国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2022年度のオリーブ生産量ランキングによると、世界最大のオリーブ生産国はスペインで、総生産量は394万トンに達しています。続いて、トルコが297万6千トン、イタリアが216万400トンを記録しました。これら上位3カ国が世界的なオリーブ生産の中心を担い、それ以下、モロッコやチュニジアなど地中海沿岸諸国が続いています。一方で、中国や日本のようなアジア地域の国々は生産量が極めて少なく、オリーブの地域的な偏りが鮮明に見られます。
順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
---|---|---|---|
1 | スペイン | ヨーロッパ | 3,940,070 |
2 | トルコ | アジア | 2,976,000 |
3 | イタリア | ヨーロッパ | 2,160,400 |
4 | モロッコ | アフリカ | 1,968,111 |
5 | チュニジア | アフリカ | 1,200,000 |
6 | エジプト | アフリカ | 1,137,076 |
7 | シリア・アラブ共和国 | アジア | 990,948 |
8 | アルジェリア | アフリカ | 822,974 |
9 | ポルトガル | ヨーロッパ | 791,660 |
10 | サウジアラビア | アジア | 388,200 |
11 | アルゼンチン | 南アメリカ | 356,301 |
12 | ペルー | 南アメリカ | 226,942 |
13 | ヨルダン | アジア | 167,372 |
14 | アルバニア | ヨーロッパ | 157,710 |
15 | リビア | アフリカ | 143,410 |
16 | レバノン | アジア | 138,893 |
17 | イスラエル | アジア | 138,000 |
18 | チリ | 南アメリカ | 128,963 |
19 | イラン(イスラム共和国) | アジア | 114,600 |
20 | オーストラリア | オセアニア | 101,320 |
21 | パレスチナ国 | アジア | 79,761 |
22 | アメリカ合衆国 | 北アメリカ | 63,230 |
23 | クロアチア | ヨーロッパ | 40,130 |
24 | メキシコ | 南アメリカ | 34,163 |
25 | イラク | アジア | 31,511 |
26 | フランス | ヨーロッパ | 21,930 |
27 | キプロス | アジア | 21,140 |
28 | ウルグアイ | 南アメリカ | 14,000 |
29 | 北マケドニア | ヨーロッパ | 11,866 |
30 | エルサルバドル | 南アメリカ | 11,224 |
31 | アフガニスタン | アジア | 7,687 |
32 | ブラジル | 南アメリカ | 4,588 |
33 | アゼルバイジャン | アジア | 3,172 |
34 | 中国、台湾 中国省 | アジア | 2,616 |
35 | スロベニア | ヨーロッパ | 2,440 |
36 | クウェート | アジア | 665 |
37 | モンテネグロ | ヨーロッパ | 352 |
38 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | ヨーロッパ | 304 |
39 | ウズベキスタン | アジア | 120 |
40 | マルタ | ヨーロッパ | 20 |
2022年度のオリーブ生産量ランキングでは、スペインが世界一の生産量を誇っています。394万トンという圧倒的な生産量により、世界市場においてもスペイン産オリーブ製品が占める存在感は非常に大きいといえます。トルコやイタリアといった他の上位国も地中海気候を持つ国であり、オリーブ栽培に適した自然条件を最大限活用しています。地中海沿岸地域では、乾燥した夏と温暖な冬という気候がオリーブの生育に適しており、古代からこの地域で栽培されてきたことが背景にあります。
一方で、このランキングは地球規模でのオリーブ生産の地域的な偏りも浮き彫りにしています。アフリカ北部の国々、例えばモロッコ、チュニジア、エジプトなどもランキング上位に位置していますが、これらの国は安価で大量の生産が可能である一方、灌漑や水資源の確保といった課題にも直面しています。また、シリアのように政治的紛争や紛争後の復興が必要な地域でも生産活動が続いており、こうした状況がサプライチェーンのリスクとして意識されつつあります。
アジア地域を見てみると、中国やオーストラリアが名前を連ねていますが、いずれも年間生産量が10万トンを超える程度にとどまります。こうした地域では伝統的な需要が少なく、現在では新興市場や輸出用としての需要の拡大が課題の一つです。日本は2022年度ランキングには名前が挙がっていませんが、小豆島などの限られた地域でオリーブ栽培が行われています。しかし、生産量は国内市場を完全に賄うには程遠く、ほとんどを輸入に頼っています。
オリーブ生産にはいくつか課題があります。まず、気候変動により、生産地での干ばつや異常気象が影響を与える懸念が高まりつつあります。例えば、スペインやイタリアといった大規模生産国では、水不足の影響が深刻化しており、これに対処するために効率的な灌漑技術への投資が求められています。また、激しい国際競争の中で、生産コストの削減と品質の維持をどのように両立するかという課題もあります。さらに、紛争地や経済的に不安定な地域では、国際的な支援や協調が必要です。
今後、各国や国際的な機関が取るべき対策として、持続可能な農業技術の導入と技術支援体制の構築が挙げられます。また、地域間協力を強化し、不安定な地域での安定的な生産を支える仕組みを整備することが重要です。輸送や物流網の改善も国際市場を活性化するための鍵となります。特に日本のような生産が限られる地域では、高品質の特産品としてのブランド化戦略を推進する一方で、輸入ルートの多様化も考慮すべきです。
結論として、2022年度のオリーブ生産量ランキングは、生産の地理的な偏りやそれに伴うリスクを浮き彫りにしました。地中海地域の国々が引き続き中心的な役割を果たす一方で、気候変動や地政学的リスクへの対応が必要不可欠となっています。国際的な協力と長期的視点を持った政策が求められる中で、持続可能なオリーブ栽培を実現することが今後も重要となるでしょう。