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エリトリアの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新の統計データによると、エリトリアの牛乳生産量は1993年の50,623トンから2022年の147,608トンまで順調に増加してきました。この間、いくつかの減速や停滞はあったものの、2020年以降は明確な横ばい傾向を示しています。この変遷は、エリトリアの農業政策や経済状況、さらには気候変動や社会的要因などの影響を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 147,608
0.12% ↑
2021年 147,428
0.13% ↑
2020年 147,240
0.13% ↑
2019年 147,054
-0.08% ↓
2018年 147,168
0.15% ↑
2017年 146,954
8.15% ↑
2016年 135,875
3.97% ↑
2015年 130,684
-6.1% ↓
2014年 139,167
3.67% ↑
2013年 134,238
0.48% ↑
2012年 133,597
1.29% ↑
2011年 131,894
1.34% ↑
2010年 130,148
1.31% ↑
2009年 128,469
0.55% ↑
2008年 127,769
0.47% ↑
2007年 127,170
4.28% ↑
2006年 121,955
1.99% ↑
2005年 119,581
10.02% ↑
2004年 108,695
10.31% ↑
2003年 98,537
4.91% ↑
2002年 93,928
4.22% ↑
2001年 90,122
21.67% ↑
2000年 74,072
1.7% ↑
1999年 72,833
1.48% ↑
1998年 71,771
9.09% ↑
1997年 65,790
10.82% ↑
1996年 59,368
11.76% ↑
1995年 53,121
2.41% ↑
1994年 51,873
2.47% ↑
1993年 50,623 -

エリトリアにおける牛乳生産は、1993年から2022年にかけて約3倍に増加しました。この成長は特に1990年代後半から2005年にかけて顕著で、農村部の畜産業開発や生産技術の向上、地域社会の安定化が寄与したと見られます。2000年前半には年平均10,000トン近くの増加が確認できます。このような成長は、エリトリアの畜産業が経済的にも社会的にも重要な位置を占めていることを示しています。

しかしながら、2010年代後半から2020年代にかけて、生産量の伸びは鈍化しており、近年ではほぼ横ばい状態となっています。たとえば、2020年以降のデータを見ると、毎年わずか200〜300トンの増加にとどまっています。こうした停滞には、主に複数の要因が影響していると考えられます。まず、気候変動の影響による干ばつや降水量の不安定化が、農地や牧草地の状態を悪化させています。また、家畜用飼料の確保が困難になり、生産効率の低下を招いています。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行も物流や労働力に影響を与え、農牧業全体の活力を損なった可能性が高いです。

また、エリトリア特有の政治的・地政学的問題もこの領域に影響を与えていると考えられます。長期間にわたる厳しい国家統制と国際社会との関係の緊張が、農牧業への外国資本や技術支援の流入を妨げています。その結果、一部の近隣国、たとえばエチオピアやスーダンと比べて生産拡大のペースが遅れているようです。

一方、エリトリアの牛乳生産量は国内消費の多くを占めていますが、自給自足の規模にとどまっており、輸出市場の開拓にはまだ至っていないのが現状です。これは同時に、国内の成長可能性を示しているとも言えます。近隣諸国における牛乳需要増に対応した輸出ルートの整備や、乳製品(二次加工品)の付加価値産業化が、エリトリアの農牧業セクターの次なる成長の鍵となるでしょう。

今後の課題としては、気候変動への対策が最優先事項と言えます。より耐性のある牧草の開発や効率的な水利用の促進が求められます。また、畜産業の持続可能性を確保するために政府が技術研修制度を支援し、小規模農家に向けたインフラ整備と資金援助が不可欠です。さらに、国際機関やNGOとの連携により、技術移転や資金提供を取り入れることも一策です。

エリトリアの未来の牛乳生産を長期的に安定させるためには、農業政策において統合的で持続可能な手法を採用することが肝要です。そして何より、地域間の協力を強化し、輸出市場を見据えた戦略的な投資を進めることで、この産業が経済全体にさらに貢献できる可能性を拡大することが期待されます。