国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、チュニジアの牛乳生産量はデータが取られている1961年から2022年にわたり、全体的に著しい増加傾向を示しています。1961年の142,000トンに対して、2022年には1,412,476トンと約10倍に増加しました。この増加率は、特に1990年代以降に顕著であり、2000年以降に年間生産量が急速に伸びる傾向が見られます。ただし、2018年ごろからはやや生産量が減少・横ばいしており、近年の持続的な成長には課題があることが示唆されています。
チュニジアの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 1,412,476 |
2021年 | 1,442,545 |
2020年 | 1,412,680 |
2019年 | 1,382,752 |
2018年 | 1,347,623 |
2017年 | 1,462,490 |
2016年 | 1,440,507 |
2015年 | 1,388,585 |
2014年 | 1,263,855 |
2013年 | 1,191,400 |
2012年 | 1,139,300 |
2011年 | 1,102,800 |
2010年 | 1,067,093 |
2009年 | 1,044,285 |
2008年 | 1,025,284 |
2007年 | 1,020,884 |
2006年 | 993,283 |
2005年 | 933,682 |
2004年 | 877,482 |
2003年 | 904,501 |
2002年 | 958,281 |
2001年 | 947,853 |
2000年 | 900,473 |
1999年 | 834,439 |
1998年 | 750,000 |
1997年 | 657,000 |
1996年 | 615,000 |
1995年 | 565,000 |
1994年 | 523,000 |
1993年 | 489,000 |
1992年 | 452,800 |
1991年 | 421,864 |
1990年 | 425,912 |
1989年 | 407,360 |
1988年 | 384,000 |
1987年 | 377,100 |
1986年 | 345,300 |
1985年 | 336,900 |
1984年 | 314,100 |
1983年 | 300,100 |
1982年 | 248,000 |
1981年 | 264,100 |
1980年 | 237,300 |
1979年 | 211,370 |
1978年 | 277,118 |
1977年 | 279,954 |
1976年 | 259,031 |
1975年 | 245,000 |
1974年 | 221,400 |
1973年 | 207,500 |
1972年 | 194,500 |
1971年 | 182,400 |
1970年 | 172,400 |
1969年 | 185,200 |
1968年 | 201,100 |
1967年 | 205,000 |
1966年 | 192,000 |
1965年 | 176,600 |
1964年 | 166,300 |
1963年 | 140,000 |
1962年 | 140,500 |
1961年 | 142,000 |
FAOの最新データによると、チュニジアの牛乳生産量は、1961年の142,000トンから開始し、2022年までの約60年間で大きく成長しました。この増加の背景には、農業技術の進化、乳牛の飼育の効率化、国内需要の増加、さらに農業政策やインフラの整備が大きく寄与していると考えられます。特に1990年代以降の政策の転換や、酪農における近代化が生産量拡大を牽引しました。
生産量の増加の中で特筆すべきは、1998年と2000年の間における急激な伸びです。この期間には、750,000トンから900,473トンへの急増が見られ、チュニジア酪農の構造的変化が生じた可能性があります。具体的には、大規模牧場の導入や乳製品加工業の成長が影響していると考えられます。また、消費者の生活水準の向上や都市化により、乳製品の需要が国内市場全体で高まった結果と考察できます。
しかし、2018年以降のトレンドには注意が必要です。2018年の1,347,623トンをピークに、その後数年間は減少あるいは横ばいの傾向が見られます。これは、気候変動による農業への影響、乳牛の飼育コストの上昇、経済の停滞、あるいは地域的な輸送やインフラの問題が関与している可能性があります。また、新型コロナウイルスのパンデミックは世界中でサプライチェーンに影響を与えており、生産や流通の効率に課題が生じたことが推測されます。
チュニジアの地政学的背景もこのデータを理解する上で重要です。同国は地中海に面し、近接する欧州市場との貿易の可能性を持つ一方で、干ばつや旱魃などの自然災害や、地域衝突による影響を受けやすい位置にあります。特に気候変動は今後ますます深刻な脅威となることが予想され、牛乳生産量の維持・向上を図る上での中心的な課題となるでしょう。
今後、この成長を持続するためには、具体的な対策が求められます。まず、乳牛の生産性向上を目指した研究開発を強化し、飼料や農業技術の改善を進めることが必要です。また、政府は気候変動対策を積極的に実施し、干ばつの影響を軽減する灌漑設備の整備や、中小酪農家を支援する補助金制度を拡充するべきです。さらに、国際市場への輸出を拡大し、外国からの投資を誘致することで、酪農業全体の収益基盤を強化する機会を模索するべきです。
まとめとして、これまでの牛乳生産量の増加はチュニジアの国内農業政策と世界的な消費動向に適切に対応した結果といえます。ただし、現在の横ばい傾向と将来的な気候変動は重大な課題であり、その克服には科学技術、政策、国際協力の総合的な取り組みが必要です。そのため、国内外の関係者が協議し、持続可能な酪農業の発展を目指す取り組みを進めていくことが求められます。