国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チュニジアの豚飼育数に関して、1961年の3,000頭から1990年の6,590頭をピークにわずかな増減を見せながら推移し、2022年には5,336頭となっています。この間、1990年代には安定的な数字を示しましたが、2010年以降は減少傾向が続いています。この変更には、宗教的な影響、経済状況、政策変化といった要因が絡んでいると考えられます。
チュニジアの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 5,336 |
2021年 | 5,367 |
2020年 | 5,399 |
2019年 | 5,449 |
2018年 | 5,487 |
2017年 | 5,510 |
2016年 | 5,524 |
2015年 | 5,524 |
2014年 | 5,500 |
2013年 | 5,500 |
2012年 | 5,500 |
2011年 | 5,500 |
2010年 | 5,800 |
2009年 | 6,000 |
2008年 | 6,000 |
2007年 | 6,000 |
2006年 | 6,000 |
2005年 | 6,000 |
2004年 | 6,000 |
2003年 | 6,000 |
2002年 | 6,000 |
2001年 | 6,000 |
2000年 | 6,000 |
1999年 | 6,000 |
1998年 | 6,000 |
1997年 | 6,000 |
1996年 | 6,000 |
1995年 | 6,000 |
1994年 | 6,000 |
1993年 | 6,000 |
1992年 | 6,000 |
1991年 | 6,000 |
1990年 | 6,590 |
1989年 | 4,600 |
1988年 | 2,500 |
1987年 | 3,600 |
1986年 | 3,600 |
1985年 | 3,600 |
1984年 | 3,500 |
1983年 | 2,660 |
1982年 | 3,800 |
1981年 | 4,000 |
1980年 | 3,800 |
1979年 | 2,900 |
1978年 | 1,750 |
1977年 | 1,750 |
1976年 | 3,300 |
1975年 | 3,000 |
1974年 | 3,000 |
1973年 | 3,000 |
1972年 | 3,000 |
1971年 | 5,300 |
1970年 | 4,000 |
1969年 | 4,000 |
1968年 | 5,000 |
1967年 | 6,000 |
1966年 | 5,000 |
1965年 | 4,000 |
1964年 | 3,000 |
1963年 | 3,000 |
1962年 | 3,300 |
1961年 | 3,000 |
チュニジアにおける豚飼育数の推移を振り返ると、1961年に記録された3,000頭という水準から、1990年に6,590頭でピークを迎えるまで増加傾向が続きました。この途中、1970年代には一時的に大きな減少が見られたものの、1980年代後半からは増加基調を取り戻し、1990年代以降は6,000頭前後で安定しました。しかし、2010年を境に減少傾向となり、2022年には5,336頭にまで落ち込んでいます。
宗教的背景は、この動向を理解する上で重要な要素です。チュニジアはイスラム教徒が主体の国であり、イスラム教で豚の摂取が禁止されている点から、豚の飼育は小規模で限定的な需要に留まっています。また、豚肉は主に非イスラム教徒の少数派である移民や観光産業向けに供給されています。このため、豚飼育数の増減は国内需要以上に観光業や輸出需要の影響を受ける傾向にあると考えられます。
1990年代の安定期に関しては、この時期の観光業の発展が寄与している可能性があります。当時のデータが示すように、チュニジアの観光産業は地中海リゾート地としての名声を高め、欧米からの観光客が多く訪れていました。しかし、2010年代以降の減少傾向は、政治的混乱やテロ事件といった地政学的リスクが観光産業を直撃したことが影響していると考えられます。このほか、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行も観光業に悪影響を与えた結果、需要減少を招いたと予測されます。
さらに、気候変動や地球温暖化の進行が豚飼育にも影響を与えている可能性があります。飼育に利用されている農地の変化や資源の競争が状況を厳しくしていると考えられます。近隣諸国の動向と比較すると、欧州諸国は持続可能な畜産業への移行や市場ニーズの変化に対応するため、技術革新や政策支援を行っています。一方で、アフリカ地域での豚飼育は、多くの場合、持続可能性よりも生存基盤の確保が優先されがちです。この文脈を踏まえ、チュニジアの長期的な豚飼育戦略が遅延しているのではないかとの指摘も可能です。
課題への対策として、まず輸出市場の開拓が検討されるべきです。イスラム教徒以外の需要を狙った輸出計画の強化や観光立国としての再出発が重要です。また、家畜の効率的な管理を目的とした技術の導入も検討するべきです。環境負荷を減らすために、再生可能エネルギーや循環経済の観点で飼育プロセスを見直す企画も有益です。さらに、国内の宗教的背景を尊重した形での需要促進策も研究する価値があるでしょう。
全体として、このデータはチュニジアにおける豚飼育の現状とその背後にある地域や世界の経済・政治的な動向を浮き彫りにしています。今後は、観光産業の回復と輸出機会の模索に加え、持続可能な畜産業への移行が重要なテーマとなると考えられます。国だけでなく国際機関や地域共同体との協力も求められるでしょう。