Skip to main content

チュニジアのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、チュニジアのテンサイ(甜菜)生産量は、1960年代から1980年代半ばに上昇と下降を繰り返し、1986年以降1990年代には一時的に大幅な増加を記録しました。しかし、1998年以降は急激に生産量が減少したものの、近年では緩やかな回復傾向を見せています。2023年には96,215トンを記録し、直近数年間で着実な増加が見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 96,215
4.6% ↑
2022年 91,984
3.49% ↑
2021年 88,882
3.51% ↑
2020年 85,872
-1.69% ↓
2019年 87,350
-0.74% ↓
2018年 88,000
8.99% ↑
2017年 80,745
5.74% ↑
2016年 76,361
-0.04% ↓
2015年 76,391
-2.06% ↓
2014年 78,000
129.41% ↑
2013年 34,000 -
2012年 34,000
64.25% ↑
2000年 20,700
-76.83% ↓
1999年 89,358
-37.34% ↓
1998年 142,600
-46.79% ↓
1997年 268,000
-12.27% ↓
1996年 305,500
13.15% ↑
1995年 270,000
16.63% ↑
1994年 231,500
-5.83% ↓
1993年 245,830
-15.45% ↓
1992年 290,750
38.25% ↑
1991年 210,300
-25.35% ↓
1990年 281,700
11.79% ↑
1989年 252,000
-1.56% ↓
1988年 256,000
-15.65% ↓
1987年 303,500
48.05% ↑
1986年 205,000
31.58% ↑
1985年 155,800
15.24% ↑
1984年 135,200
101.79% ↑
1983年 67,000
-18.89% ↓
1982年 82,600
33.23% ↑
1981年 62,000
-15.07% ↓
1980年 73,000
40.38% ↑
1979年 52,000
-35% ↓
1978年 80,000
-32.2% ↓
1977年 118,000
42.17% ↑
1976年 83,000
57.2% ↑
1975年 52,800
11.39% ↑
1974年 47,400
5.8% ↑
1973年 44,800
1.78% ↑
1972年 44,016
26.34% ↑
1971年 34,838
27.15% ↑
1970年 27,400
-31.06% ↓
1969年 39,744
16.55% ↑
1968年 34,100
-14.43% ↓
1967年 39,850
-29.34% ↓
1966年 56,400
50.4% ↑
1965年 37,500
-23.47% ↓
1964年 49,000
8.89% ↑
1963年 45,000
36.36% ↑
1962年 33,000 -
1961年 33,000 -

チュニジアにおけるテンサイ(甜菜)の生産量データは、同国の農業政策や自然環境、経済的条件による影響を色濃く反映しています。このデータからは、約60年間にわたる生産量の変動を通じて、チュニジア農業の課題や国際的な市場動向の影響を読み解くことができます。

初期のデータを見ると、生産量は1961年から1970年にかけて比較的安定しており、最初の数年間は30,000トン台で推移していました。その後の1970年代には生産量に大きな変動が見られ、一時的には118,000トンという高い数値を示しています。これはおそらく、この期間における国内農業体制の強化や融資政策の成果が反映されたものと考えられます。しかし、同じ1979年には52,000トンにまで急落しており、これは天候不順や市場価格の変動、あるいは農業インフラの未整備が要因になった可能性が考えられます。

1980年代中盤から1990年代前半にかけては目覚ましい成長が見られ、特に1986年の205,000トンや1987年の303,500トンというデータは、チュニジアのテンサイ生産が非常に活発であった時期であったことを示しています。この成長の背景には、国内の製糖需要の拡大や政府による生産奨励政策が影響したものと推察されます。しかし、1990年代後半には142,600トン(1998年)、さらに1999年の89,358トンまで急激な縮小が見られました。この減少の要因としては、チュニジア国内での構造的な産業調整や、国際市場での競争激化、気候変動などが影響している可能性があります。

2000年にはさらに20,700トンにまで減少し、この時期は国内農業の深刻な危機と見て取れます。ただし、2014年以降は再び穏やかな回復基調を見せています。特に2014年以降では毎年緩やかに生産量が伸びており、2023年には96,215トンと直近データにおいて過去20年間での最高値を記録しています。このような回復傾向は、近年の先端農業技術の導入や、持続可能性を意識した農地利用の改革、さらには輸出市場における需要の増加が影響しているものと考えられます。

一方で、現在の生産量は1980年代後半のピーク時に比べると依然として低水準であり、さらなる課題が存在します。まず、近年頻発する気候変動がチュニジアのテンサイ生産の安定性を脅かす主因となっています。局所的な干ばつや降水パターンの変化は農作物の収量に負の影響を与え、長期的な生産性の向上を阻害しています。また、チュニジア国内の農業労働者不足や、農業セクターへの投資額の低下も大きな課題として浮かび上がっています。

現在の回復傾向を維持し、さらに生産を拡大させるためには、国家レベルでの政策強化と国際市場での競争力向上が重要です。具体的には、テンサイの耐乾性を強化した品種改良や、灌漑技術の導入による水資源の効率的な利用が有望です。さらに、地域間協力を通じた専門知識の共有や、製糖産業との連携を深めることで付加価値の高い製品を生み出し、農家の利益を多様化することが求められます。

地政学的背景にも注意が必要です。チュニジアは地中海地域に位置し、ヨーロッパおよびアフリカとの交易に重要な位置を占めていますが、同時に政治的不安定や地域紛争の影響を受けるリスクもあります。これらが農業生産や輸出市場に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、安定的な資源供給のための外交努力も不可欠です。また、気候変動への適応戦略の一環として、国際的なパートナーシップの強化を図ることが肝要です。

総じて、チュニジアのテンサイ生産は歴史的に興味深い動きを見せており、課題を克服することで今後さらに成長が期待されます。そのためには、国内外の技術革新と政策的な後押しが鍵を握っています。