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チュニジアの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チュニジアの牛飼養数は過去数十年間で大きな変動を見せています。特に1960年代初頭から1970年代半ばにかけて急激な増加を経験しましたが、その後は波を伴いながら減少傾向をたどっています。2022年には580,301頭となっており、ピークとなった1976年の906,000頭に比べて約36%減少しています。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 583,828
0.61% ↑
2022年 580,301
-1.86% ↓
2021年 591,313
-2.54% ↓
2020年 606,694
7.13% ↑
2019年 566,320
-4.74% ↓
2018年 594,500
-7.97% ↓
2017年 646,000
-0.02% ↓
2016年 646,100
-5.79% ↓
2015年 685,800
2.18% ↑
2014年 671,200
3.88% ↑
2013年 646,157
-1.24% ↓
2012年 654,260
-0.22% ↓
2011年 655,730
-2.26% ↓
2010年 670,900
-1.2% ↓
2009年 679,080
-2.24% ↓
2008年 694,660
-2.18% ↓
2007年 710,130
0.99% ↑
2006年 703,150
2.45% ↑
2005年 686,320
4.49% ↑
2004年 656,820
-3.33% ↓
2003年 679,440
-9.77% ↓
2002年 753,000
-1.31% ↓
2001年 763,000
-0.52% ↓
2000年 767,000
2.4% ↑
1999年 749,000
3.6% ↑
1998年 723,000
3.08% ↑
1997年 701,390
0.77% ↑
1996年 696,000
6.37% ↑
1995年 654,300
-1.16% ↓
1994年 662,000
0.46% ↑
1993年 659,000
3.63% ↑
1992年 635,900
0.78% ↑
1991年 631,000
1.45% ↑
1990年 622,000
-0.59% ↓
1989年 625,700
-1.36% ↓
1988年 634,300
-4.76% ↓
1987年 666,000
6.73% ↑
1986年 624,000
0.65% ↑
1985年 620,000
1.14% ↑
1984年 613,000
2.34% ↑
1983年 599,000
5.2% ↑
1982年 569,400
-2.83% ↓
1981年 586,000
-2.17% ↓
1980年 599,000
6.02% ↑
1979年 565,000
-27% ↓
1978年 774,000
-14.57% ↓
1977年 906,000
0.67% ↑
1976年 900,000
2.27% ↑
1975年 880,000
2.33% ↑
1974年 860,000
4.88% ↑
1973年 820,000
5.13% ↑
1972年 780,000
4% ↑
1971年 750,000
7.14% ↑
1970年 700,000
6.06% ↑
1969年 660,000
4.76% ↑
1968年 630,000
1.94% ↑
1967年 618,000
4.39% ↑
1966年 592,000 -
1965年 592,000
9.23% ↑
1964年 542,000
12.92% ↑
1963年 480,000
-14.74% ↓
1962年 563,000
-11.2% ↓
1961年 634,000 -

チュニジアの牛飼養数の推移を振り返ると、複数の地政学的、経済的、及び環境的要因の影響が浮き彫りになります。1961年には解放直後の整備段階にあり634,000頭であった牛飼養数が、その後1970年代半ばには急速に拡大し、1976年には906,000頭に達しました。この成長期は、農業政策の近代化と国内畜産の拡大に伴う直接支援の強化が背景にあると考えられます。しかし、1978年以降に見られる急激な減少(774,000頭から565,000頭)や、その後の大きな揺れを伴う推移は、複合的な要因の影響を受けた結果とされています。

例えば、経済の安定度が低下し、牧畜業への政府支援が減少したことが一因です。また、土地利用の競争が激化し、牧草地の転用や耕作地の縮小が発生しました。加えて、1970年代後半から1980年代にかけては旱魃(かんばつ)などの自然災害が農業に打撃を与え、持続的な畜産業の展開が困難な局面となりました。さらに、2000年代以降では、気候変動の影響が顕著となり、降雨量の減少が牧草地の生産性を低下させ、これが飼養頭数の減少に拍車をかけたと考えられます。

他国との比較では、同じ地中海地域にある国々の中でも特に北アフリカ諸国では、全体的に牧畜生産が天候の影響を受けやすく、周期的な低迷を経験していることが確認されています。一方で、欧州諸国や経済的に安定した南米地域では、生産技術の高まりや国際的な資本投資により、牛の飼養数が安定または増加傾向にある国も多く、これは技術力や支援体制の格差を物語るものと言えます。

チュニジアの牛飼養数の減少は単に農業や畜産分野にとどまらず、国民全体に供給される畜肉や酪農製品量の減少、食の安全保障の後退に直結しています。この動向を打破するためには、いくつかの具体策を展開する必要があります。第一に、気候変動への適応策として、耐旱性の高い牧草の導入や、水資源の効率的な利用を促進する技術の導入が急務です。また、畜産業者への金融支援や教育プログラムの展開により、生産性向上を後押しすることも重要です。さらに、地域協力を強化し、近隣諸国や国際機関と知見や技術を共有できる枠組みを構築することで、より持続可能な形で畜産業を発展させることが可能となります。

結論として、チュニジアの牛飼養数の長期的な減少には、環境、経済、社会といった多岐にわたる要因が影響していることが分かります。しかしこれを逆転させる道は閉ざされておらず、政府や国際機関が協力して先見的な解決策を講じることで、持続可能で安定的な牧畜業を再構築することが可能です。そのためには、短期的な緊急支援のみでなく、中長期的な視野での農業政策と産業支援の整備が求められます。