国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによると、エリトリアの牛乳生産量は1993年の29,000トンから着実に増加を続け、2005年には95,000トンを記録、その後も概ね安定した成長を見せました。しかし、2015年を境に一部減少が見られ、その後は再び増加し、2023年時点では120,000トンを維持しています。このデータは、同国の乳製品産業の発展だけでなく、農村部の畜産業の発展や食料安全保障に関連します。
エリトリアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 120,000 | - |
2022年 | 120,000 | - |
2021年 | 120,000 | - |
2020年 | 120,000 | - |
2019年 | 120,000 | - |
2018年 | 120,000 | - |
2017年 | 120,000 |
9.09% ↑
|
2016年 | 110,000 |
4.76% ↑
|
2015年 | 105,000 |
-7.55% ↓
|
2014年 | 113,569 |
4.19% ↑
|
2013年 | 109,000 |
0.93% ↑
|
2012年 | 108,000 |
1.41% ↑
|
2011年 | 106,500 |
1.19% ↑
|
2010年 | 105,250 |
1.59% ↑
|
2009年 | 103,600 |
0.58% ↑
|
2008年 | 103,000 |
0.49% ↑
|
2007年 | 102,500 |
5.13% ↑
|
2006年 | 97,500 |
2.63% ↑
|
2005年 | 95,000 |
13.1% ↑
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2004年 | 84,000 |
13.51% ↑
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2003年 | 74,000 |
5.71% ↑
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2002年 | 70,000 |
6.06% ↑
|
2001年 | 66,000 |
32% ↑
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2000年 | 50,000 |
2.04% ↑
|
1999年 | 49,000 |
2.08% ↑
|
1998年 | 48,000 |
11.63% ↑
|
1997年 | 43,000 |
16.22% ↑
|
1996年 | 37,000 |
19.35% ↑
|
1995年 | 31,000 |
3.33% ↑
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1994年 | 30,000 |
3.45% ↑
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1993年 | 29,000 | - |
エリトリアの牛乳生産量の長期推移を見ると、1990年代初頭から2000年代中盤にかけては急成長を遂げています。この期間では、29,000トン(1993年)から95,000トン(2005年)へと生産量が大幅に拡大しました。これはおそらく、乳牛の品種改良や飼育技術の改善、また、農村部における畜産業の振興政策が奏功した結果と考えられます。この時期の大幅な増加は、エリトリアにおける経済発展とも密接に関連しているといえるでしょう。
その後、特に2015年には105,000トンに減少しましたが、2016年から以降2023年まで120,000トンで安定しています。この停滞理由としては、エリトリアが直面する自然条件の厳しさや、社会経済的な課題が影響している可能性があります。エリトリアは高温で乾燥した気候を持つため、乳牛の飼育環境には挑戦が伴います。また、地域紛争の影響やインフラ不足も、農業や畜産業の持続的発展を妨げている要因と考えられます。
エリトリアの牛乳生産量は他国とも比較する必要があります。同じアフリカ大陸内で見ると、ケニアやエチオピアといった畜産が盛んな国々の生産量には及ばないと言えるかもしれません。ただし、エチオピアやケニアに比べるとエリトリアは国土面積や人口が小さいため、一定の牛乳生産量を安定して維持しているという点では健全な状況にあるともいえます。また、日本やアメリカなどの先進国では乳製品の需要が非常に高いため、産業規模の格差が大きいですが、エリトリアが地域的ニーズを満たす中で生産拡大を進めていることは評価できます。
一方で、2023年時点で停滞傾向にあることは、いくつかの課題を示唆しています。特に、気候変動の影響による干ばつの増加や、インフラ整備の不足が影響している可能性が高いです。気候の変動は牧草地の確保や水資源の管理に直接関わるため、牛乳生産に長期的なリスクを与える要因となります。また、農村地域のインフラ整備が進まないと、飼料や獣医療資材の供給が難しくなり、農家が近代的な方法での畜産業を営むことが大きな負担となります。
このような課題に対応するために、国家政策や国際的な支援が重要となります。たとえば、気候変動に対応するための干ばつ耐性のある牧草地の導入や、持続可能な水資源管理体制の構築が提案されます。また、農村部における教育・訓練プログラムによって農家に近代的な飼育手法を普及させることも有効です。さらに、エリトリア国内のみならず、隣国との地域協力を強化し、飼料や設備の輸送などの効率化を図るプロジェクトも実施するべきでしょう。
結論として、エリトリアの牛乳生産量は過去数十年間で顕著に成長しましたが、現在は120,000トンの水準で停滞しています。これは地域的および地政学的な課題が影響していると考えられます。この現状を乗り越えるには、インフラ整備や技術供与、地域間の協力を強化すると共に、気候変動への適応策を早急に検討することが重要です。国際機関や隣接国との協力を通じた持続可能な生産性向上が、今後エリトリアの牛乳生産をさらに推進する鍵となるでしょう。