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エリトリアの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、エリトリアの小麦生産量は1993年から2022年にかけて大きく変動しています。特に1990年代後半から2000年代初頭にかけて生産量が急増と急減を繰り返した後、2010年代後半以降は生産量が25,000トン程度で安定しています。この間、気候条件、政策、紛争などがエリトリアの農業に影響を及ぼしていることが示唆されます。

年度 生産量(トン)
2022年 25,000
2021年 25,000
2020年 25,000
2019年 25,000
2018年 25,000
2017年 25,000
2016年 25,000
2015年 25,000
2014年 30,000
2013年 30,000
2012年 33,000
2011年 29,000
2010年 33,000
2009年 26,142
2008年 5,391
2007年 27,274
2006年 21,570
2005年 21,559
2004年 9,052
2003年 4,755
2002年 4,365
2001年 36,490
2000年 13,776
1999年 27,518
1998年 31,937
1997年 9,635
1996年 7,857
1995年 9,605
1994年 13,520
1993年 5,400

エリトリアの小麦生産量推移を振り返ると、1993年から1998年にかけて一定の増加を見せていますが、その後は急激な増減が繰り返され、安定性を欠いています。例えば、1998年には31,937トンと大きく増加しましたが、2002年には4,365トンと著しい減少が見られました。この大きな変動の背景には、多くの場合、気候変動や降雨不足といった自然要因があると考えられます。また、エリトリアでは一貫して続く地政学的緊張や、1998年から2000年にかけてのエチオピアとの国境紛争が農業活動に深刻な影響を与えたことも、生産量の不安定な推移につながった要因とされます。

2010年以降は、年間25,000~33,000トンでの生産量が維持されており、特に2015年以降は25,000トンを維持しています。この安定の背景には、国内の農業政策の改善や、それまでのインフラ整備が影響している可能性があります。一方で、国際的な比較の観点では、エリトリアの小麦生産量は非常に少ない水準にあり、例えば日本の2019年の小麦生産量約91万トン、アメリカの2022年の約4,500万トンと比べると極めて低いことがわかります。このため、国内の需要と供給バランスを見ても、食料安全保障の観点から輸入依存の回避が十分とは言えない状況にあると考えられます。

降雨量の不安定さや干ばつなどの気候的条件は、エリトリアの農業に長期的に影響を与える重要な課題です。FAOや他の国際機関の支援で灌漑技術を導入することは、短期的な生産量増加の大きな鍵となるでしょう。また、干ばつに強い小麦品種の開発・導入や、適切な施肥・土壌管理技術の普及も重要です。さらに、地域的な協力を促進することで、周辺国との農業技術の共有や貿易を強化する試みも効果的と言えます。

地政学的リスクとして、エリトリアは近隣諸国との関係性が依然として不安定な状況にありますが、これが農業活動に与える経済的および社会的影響は無視できません。輸送インフラの改善や国内の市場環境の整備は、外部からの影響を軽減し、生産者の利益をより向上させる上で欠かせない要素です。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大中には、世界的な物流の混乱がエリトリアにも間接的な影響を及ぼし、農業資材の調達が困難になるケースが散見されました。このような将来的な外部リスクに対応するためにも、自己完結型の農業政策が求められています。

データの示す現状を踏まえると、エリトリアの小麦生産量の向上に向けた具体的な施策として、農業技術トレーニング施設の設立、世界銀行やアフリカ開発銀行の支援を受けた資金調達による灌漑設備工事の実施が挙げられます。これらの施策は、長期にわたる生産性の向上と食料安全保障の強化に貢献するでしょう。

結論として、エリトリアにおける小麦の生産量推移は、気候、政策、地政学的要因の影響を多分に受けてきました。今後の安定的な生産量の向上には、持続的な農業技術の導入と社会的安定の確保が不可欠です。同時に国際協力の枠組みを強化し、輸入に依存するリスクを軽減する努力も重要です。これはエリトリアの食料安全保障だけでなく、地域全体の安定にも寄与するでしょう。