25% ↑
1982年 12,800
-22.42% ↓
1981年 16,500
70.1% ↑
1980年 9,700
-11.82% ↓
1979年 11,000
-26.67% ↓
1978年 15,000
34.53% ↑
1977年 11,150
42.95% ↑
1976年 7,800
21.88% ↑
1975年 6,400
3.23% ↑
1974年 6,200
8.77% ↑
1973年 5,700
96.55% ↑
1972年 2,900
-38.3% ↓
1971年 4,700
36.23% ↑
1970年 3,450
25.45% ↑
1969年 2,750
-29.49% ↓
1968年 3,900
27.87% ↑
1967年 3,050
-3.17% ↓
1966年 3,150
14.55% ↑
1965年 2,750
37.5% ↑
1964年 2,000
-23.08% ↓
1963年 2,600
36.84% ↑
1962年 1,900
-36.67% ↓
1961年 3,000 -

チュニジアのナシ生産量は、この60年以上の間に大きく変動してきました。その推移を見ると、1960年代から1970年代初頭までは比較的低い生産量で推移していましたが、1970年代中旬以降に急速な増加を示し、1985年には26,600トン、1993年には42,000トンに到達しました。この増加要因としては、農業技術の向上、土地利用の拡大、および気候条件の好転が考えられます。その後、2002年には生産量が68,000トン、2008年には75,000トンに達するなど、20世紀後半からの拡大傾向が持続しました。

しかし、2010年代後半からナシの生産量は急激な減少を見せるようになりました。2014年には17,000トンに落ち込み、2018年には13,000トンまで減少しました。この背景には、降水量の減少や気温の上昇などの気候変動の影響、並びに土地の乾燥化による農業生産への打撃があると考えられます。また、国内の経済的および社会的な不安定性が農業セクターに悪影響を及ぼしている可能性も見られます。同様に、この時期に地域的な水不足や灌漑システムの効率化が進んでいないことも課題として挙げられます。

2008年に記録した75,000トンという生産量と2023年の22,256トンを比較すると、ナシの生産効率が著しく低下していることが明確です。特に近年、気候変動による異常気象や干ばつが頻発し、農地の劣化や農業への投資不足が原因として浮き彫りになっています。また、政府や地域コミュニティが農業生産を支えるための政策を十分に実施できていないことも要因の一つと見られます。

今後の課題として、ナシの生産量の回復および安定化が挙げられます。このためには、灌漑システムの改善や持続可能な農業技術の導入が不可欠です。たとえば、耐乾燥性の高い作物品種の導入や、雨水再利用の促進が具体的な対策として考えられます。また、農家への技術支援と研修の強化、財政的支援を通じて生産者が経済的な負担なく持続可能な農業に取り組める環境を整備する必要があります。さらに、チュニジア国内外の気候変動対策プロジェクトへの参加も検討すべきでしょう。

地政学的背景を考えると、北アフリカ地域では水資源の争奪が今後さらに深刻化する可能性が高いです。これにより、農業用水の確保が困難になり、ナシ生産のような水を多く必要とする果樹栽培に影響を及ぼす懸念があります。よって、地域レベルで水資源管理の協力体制を確立し、近隣国との協調を強化することが不可欠です。

最後に、政府や国際機関が長期的にとるべき具体的な対策として、灌漑施設のインフラ整備を優先しつつ、ナシだけでなく他の果樹や作物の育成プランを策定することが重要です。持続可能な農業体系を構築することによって、チュニジアは将来的に安定した果実生産量を維持し、国内食糧安全保障に寄与することができるでしょう。